表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

第15話「守る理由」

第15話です。


いよいよイベント当日。

これまで積み重ねてきたものをぶつけるステージが始まります。


本番前の空気や、少しずつ変わっていく関係にも注目していただけたら嬉しいです。

イベント当日。


 ライブハウスは、いつもより少しだけ騒がしかった。



「うわ、人多い……」


 ふたばは思わず呟く。



「いいじゃん、テンション上がるだろ?」


 はじめが笑う。



「上がりますけど……緊張もします」



「大丈夫大丈夫」


 軽く肩を叩かれる。



 でも。



 確かに、今までとは違う空気だった。



 人も多い。


 出演バンドも多い。



 その中で、自分たちがどこまでやれるのか。



 不安と期待が、入り混じる。




「……ふたば」



 名前を呼ばれる。



 振り向くと、れいじが立っていた。



「声、大丈夫か」



「はい、大丈夫です」



「無理すんなよ」



 それだけ。



 でも。



 その一言で、少しだけ落ち着く。




「相変わらずだな、お前」



 突然、後ろから声がした。




「……あ?」




 振り返ると、見知らぬ男が立っていた。



 ラフな格好で、どこか軽い雰囲気。




「久しぶり、れいじ」




「……誰だよ」




「ひどっ」


 男は笑う。



「高校ん時、一緒にやってたじゃん」




「……ああ」




 思い出したように、れいじが短く返す。




「元気そうじゃん」




「まあな」




 軽いやり取り。



 でも。



 その男の視線が、ふたばに向く。




「へぇ」




「この子、ボーカル?」




 ふたばは少しだけ身構える。




「……かわいいじゃん」




「え……」




 距離が、少し近い。




「名前なんていうの?」




「えっと……」




 戸惑っていると――




「……やめとけ」




 低い声。




 一瞬で、空気が変わる。




 れいじが、一歩前に出ていた。




「……なんだよ」


 男が少しだけ笑う。




「別にいいだろ、挨拶くらい」




「いいけど」




 一拍。




「こいつ、そういうんじゃないから」




 さらっと言う。




 でも。




 その言葉に、少しだけ棘があった。




「はは、何それ」




 男は軽く笑う。




「相変わらずだな、お前」




「……別に」




 それ以上は何も言わず、視線を逸らす。




「じゃ、またあとでな」




 男は手をひらひらさせて、その場を離れていった。




 少しだけ、静かになる。




「……ごめん」




 れいじがぽつりと言う。




「え?」




「変なのに絡まれて」




「い、いえ……」




 ふたばは首を振る。




 でも。




 胸の奥が、少しだけ熱い。




「……大丈夫か」




「はい」




 れいじは、少しだけふたばを見る。




「ならいい」




 それだけ言って、いつもの表情に戻る。




 でも。




 さっきの言葉が、頭から離れない。




『こいつ、そういうんじゃないから』




 あの言い方。



 あの声。




 まるで――




 守られたみたいだった。




「……っ」




 胸が、強く高鳴る。




 ライブ前の緊張とは、全然違う。




 もっと、近くて。



 もっと、はっきりした感情。




(……なんで)




 わかっているのに。




 それでも。




 止まらない。




 れいじの背中を見る。




 その距離が、少しだけ近く感じた。




 でも。




 まだ、触れられない距離。




 そのもどかしさが、胸を締めつける。




 そして。




 そのまま。




 ステージの時間が、近づいていく。




 音も。



 想いも。




 すべてをぶつける瞬間が、もうすぐそこにあった。




 心はすでに、次の一歩を踏み出そうとしていた。


第15話を読んでいただき、ありがとうございます。


本番直前の中で、ふたばとれいじの距離にも少し変化が見えた回になりました。

何気ない一言や行動が、ふたばの中で大きな意味を持ち始めています。


次はいよいよライブ本番。

これまでの想いと楽曲がどのように響くのか、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。


よろしければ、感想や評価もいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ