出会い
ジンは腕いっぱいに壷をいくつも持ち、大人一人が通るのがやっとの小道を走り抜けた。
「ヤバい。」
ジンは思わず声をもらした。
今頃、師匠カンカンに怒ってるだろうなぁ。1時間近く遅刻してる。何でこんな時に限って目覚まし壊れてるんだよ〜。
ジンは更にスピードをあげてT字路を右に曲がった。
ドンッ!!
「イテテ。」
人にぶつかった勢いで壷を落としてしまった。
文句を言ってやろうと前を見るとジンは言葉を失った。
ぶつかった相手は本から飛び出してきたかのような美しい少女だった。
水色のワンピースにフードつきの上着を着ている。上着の左右をつなぎとめるために付けてあるブローチは不思議な色に輝く宝石が埋め込まれている。
後ろに束ねてあった赤い長髪がさらりとほどけると、少女は慌ててフードをかぶった。「ごめんなさい。大丈夫でしたか?」
そう言うと少女は立ち上がり手を出した。
ジンは黙ってうなずくと、少女の手を握り立ち上がろうと腰を上げた。
「その壷は・・・!?」
少女が急に手を放し再びジンはしりもちをついた。
「イテェ〜」
「あぁ!すいません!」
「いいよ。」
ジンは今度は一人で立ち上がった。
少女はオドオドしながらたずねた。
「あなたは薬師ですか?」
「そうだよ。まだ見習いだけどな。」
ジンは笑って見せた。
「うわっヤベ!じじぃのこと忘れてた。遅刻しそうなんだ。」
ジンは慌てて壷を拾い上げた。
「じゃあな!」
ジンはそう言うと走り出した。
少女は何か言いかけて手を出したが遅く、ジンはもう声が届かないくらい遠くに行ってしまった。