第17話「次の扉」
第17話です。
ライブを終えた後の時間。
その余韻の中で、新たな動きが生まれていきます。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
ライブが終わったあと。
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楽屋には、まだ少しだけ余韻が残っていた。
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「いやー、よかったな!」
はじめが大きく伸びをする。
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「めっちゃ反応よかったじゃん!」
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「……はい」
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ふたばはまだ、少し現実感がなかった。
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さっきまでのステージ。
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あの空気。
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あの拍手。
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全部が、まだ体の中に残っている。
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「……よかったよ」
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美月がぽつりと言う。
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「え……?」
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「ちゃんと届いてた」
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短い言葉。
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でも。
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それが、何より嬉しかった。
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「……ありがとうございます」
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ふたばは、小さく頭を下げる。
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「失礼します」
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そのとき。
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楽屋の扉がノックされる。
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「はい?」
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店長が顔を出す。
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「ちょっといいか」
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「どうしたんですか?」
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「……話、来てるぞ」
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「え?」
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空気が変わる。
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「さっきのライブ見てた人がな」
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「名刺置いてった」
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テーブルに、一枚の名刺が置かれる。
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そこには。
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見覚えのあるロゴ。
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「……AIDAレコード?」
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はじめが声を上げる。
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「これ、結構デカいとこじゃん」
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ふたばは、その名前に聞き覚えがあった。
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でも。
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それ以上に。
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隣にいるれいじの方が、気になった。
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「……」
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れいじは、無言でその名刺を見ている。
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表情は、変わらない。
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でも。
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どこか、空気が違った。
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「……どうする?」
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店長が聞く。
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「話、聞くだけでもいいと思うぞ」
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少しの沈黙。
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「……いらない」
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れいじが、短く言った。
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「え?」
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「今はいい」
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それだけ。
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あっさりと。
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「マジで?」
はじめが驚く。
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「チャンスじゃん」
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「……そういうのじゃない」
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それ以上、何も言わない。
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ふたばは、その横顔を見る。
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少しだけ。
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遠く感じた。
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(……なんで)
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さっきまで。
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あんなに近くにいたのに。
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急に。
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知らない一面を見た気がした。
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「……すみません」
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ふたばは、小さく言う。
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「私、ちょっと外行ってきます」
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その場を離れる。
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廊下は静かだった。
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さっきまでの熱が、嘘みたいに。
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「……AIDAレコード」
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さっきの名刺の名前を、口にする。
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どこか引っかかる。
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でも。
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答えは、まだわからない。
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ただ一つ。
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確かなことがあった。
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自分たちは、今。
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何かの入口に立っている。
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小さなライブハウスのステージから。
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もっと、大きな世界へ。
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でも。
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そこに進むのかどうか。
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まだ、わからない。
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音楽も。
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関係も。
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すべてが。
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少しずつ、変わろうとしていた。
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新しい扉は、もう目の前にあった。
第17話を読んでいただき、ありがとうございます。
ライブの手応えとともに、新しい扉が少しずつ見え始めました。
これまでとは違う世界の気配が、物語に入り込んできています。
そして、れいじの反応にも少し違和感が残る回だったと思います。
その理由や過去が、これから少しずつ明らかになっていきます。
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引き続きよろしくお願いします。




