旅立ち
「魔神なんて本当にいるのかよ。」
ジンは馬車に揺られながらつぶやいた。
あの後姫は、
「魔神は全部で3人。今ある情報では魔神の一人が南の方にある島に住んでいるらしいわ。ここからならセントラル漁港に向かってそこから船に乗るといいわ。兵士の方は任せて。あなたの邪魔になるようなことはさせないわ。」
とか言ってたけど何度かつかまりそうになった。
まぁそれでも追っ手はだいぶ減ったけど。
ジンはあたりを見回した。
どこもかしこも砂ばっかり。
砂漠だからしょうがないけど。
海に向かっているはずなのにあたりには砂しかない。
ジンは運転手に声をかけた。
「本当にこっちであってるの?」
「あぁ。砂漠以外の道もあったが・・・・。」
「え〜。そっちの方が良かったなぁ。」
「でも兄ちゃんは南の・・・たしか・・・・オントロールとかいう島に行きたいんだろ?」
「そうだよ。」
「あそこらへんは普通の船じゃ連れて行ってくれねえぜ。」
「じゃあ島に行けない!?」
「行けないことはない。だから連れてってくれる船のいる方に向かってるんだ。そいつはこの砂漠のさらに先にいる。」
ふーん。
ジンは空を仰いだ。
しっかし、変なことに巻き込まれたなぁ。
普通じゃない船か。
海賊あたりか?
もうこのくらいじゃ驚かない。
海賊ならましだ。
だってこれから魔神に会いに行くんだぜ。
・・・・・・・・・・・・生きてる人間なら何でもOK!
「兄ちゃん。ここでお別れだ。」
へ?
「もうすぐ迎えの者が来るからここで待ってな。」
そういうと運転手はジンを下ろした。
そこには大きな石でつくられた石造があった。
ライオンに羽がはえている。
その姿はどうどうとしていて威圧感がある。
まわりはどこを見回しても360度全部砂漠だ。
唯一、帰っていく馬車だけが金色の砂漠の世界に浮かび上がって見える。
迎えの者か・・・・・。
どこにも見えないってことは今日は確実に現れないな。
ジンは石造の足元に座り込んだ。
「重い。」
ジンは驚いて飛び上がった。
「どこから声がした?」
ジンはきょろきょろとあたりを見回した。
しかし、何もない。
「どこを見ている?」
また主のない声が聞こえた。
俺の耳おかしくなったか?
それとも今まですべてが夢だったとか?
「おいっ!」
今度は声と一緒に肩に何か重い物がのった。
肩には灰色のまるで石のような腕が乗っている。
・・・・いや、これは本物の石だ。
ジンはおそるおそる腕をたどって腕の本体を見た。
「・・・・・せ、石造が・・・・・・動いた・・・・・・。」
ジンの声は振るえ、その場に座りこんだ。
「腰をぬかしたか?無礼なやつだ。」
石造はそう言うと、長いつめをジンの洋服にひっかけるとひょいっとジンを背中に乗せた。
「では、我が主のもとへ向かおう。」
石造が羽を一振りするとあたりの砂が舞い上がった。
足元が砂埃で見えなくなり、次の瞬間に石造は宙に浮いた。
ジンの思考回路はパンク状態だった。
今までこんな生き物見たことがない。
生きているのか?
ただの石なのか?
魔法で動いているだけ?
どんなに考えても答えは出てこない。
すると、石造が言った。
「私の名はグレート。主に石に変えられ海に沈んでいたところを助けられた。石から戻る事はできなかったが、こうして主のために主の客人の道案内をしている。」
ジンはますます分からなくなった。
石に変えられた?
ってことはこいつの石じゃない状態もいるんだ。
「あの、グレートさん。あなたの主は人間?」
「何を言っておる。私の主はキャルン族。人間より高等な生き物だ。」