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6話

日程の話をしながら軽食も食べ、ついにお披露目の時となった。

太陽が真上にある頃。市街地を天井の開いた馬車でゆっくり周り、兄さんと僕の存在を公式的に国民の前に現す時。

この時起きたことを僕は覚えている。

細かい部分で過去と違うことは起きているけど、これはきっと変わらないだろう。

というより、家族で過ごせたことが嬉しくて頭から抜けていた。


でも、過去に戻れたんだ、変えることはできなくても、防げることだから防ぎたい。

そのために必要なことをしなければ。


「お父様?お母様も兄さんも、お話よろしいですか?」

「どうした?ヨム。」


馬車に乗る直前、僕の前にいる僕以外の3人に声を掛ける。

僕の目の前にいた兄さんが、すぐに振り返って話を聞いてくれる体制を取ってくれた。


「その…乗るときに、お父様の横に座らせて欲しいんです。」

「…え」


僕のお願いに、兄さんは驚いた顔をさせた。

遅れて僕をみたお母様やお父様も驚いた顔をしている。

僕がこういったお願いをすることはあまりない。

ましてや、兄さんが関わることに関して、兄さんにマイナスなことが起きるようなお願いは特に。


この馬車には家族全員で乗る。前に2人、後ろに2人。

前にはお父様と兄さん、後ろにはお母様と僕が座る予定だった。

お父様の横に兄さんが座るということ、それはこの国の次期国王が誰なのかを示すことでもある。

でも、過去と同じことにならないようにするには僕がお父様の横にいる必要がある。

そのためには兄さんの位置を僕が奪わなければいけない。


「ヨム、何で。」

「お父様の隣に座りたくて…それだけです。」

「…………でも」


兄さんが驚いた顔から困惑の顔をしている。そんな顔させたくなかった。

でも、ここはこらえる必要がある。

僕だって兄さんがお父様の隣に座るべきなのは理解している。

でも、あんな事もうさせたくない。


「僕の、僕の誕生日プレゼントとして、叶えてくれませんか?」


明日は兄さんの誕生日。でも、僕の誕生日でもある。

兄さんとは同じ日に生まれた。お母様の中から出てきた順番で兄さんが兄さんになっただけで、誕生日は同じ。

だから、これを僕の誕生日プレゼントにしてもらって、叶えてもらう。

そうまでしなくてはいけない。


「フフ。可愛らしいプレゼントをねだるのね。」

「アテラ。可愛い弟のお願いだ。私は叶えてやりたいと思っているが…お前はどうだ?」


それを聞いたお母様は、僕のお願いを聞いて何故か嬉しそうにした。

お父様も、怒る様子ではなく朗らかな様子で、兄さんに僕のお願いについて尋ねていた。

お母様もお父様も僕のお願いを聞き入れてくれる様子だ。

兄さんは、困った顔でお父様とお母様、そして僕を見ている。


「…………わ、かった。わかりました。」

「兄さん!ありがとうございます!」


すごく悩んで、兄さんは僕のお願いをのんでくれた。

両手を握りしめている。苦渋の決断だ。

それも、のんでくれたことが嬉しく喜んで頭を下げる。

上げた時には、兄さんの困惑した顔は無くなっていた。


「それでは行こう。ヨムト、私の隣に。」

「はい。」

「お母様はアテラの隣りにいることが少ないから嬉しいわぁ。」

「確かに…父上に代わって変なやつが見ていたら睨みつけますよ。」

「まぁ!頼もしい!」

「ハハッ!それも次期国王として必要だな!」


兄さんやお母様、お父様が離している中、馬車の椅子に座る。

革製のソファのような座り心地だ。

それと同時に、背筋がゾワッとし、嫌な予感がした。

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