第28話「女子会という名の戦場」
第28話です。
今回は女子会回。
美月と彩乃、そしてふたば――3人での少し賑やかな夜です。
楽しい会話の中で、少しずつ見えてくるものにも注目していただけたら嬉しいです。
数日後。
ふたばのスマホが鳴った。
『今日空いてる?』
美月からだった。
『え、はい。空いてますけど』
『じゃあ決まり。夜ね』
それだけ。
「……え?」
何が決まったのかわからないまま、夜。
指定された場所へ向かうと――
「やっほ」
美月。
その隣に。
「こんばんは!」
彩乃がいた。
「え、彩乃ちゃん……?」
「はい!女子会です!」
「女子会……?」
「そう」
美月が笑う。
「たまにはいいでしょ」
半ば強制的に席に座らされる。
テーブルには料理。
飲み物。
「とりあえず乾杯しよ」
グラスが渡される。
「え、あ、はい」
「かんぱーい!」
三人の声が重なる。
少しだけ不思議な空気。
でも――
どこか楽しい。
「ふたばちゃんってさ」
美月がいきなり言う。
「思ったよりちゃんとしてるよね」
「え?」
「もっとふわっとしてるかと思った」
「それどういう意味ですか……」
彩乃が笑う。
「わかるかも」
「えぇ……」
ふたばは少し困る。
でも。
空気は軽い。
「バンドどう?」
彩乃が聞く。
「楽しいです」
すぐに答える。
「でも、まだまだで……」
「いやでもさ」
美月が言う。
「この前のライブ、よかったよ」
「……ありがとうございます」
「ちゃんと届いてた」
少しだけ真面目な声。
ふたばは少し驚く。
でも、嬉しい。
「お兄ちゃんも褒めてましたよ」
彩乃が言う。
「え」
「何も言わないけど」
「……あの人そういうタイプだから」
美月が笑う。
「でも認めてるよ」
その言葉に。
ふたばの胸が少しだけ温かくなる。
「でさ」
美月がグラスを傾けながら言う。
「れいじって普段どんな感じ?」
「え?」
「バンド以外で」
「えっと……」
少し考える。
「優しいです」
「へぇ」
「ちゃんと見てくれてるというか……」
「ふーん」
美月がニヤッとする。
「好きじゃん」
「えっ!?」
ふたばの顔が一気に赤くなる。
「ち、違います!」
「わかりやす」
美月が笑う。
彩乃も楽しそう。
「いやほんと違いますから!」
「どこが?」
「えっと……」
言葉が出ない。
否定したいのに。
うまくできない。
「……ほら」
美月が言う。
「詰んでる」
「やめてください!」
完全に遊ばれている。
「でもさ」
彩乃が少し真面目な顔で言う。
「ふたばちゃん、お兄ちゃんのこと好きだと思いますよ」
「……」
言葉が止まる。
否定できない。
できないから――
黙るしかない。
「まあでも」
美月が言う。
「いいんじゃない?」
「え?」
「別に」
あっさりした声。
「悪くないと思うよ」
「……」
ふたばは少し驚く。
もっとからかわれると思っていた。
「たださ」
美月が続ける。
「簡単じゃないよ?」
「……え?」
「れいじってさ」
少しだけ真面目な顔。
「鈍いし」
「……はい」
「でも変に壁あるし」
「……はい」
「だから」
一拍。
「ちゃんと行かないと、何も始まんないよ」
「……」
ふたばは、言葉を飲み込む。
その通りだと思った。
何もしなければ。
何も変わらない。
「で」
美月が急にいつもの顔に戻る。
「どうする?」
「え?」
「行くの?行かないの?」
「……」
答えられない。
でも。
逃げたくない。
そんな気持ちはある。
「……ずるいですよ」
ふたばが言う。
「何が」
「美月さん」
少しだけ睨む。
「全部わかってるみたいな顔して」
「してるよ?」
即答。
「だから言ってんの」
ニヤッと笑う。
その余裕が、少し悔しい。
「……」
ふたばはグラスを持つ。
少しだけ飲む。
胸の奥が、少し熱い。
でも。
怖いだけじゃない。
前に進みたい。
そんな気持ちが、確かにあった。
「いいねぇ」
彩乃が笑う。
「青春って感じ」
「やめてください……」
顔を隠す。
でも、少し笑っていた。
夜は賑やかに続く。
バンドの話。
学校の話。
くだらない話。
全部が混ざる。
その中で。
ふたばの中にあった“曖昧な気持ち”が、少しずつ形になっていく。
逃げられない。
もう気づいている。
だから――
どうするか。
それだけ。
女子会という名の戦場。
そこで。
一つの答えが、静かに生まれ始めていた。
もう、気づいてしまった。戻れないところまで。
第28話を読んでいただき、ありがとうございます。
女子会という軽い雰囲気の中で、ふたばの気持ちがはっきりと形になってきました。
美月の言葉や距離感も含めて、ただの楽しい時間では終わらない回になっていたら嬉しいです。
恋に気づく瞬間は、少し怖くて、でもどこか前に進みたくなるもの。
ふたばがこれからどう動くのか、ぜひ見守っていただけたらと思います。
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引き続きよろしくお願いします。




