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翌朝。



昨日はあまりにも辺りが暗かったから移動する事を断念して、体力温存の為大きな岩に登り横になった。

眠れなかったが、横になって目をつむるだけでだいぶ休む事ができた。


日が昇り目をあけると、変わらぬ景色がそこにあった。

目開けたら元の場所にいた、なんて展開を期待していたがそう上手くはいかないみたいだ。




「んー!!」


岩を降りて身体を伸ばして辺りを見渡すと、川の向こうに黒い物体があるのが見えた。


――あんな物昨日あったか……?


目を凝らしてみるとピンクのハートの石はついたストラップが見えた。

フラッシュバックする。



――広ちゃん、これローズクォーツなの!広ちゃんの鞄につけとくね!恋愛の石でね、私も同じのつけてるから!奈々ちゃんも彼氏とね――……



「――お、おいおいおいおい!!俺のバックじゃねぇか!!」


俺は慌ててバックの方向に走る。


「あがぁ!!!」


川に足を踏み入れた途端、電気が足から骨を伝って上がってきて俺の身体は崩れ去った。


「い、いひゃい……おれのはっく……」


手を伸ばすも無論手が届く事はなく、俺は川辺に横たわって回復を待った。







1時間経った頃に俺の身体は元に戻り、立ち上がって川をを上るように歩き始めた。

橋はなくとも、渡れるくらいの足場があればいい。

ひとまずは俺のバックを目標にしようと決意した。




二時間ほど歩くが一向に見つからない。あの元気な魚すら俺を見放したように出てこない。

川を見ながら歩いているが、ザーザーと流れる川は俺の希望さえも流してしまいそうだ。


「んがー!ちくしょう!!やってられっか!!」


そう言って石を蹴飛ばすと岩の陰からゴンっと鈍い音がした。


「いてぇっ!」


……俺の聞き間違いじゃないよな?幻聴じゃないよな?!


「なにすんだ!この野郎!」


岩の陰から出てきたのは、マタギの熊さん?といった風貌の大きなおっさんだ。


「う……うあぁぁぁぁぁーー」



いや、恥ずかしい話だが、内心本当に心細かったんだ。

獣臭が漂うオッサンに泣きながら抱きつくくらいには。







「落ち着いたか?」


「……はい。」


ズズズ…と鼻をすすりながら答えるとおっさんは「ん。」と言って竹のようなコップをくれた。



「毒じゃねぇ、そっから汲んできたやつだ。」


「ひぃ!!」


俺はそう聞くなり電気がくるんじゃないかと思いコップを落としてしまった。


「てめぇ、この野郎!人が重い腰上げて汲んで来てやったのに何しやがる!!」

「あ、あそこの水は毒ですよ!痺れるんですよ」

「あん?ただの水だぞ?……はぁ。」


そう言っておっさんはコップを拾ってまた川に行った。


――いらねぇっつうのに余計な事を!!


おっさんは川から戻って来て、おっさんが持つと小さく見えるコップを「ん。」とまた差し出してきた。


「い、いらない」


そう言っておっさんの手を押しのける。


「お前どっからきた。」

「……川を下った方です。二時間くらい歩いてきたんですけど、あっ向こう岸に渡りたいんですけどどっかに橋はないですか、入るだけで痺れて渡れないんです。」

「…くっ……くっくっく、あーっはっはっは、お前この辺の奴じゃねぇな」

「え、そうですけど」


ムッとしながら答える。

なんなんだこのおっさん……○リー・ポッターに出てくる○グリットみたいな見た目してるくせしてあいつみたいに優しくねぇ!


「お前が飲んだ水は別に腐ってねぇよ。シビレニジウオの出してる雷だ。」

「は……?」

「だから、シビレニジウオ。魔物だよ。ちっちぇえ魚のくせに雷魔法はすげぇんだ。こっから歩いて二時間くらいの場所に生息してる。」


覚悟はしてたが、いきなりこんな事を言われるとやはり頭がついていけない。

停止しているとおっさんはコップを差し出してきた。


「あいつら縄張り意識が強いから近づくと跳ねて威嚇するはずだけどな。飛び跳ねてる魚がいなくなりゃただの川だ、ほれ。飲め。」


ぽかーんとしてしまった。

俺の二時間はなんだったんだ?

喉はもちろんカラカラだった、燦々と照らす日光は石をも熱して下からも上からも俺を攻め立てたんだ。

目の前にはザーザーと流れる綺麗な水があるのに飲めないなんて!と思いながら歩いたのに……


飲めるだとっっっ?!!!!


俺はおっさんからコップをひったくりゴキュゴキュと喉を鳴らしながら飲む。


――ちくしょう!俺の二時間はこんなコップじゃ埋められん!!


そう思いながら川に向かって走ってダイブした。








「……二度目んなるが、落ち着いたか」

「……はい。」


俺はニカっと歯を見せながら満面の笑みでそう答えた。


「俺はダンだ。狩りをしにここまできた。お前は…。」

「あ、僕はヒロシです。日本から来ました。ほら……地球です地球。惑星の。」

「……。」


あぁ、なんとなく気づいてたさ。

こんなことを言えば、頭がちょっとハッピーな子だと思われるって。

もうすでにおっさん、もといダンさんが俺を見る目つきは可哀相な感じだ。


「フィロシってのは名前か?…まぁ俺ん家こいや……。」


俺を慰めるようにポンポンと肩を叩かれた。


「いや、僕荷物があって向こう岸にあるんで取りにいかなきゃなんないんですよ。また二時間歩いて。あとフィロシじゃなくてヒロシです」

「ひ、ひぃ、ふぃ…フィロシ?まぁなんでもいいじゃねぇか、がはは」


いやよくないだろう。


「俺の小船がある、そいつで下っていきゃいい。」


ダンさんが指さす方を見るとボートがある。

なんでもダンさんは上流からボートを使って下りてきて狩りをして帰りは獲物をボートに乗せロープで引っ張って帰るそうだ。


「きつくないですか?川の流れに逆らってくの」


苦笑いしながら俺が聞くと


「フィルトを使ってるから大した事ねぇな。ちょっと魔力がなくなる程度だ。」

「フィルト……?」

「あん?お前日常魔法もわかんねぇのか。風を起こす魔法だよ」


ははっそうだそうだ、ここは魔法があるんでしたね!てへ!


「はい、わかんないんですよ、ははは」


棒読みでそう伝えるとダンさんはチッと舌打ちして立ち上がった。


「しゃーねぇ。俺も行ってやる。お前みたいに細っちょろくて簡単な魔法も使えねぇんじゃ俺の小船が流されちまう」


サラっと失礼な事を言ってダンさんは船に乗り込み叫んだ。


「おーい、行くぞ小僧!」


まぁ、悪い人じゃない。むしろいい人だろ。そう言い聞かせ俺は船に乗り込んだ。







あっという間に忌々しい呪われた川について森に下りた。

あぁーーー俺のバック!!思わずキスしそうになった所にダンさんが来た。


「おう、それが小僧の荷物か?……なんだそりゃあ。へんてこな荷物だな、何が入ってんだ?」

「ノートとか、ペンとか。あとゲームと携帯と水筒と弁当箱……って、その目やめてもらえませんか」


ダンさんはまた可哀相な目で俺を見ている。


「じゃ、俺は獲物とってくっから。大人しく待ってろよ?」


そう言って森にずんずん進んで行く。




「川入るんじゃねーぞーーー!」

「うるせーー!わかってるわ!!!!!!」

「がーっはっはっは」



そういい残して消えていった。


一時間ほど待っていると森からガサガサと音が聞こえ、見てみるとダンさんが何かを抱えやってきた。


「おうフィロシ、待たせたな。よっこらせ!!」


ボートにドスンと乗せたのは体重が200キロはありそうな鹿みたいな化け物だった。しかもまたフィロシって……


「な…なんですかコレ」

「シカモドだ。見た事ねぇか?」


見た事ねぇかって……ねぇよ!こんなおでこに角の生えた鹿は。


「ない…ですねぇ。」

「がはは、味はいいんだぞ!小物だけどな!大物んなると俺なんかすっとばされちまう」


いやいや、十分でかいですから。


「じゃあ帰るぞー。こっから三時間は掛かるなぁ。小僧、大丈夫か?」

「大丈夫ですよ!体力には自信あるんで。」

「よく言った!!じゃあ行くか【フィルト】!!」


ダンさんの手が一瞬光る。


「何呆けてんだ、行くぞ!」

「……え、これで終わり?」

「何がだ?」

「だから、魔法ですよ魔法!もっとザーとかファーとかキラキラ光るエフェクト的な……あぁっもう分かりましたよ!」


またあの目で見られ俺は黙ってダンさんについていった。




ダンさんの家が見えて来たのは日が暮れ始めた頃だった。






とりあえずストック4つUPしました。

お読みいただきありがとうございます。

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