表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

第2話「はじめての一歩」

第2話です。


ふたばが動き出し、物語が少しずつ進み始めます。

出会いがどんな形に変わっていくのか、ぜひ見守っていただけたら嬉しいです。

翌朝。


 目が覚めた瞬間、昨日のことが一気に頭に流れ込んできた。


「……夢じゃない」


 あの歌。

 あの声。


 そして――


『好きなら、やればいいじゃん』


 胸の奥が、まだ少し熱い。


「……やるって、何を」


 わかっている。


 歌だ。


 でも。


「私なんかが……」


 そう思った瞬間、あの言葉がよみがえる。


『やらないやつよりはマシ』


「……っ」


 悔しい。


 でも、逃げたくなかった。



 気づけば、ふたばはライブハウスの前に立っていた。


「……来ちゃった」


 扉を開けると、昼間の店内は静かだった。


 カウンターの奥から、店長が顔を上げる。


「お、昨日の子じゃん」


「……すみません」


「いやいや、いいライブだったろ?」


 ふたばは小さくうなずく。


「あの……れいじさんって」


「あー、奥にいるよ」


 軽く指をさされる。


 心臓がうるさい。


「……失礼します」



 扉の向こう。


 機材の並ぶ小さな部屋。


 そこに、いた。


 れいじ。


「……何」


 相変わらず無愛想だった。


「……あの、昨日の」


「覚えてる」


 それだけで、少し救われる。


 ふたばは、深く息を吸った。


「……私、歌いたいです」


 れいじは少しだけ目を細める。


「……ふーん」


 そう言って、近くにあったギターを手に取った。


 何も言わず、コードを鳴らす。


 静かな部屋に、音が広がる。


「……歌ってみて」


「え?」


「なんでもいいから」


 突然すぎる。


 でも――


 逃げられなかった。


「……はい」


 震える声で、歌い出す。


 音程も不安定。


 声も細い。


 自分でもわかる。


 下手だ。


 でも――


 止まらなかった。


 歌い終わる。


 静寂。


「……下手」


「……はい」


 わかってる。


 でも。


 次の一言で、世界が変わる。


「でも、悪くない」


「……え?」


「刺さる」


 短い言葉だった。


 でも、確かだった。



「へぇ、いいじゃん」


 不意に、後ろから声がする。


 振り返ると、店長が腕を組んで立っていた。


「れいじ、お前さ」


「……何」


「自分のバンド、作りたかったんだろ」


 空気が少し変わる。


 れいじは何も答えない。


「昨日のライブも、知り合いに頼まれてのスポットだろ?」


「……まあな」


「普段は一人でやってんだし」


 店長はふたばの方を見る。


「だったらさ」


 一拍置いて、ニヤッと笑う。


「この子、ボーカルにしてバンド組めばいいじゃん」


「……え?」


 ふたばは固まる。


 れいじは少しだけ黙る。


 そして――


「……まあ、ありかもな」


「ええ!?」


 思わず声が出る。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「何」


「私、ほんとに初心者で……!」


「関係ない」


 即答だった。


「さっき言ったろ」


「……え?」


「刺さるって」


 その言葉が、胸に響く。



「やるなら、ちゃんとやれよ」


 店長が笑いながら言う。


「中途半端は一番ダサいからな」


「……はい」


 自然と返事をしていた。



「じゃ、決まり」


 れいじがギターを置く。


「バンド、やるぞ」


「……私が?」


「他にいないだろ」


 当たり前のように言う。


 でも――


 その一言で、すべてが動き出した。



 失恋した次の日。


 ただ歌いたいと思っただけなのに。


 気づけば――


 バンドを組むことになっていた。



 まだ何も始まっていない。


 でも、確実に何かが動いている。



 これはきっと、偶然じゃない。



 今日もまた、吉日だ。


第2話を読んでいただき、ありがとうございます。


ふたばの「歌いたい」という気持ちが、ついに形になり始めました。

ここからバンドとしての物語が本格的に動き出していきます。


次話では、新たなメンバーとの出会いと、初めての練習が描かれます。


よろしければ、感想や評価もいただけると嬉しいです。

引き続きよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ