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第25話「圧倒的な壁」

第25話です。


ついに対バン本番。

これまでで一番の演奏を見せるFirstDayですが、その直後に“本物”のステージを目の当たりにします。


ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


ステージのライトが当たる。


 眩しい。


 でも――


 逃げる理由は、もうなかった。


「いくぞ」


 れいじの一言。


 カウント。


 音が始まる。


 FirstDayのステージ。


 ふたばは、マイクを握る。


 歌い出す。


 言葉を、そのまま。


 迷わず。


 伝える。


 さっきまでとは違う。


 音が、ちゃんと重なる。


 ズレない。


 気持ちが揃っている。


 はじめのドラムが支え。


 美月のベースが芯を作る。


 その上に、れいじのギターが乗る。


 そして――


 自分の声。


 逃げずに出せる。


 怖くない。


 ただ、楽しい。


 ただ、届けたい。


 それだけだった。


 客席の空気が変わる。


 ざわめきが、集中に変わる。


 視線が集まる。


 音に。


 声に。


 すべてに。


 曲が終わる。


 一瞬の静寂。


 そして――


 拍手。


 歓声。


 思っていた以上の反応。


「……っ」


 ふたばは息をのむ。


 こんな景色、初めてだった。


 はじめが小さく笑う。


「やったな」


 美月も頷く。


「悪くない」


 れいじは何も言わない。


 でも。


 その表情でわかる。


 手応えはあった。


 確実に。


 今までで一番の演奏だった。


 ステージを降りる。


 少しだけ息が荒い。


 でも、心地いい。


「……いけたな」


 はじめが言う。


「ああ」


 れいじも短く答える。


 ふたばはまだ少しだけ余韻に浸っていた。


 胸の奥が熱い。


(……届いた)


 そう思えた。


 でも――


「次、BLACK NOVAです」


 アナウンスが流れる。


 空気が一気に変わる。


 ざわめきが、大きくなる。


「……来るな」


 はじめが呟く。


 ステージの袖から、様子を見る。


 暗転。


 そして――


 音が鳴る。


 一音目で、わかる。


「……」


 言葉が出ない。


 違う。


 さっきまでとは、まるで違う。


 音の圧。


 まとまり。


 無駄のなさ。


 すべてが完成されている。


 ドラム。


 ベース。


 ギター。


 そして――


 翼の歌。


 まっすぐに突き刺さる。


 ブレない。


 迷いがない。


 客席が、一気に持っていかれる。


 歓声の質が違う。


 熱が違う。


 支配されている。


 空間ごと。


「……すげぇ」


 はじめが思わず漏らす。


 美月も何も言わない。


 ただ、見ている。


 ふたばは、動けなかった。


 さっき、自分たちが立っていたステージ。


 同じ場所。


 同じ機材。


 同じ空間。


 なのに――


 まるで別物だった。


(……これが)


 プロ。


 そう呼ばれるもの。


 圧倒的な差。


 さっきまで感じていた手応えが、揺らぐ。


 でも。


 目が離せない。


 悔しいのに。


 見てしまう。


 吸い込まれる。


 曲が進む。


 完成度が落ちない。


 一切ブレない。


 最後まで、突き抜ける。


 ラスト。


 音が止まる。


 ――爆発。


 歓声。


 拍手。


 さっきとは、明らかに違う。


 規模も、熱も。


 すべてが上。


 ふたばは、何も言えなかった。


 ただ、立ち尽くす。


 そのとき。


「……さすがだな」


 れいじが、ぽつりと言う。


 その一言。


 認めている。


 完全に。


 悔しさも、全部込みで。


「……ああ」


 はじめも頷く。


「格が違うな」


 誰も否定しない。


 できない。


 それほどの差だった。


 ふたばは、ステージを見たまま。


 強く、拳を握る。


 さっきの手応え。


 嘘じゃない。


 でも。


 足りない。


 圧倒的に。


 遠い。


 でも――


(……だから)


 目を逸らさない。


 逃げない。


 あそこに行きたい。


 あの場所に。


 あの音に。


 追いつきたい。


 並びたい。


 その想いが、はっきりと形になる。


 れいじが、少しだけ笑う。


「……やること、見えたな」


 短く言う。


 ふたばは、ゆっくり頷く。


「……はい」


 迷いはない。


 悔しさも。


 衝撃も。


 全部。


 前に進むためのものに変わっていた。


 同じステージ。


 同じ時間。


 同じ音楽。


 それでも、ここまで違う。


 その現実。


 しっかりと胸に刻む。


 そして――


 前を向く。


 ここからだ。


 まだ、届かない。


 でも。


 確実に、一歩は進んだ。


 その先に。


 あの景色がある。


 そう信じて。


 その差は、絶望じゃなく、目標になった。

第25話を読んでいただき、ありがとうございます。


FirstDayとしては過去最高の演奏ができた一方で、BLACK NOVAのステージによって大きな差を突きつけられる回となりました。

同じ場所、同じ時間でも、ここまで違う――その現実が彼らに強く刻まれたと思います。


ただ、その差は絶望ではなく、次へ進むための明確な目標でもあります。

ここから彼らがどう成長していくのか、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


よろしければ、感想や評価もいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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