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【超短編小説】胡蝶の羽ばたきhPaの夜

掲載日:2025/12/21

 風が吹いたので桶屋が儲かり、胡蝶が飛んで竜巻が発生した。お陰で制作部は残業になって、俺を含む幾人かの男女がオフィスで踊る羽目になった。

 会社の金でタクシーに乗った俺は、同じ方面に帰る彼女が履いているダメージジーンズの穴に指とかを入れたりした。



 東京に上陸した台風193号、別名ガウタマは「行けたら行くわ」と連絡した後に渋谷に来たので、街からは誰ひとりとして居なくなってしまった。

 誰もいないスクランブル交差点はコンピュータグラフィックみたいだった。

 俺たちは不機嫌なタクシー運転手の呼吸を聴きながらその景色を眺めていた。

 彼女の白い脚を俺のミートソースで汚しながら窓を叩く雨粒を数えている。そして窓を流れて行く雨粒の筋は血管に似ていると考えていた。


 不機嫌なタクシーは会社が残業をした俺たちに用意したホテルに転がり込んだ。

 俺たちは変な紙切れを運転手に渡した。

 さようなら。

 俺たちは濡れたままだったし、ブゥゥゥーンと低い音で鳴りながら下がったエレベーターの中で煙草を交換した。


 彼女の配偶者が死んだ。



 死因は彼女の足に付いた汚れだ。


「あなたが飲んだのは何色の薬でしたか?」

 制服を着た婦人警察官が俺に訊ねる。

 俺は婦人警察官の目を見ずに、その張り裂けそうな胸を見ながら「ピンク色だったんじゃないでしょうか」と答えた。

 俺は立ち上がって取調室を周回する。

 入口の廓が思い出せない。もしかしたら金色の桜が咲いていたかも知れない。

 婦人警官の即尺が鳴る。

 湯気が立ち込める。

 エアマットの上をクルクルと滑る婦人警察官と一緒にダストシュートから出ると、そこは◯(一文字焼失)国だった。


 

 そもそも俺は反転なんてしていない。

 胎内巡りもしちゃいない。

 俺は死んだりしていない。

 だってその日は風呂の水を抜いていると、浴槽の下から髪の長い女が流れ出てきて「箱舟に乗り遅れた」と言うから、女を湯船に戻してから蓋をしておいたんだ。

 そうして女の一部が皇居の堀池に流れていった。

 だから皇居の堀池にには大量の髪の毛が浮かんでいて、俺たちはその毛を丸めて創造された存在なのだと学校で習ったのを覚えている。



 つまり俺たちは皇居の中で眠っていたんだ。

 いや、まだ眠っているのかも知れない。


 取調室を出た俺は高級ミニバンに乗って駅前で降ろされる。

 そこから電車を乗り継いで帰る。

 誰かの香水と放屁の匂いが混ざった新宿駅のホームに雨で濡れそぼった山手線が滑り込んでくる。

 雨と埃の匂いが俺たちの存在をかき混ぜる。



 キオスクの鉄扉を叩く盲目の老女は杖をチェスナットスクワラルに盗まれてしまったと言う。

 それは悪い夢なのか、または悪い人の嘘なのかも分からなかった。

 だから俺は少し黙っている事にした。

 雨の渋谷で見た無人のスクランブル交差点の真ん中、そこで汚した彼女の足とか山手線とか皇居とかを吐き出す0と1の文字列を産卵させた最初の文字は何だったのかを思い出そうとして諦めた。

 とかとかとかとか。


 

「それはつまり、どういうこと?」

 婦人警察官は供述調書を取りながら笑う。

 俺は彼女の足をミートソースで汚すことを考えながら訊く。

「いまあなたの青いボタンシャツの隙間に指を入れたら何かの犯罪になりますか?と訊いているんです」

 婦人警官はボタンを外して隠れ秘密巨乳を晒す。

 だから俺は潜望鏡から見えた未来を訊かない主義なんだ。

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