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「ほんと、やることなくなってきたかも。」
マヤはPCの画面に紫煙を吐き出した。
彼女がやっているのは、アイルというオンラインゲーム。いわゆるMMORPGと言われ、参加人数が500万人をゆうに超える超人気ゲームだ。
一通りのスキルを手に入れ、ジョブも最高クラスに。
レベルもカンスト、レアドロップもコンプリート。
新しいイベントもここ最近出ておらず、マヤを含めた4公と呼ばれるプレイヤーはここ半年ほど、暇をもてあましていた。
そんなある日のこと。
アイル公式HPにて、新イベントを追加するための大型アップデートがあると発表された。
アイルの中でもその話で持ちきりで、マヤを含めて久しぶりのイベントに皆が待ちきれないかのように騒いでいる。
そしてついにアップデートが始まった。
アップデートは丸一日かけて行われ、アップデート完了のお知らせと共に、たくさんの人がアイルを立ち上げた。
もちろん、マヤもその一人だ。
アイルを立ち上げて、ログイン画面を見る。
ログインが完了し、いつもより長いNOW LOADINGを見つめていると、ゲームの仕様自体も変更されたのか否か、PCの画面が、これでもか、と白く光り、マヤを光の中へと送り込んだ。
眩しさに目を瞑ったマヤが目を開けると、どことなく見たことのある景色。
「ここは、ホームの中…?」
ホームとは、各自の拠点とも言える島のことで、そこにはフレンドを呼んで集まったり、ペットを育てたり、商店を開いて持っているものを売ったりすることができる。
島や商店は無課金でも扱うことができ、課金をするとそこに家(デザインと金額は様々)を建てることが出来る。
家を持っていると、家具を置くことが出来、家具の中には装備を入れるものや、アイテムをしまうもの等、倉庫とは別で利用することが可能だ。
マヤのホームは水が多く、桜の咲き誇る綺麗な小道や、大きな城のような家、大きな湖にはのペットがくつろぐ姿も確認できる。
そこまで確認して、マヤが行動を開始しようとすると、目の前に画面が映し出された。
《こんにちは、プレイヤーのマヤ様。
いつもアイルをプレイしていただき、ありがとうございます。
この度、大型アップデートに伴いまして、全プレイヤーの皆様に我が社の新システムのご紹介をさせていただきます。
私はプレイヤー・ナビゲーション・システム。ナビちゃんとおよび下さい。
まず新システムの紹介ですが、超体感型リアルシステムと言いまして、仕様により、ログアウトができなくなりました。
したがってメインキャラクターのみ使用することができます。
なお、サブキャラクターの持ち物や装備などは既に移動済ですので、ご安心ください。
次に、ゲームの進行についてですが、詳しくはヘルプを呼んでいただければ大丈夫かと思われます。
それでは、失礼します。》
プツンと画面が閉じ、呆然としていたマヤは、とりあえずヘルプ!とここで新たな疑問。
(ヘルプってどうやって呼ぶの…?)
《お呼びでしょうか、マヤ様。
どうも、ヘルプちゃんです。》
「え、呼ぶって、もしかして、文字通り呼ぶってこと?」
《はい、そのとおりです!
では、質問をどうぞ!》
「ええと、まずは必要なこと、全部教えてもらえる?」
《了解です!
まずは…》
こうして、思いもよらない新システムと大型アップデートにより、プレイヤーが混乱に陥る中、時間は過ぎていった。
作者の都合上、全文修正しました。
修正前の話を読んでくださった方、ご迷惑おかけします。