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4話

「オキシー。何も髪まで変えなくても…」

「晴れの日ですから。それに、最初から正装を着てらっしゃらなかったことを怒る代わりです。」

「うぅ…」


兄さんに言われ、オキシーの手によって、過去同様、今日この日の為に仕立てられた正装に着替えた。

挙げ句、過去には無かった髪型の変化。

過去は、ただただ綺麗にされた髪型だったが、今回は青い髪束のある右側を挙げられて、顔の半分が晒されている。

怒られる、叱られるよりかは良いだろうと諦める。

白と青を基調とした衣服。兄さんは白と赤が基調となっていたはずだ。

早く見に行こう。


「どこに行ったら良い?」

「お連れしますよ。」

「わかった。」


オキシーに行く場所を聞けば、片付けを終えたオキシーが連れて行ってくれるようで、一緒に部屋を出た。

メイドや執事の視線を通り過ぎるたびに感じつつ何も反応しないでいれば、兄様やお母様、そしてお父様がいるであろう部屋前についた。


「国王陛下、女王陛下はお待ちですよ。」

「うん。ありがとう。」


オキシーはそれだけ告げて、一礼して離れていった。

この部屋の中に、いる。

お母様は過去、お父様を殺してから明るさが消え、部屋に引きこもりがちになって、投獄されるまで姿も見ていない。

お父様のことは、怖い。過去に戻ったけど、記憶にはある。思い出すだけで血の気がなくなる。

それじゃだめだ。今は生きているんだから。大丈夫。


短く息を吸ってノックを4回する。


「何かしら~どうぞ~」


聞き覚えのある、優しく穏やかなお母様の声。

このドアの先にいる。

気持ちが焦り、少し力まかせにドアを開く。


「あら、ヨムト。おはよう。」

「おはよう、ヨムト。」


目の前に、お父様とお母様がいる。

力強い琥珀色の瞳、黒く短い髪の毛。騎士として生きていたゆえの大きな体のお父様。

優しい紫色の瞳、綺羅びやかで一度は触れてみたいと思えるほどの銀で緩やかなウェーブを持った髪の毛。淑女として社交界を統べるために身につけられた美しい所作のお母様。

2人とも同じソファに隣同士で仲睦まじく座っている。

部屋に入ってきた僕に向ける目はとても優しい。


「おはよう、ございます…」


国王陛下と女王陛下に正式な挨拶をしないとと頭ではわかっていても、体がドア前から動かない。

どうにか、挨拶だけを返したが、声が震えそうになる。

お母様は、僕の記憶にある時より若々しく、更に美しいのではと感じる。

お父様は、健康的な肉付きでまだ戦うことができるのではと感じさせる。何より、苦しい顔をしていない。

僕が殺してしまった時にみた悲しい顔ではなく、嬉しそうな顔。


「どうしたヨムト。こっちにきてもっとよく顔を見せてくれ。」

「は、い。」

「オキシーの魔法でステキになっちゃってかっこいいわぁ!」


お父様の声で、正式な挨拶もせずに近づく。

2人の前に立てば、飲んでいた紅茶のカップを置いて、僕を見たお母様が隠すこと無く褒めてくれた。

過去、最後に会えなかった、殺してしまった両親に会えたこと、その2人に喜ばれていることがとても嬉しかった。

同時に、僕はこの2人に酷いことをしてしまったんだと罪悪感を一瞬抱いた。

いや、元を辿れば、そうするよう仕向けた誰かがいるんだ。

どうにかして、探さないと。


「父上ー?母上ー!居りますかー?」

「アテラか。居るぞ。」


兄さんが自慢の大きな声でドア向こうに居ることを教えてくれている。

それを聞いたお父様が、僕からドアに視線を変えて、入室を許可した。

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