閑話 あすかはアスカ
気分転換に書いたあすかが広を好きになったきっかけです
読み飛ばしてもOKです
広ちゃんを好きになってからもう8年になる。最初は話しかけても冷たくて、目つきもよくないし「なんて失礼な奴」ぐらいでしかなかった。
意識するきっかけは些細な事だった。学校が終わり、外に出た時に大雨だった。
「あーあ。さっきまで小雨だったのになー」
そう一人で呟くと、後ろから声を掛けられた。
「お前傘ねーのかよ。」
「……悪い?!」
日ごろ態度が悪いからつっけんどんな態度をしてしまう。
「ふーん。」
そう言って傘を開いた。
「入ってけよ、ほら」
「――え」
そう言うなり腕をひっぱり傘に入れてくれた。
お礼を言うとかそんな事より、「なんで相田が?」って気持ちだった。
お互い会話もなく気まずい時間が過ぎていった。
小学生だったせいか、相合傘って状況がとてつもない恥ずかしかった。
(クラスの子に見られたらどうしよう!!)
ふと気がつくと、相田の家を通りすぎていた。俯きながら歩いていたせいで気がつかなかった。
もう私の家は角を曲がった所だった。
「あっ相田、ごめん、ありがとう!!もっもういいよ!!ありがとう!!」
「別に……角ぐらい曲がるし。」
そう言って家の前まで送ってくれた。
「……ありがと。」
「……お前さぁ。」
「う、うん。」
「今日午後から降水確率80パーだぞ。天気予報ぐらいみろよバーカ」
それを捨て台詞にさっさと帰って行った。
私はその後ろ姿を見ながら
「私の家…知ってたんだ……」
赤い顔でそう呟いた。
それからというもの、何をしてても相田が浮かぶし、学校では知らず知らず目で追っていた。
相田が給食食べてる!!……人参嫌いなんだ。
算数の時間には「チッ」と舌打ち。……算数きらいなんだ。
国語のテストで100点を取った時のあのドヤ顔……国語得意なんだ。
ある日、相田の周りに男子が集まってた。
(もう!見えないじゃん!!)
そう思いつつもしてる会話が気になって聞き耳をたてる。
「相田もう買ったー?!」
「うん。はい、持ってきた」
(んー?!なんだあれは……)
それは当時人気の少年サッカー漫画だった。
その男子がパラパラとページを捲りながら「あーやっぱカスミちゃん可愛いよなー!!」と言った。
周りの男子は「だよねー」とか「いいよなー」とか言っている。
(……カスミちゃん?!)
どこどこが可愛いだなんだと騒ぐと連中の一人が言った。
「相田もカスミちゃん可愛いと思うよなー!」
「……んー?俺はアスカがいい。」
ドックンと心臓が跳ねた。
「お前趣味わりーよ」
「ん?そっか。ははは」
「「「ははははー」」」
私の事を言ってるんじゃないと分かってはいるが、顔が熱くなった瞬間私は自覚した。
(相田めっちゃ好きだ!!!!!)
その日、私はママに「何に使うの?!」と怒鳴られたが泣きながらお願いして4000円もらい、その漫画を全巻買った。
夕飯もそこそこに私は自室に入り読みふけった。
その漫画のアスカは主人公の幼馴染で、マネージャーで主人公を支えていく癒し系のカスミちゃんに比べてかなり脇役だった。そして
――ブリブリブリッ子だった。
そうゆうのが…好きなんだ。
当時の私はどちらかと言えばお転婆でサバサバしたタイプだったが、どうしても相田に興味を持ってもらいたくて
アスカがロングヘアーだったからその日から髪を伸ばし、私のショートヘアーを「女の子なのに」と嘆いていたママを喜ばせ
アスカが主人公を○○ちゃんと呼んでいたから相田から広ちゃんと呼び、怪奇な目で見られ
アスカが怒ると「ぶぅ〜」と言いながらほっぺを膨らませるから、広ちゃんが冷たければ「ぶぅ〜」とほっぺを膨らませ、なぜかクラスの笑いを誘った。
まぁ、広ちゃんが爆笑してたからいいんだけどね!!
それから私と広ちゃんの距離は大分近づいた。
いつも一緒にかえろ〜って腕を取り、喋り通しどさくさにまぎれてお家に上がり込み夕飯を食べたりした。
そろそろこのブリッ子も痛くなりつつあるのは分かってる。
でも、そうしてると広ちゃんが私に笑いかけてくれるからなかなか止められないんだもんっ♪
・
・
・
「お前何気持ち悪い顔してんの?」
「ぶぅー!!ひどい!!気持ち悪いだなんて!!……昔思い出してただけだもんっ!」
「いや、お前そんな事よりもっと考えなきゃいけない事あんだろ……はぁー。これから村行くんだから打ち合わせすんぞ」
「……えへへ!はーい!!!」
あすかは知らない。
昔の相田広は友達の話を適当に聞いていて、尚且つ究極の天邪鬼だった事を。
もちろん広の好みは癒し系