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29話

騒がしい声。雨音。おかしい。外は晴れだったはず。

目を開ければ、そこは代々、亡くなった王族の入るお墓の場所だった。

酷い大雨なのに僕は何一つとして濡れていない。何より体が透けている。

これは夢なのだろうか。

ともかく、人がいる、騒がしい方へ向かってみる。


そこには黒い服を来た大勢の貴族が居た。その中には、グルヴェン・ジャギーも。

居場所を無くしたはずの相手がいることを考えれば、これは夢なんだろう。

透けている体は人に当たることなくすり抜ける。

それを利用して、人混みの先へ向かう。

そこはもちろん、誰かのお墓だった。棺桶がしまわれる前で、誰かが棺桶に抱きついている。

あれは、お母様だ。雨に濡れることも厭わず、棺桶に抱きつき、震えている。

寒いのだろう。早く離れるよう言おうと更に一歩出た時。

石碑に刻まれた名を見てしまった。特段、見るつもりはなかった。お母様に声をかけようとしただけだ。

そこに刻まれた名は、アテラ・グフォン。兄さんの名前だった。

そしてその下に刻まれているのは、生まれてから亡くなるまでの年数。

亡くなった年数は、過去、僕が処刑されたのと同じ年数だった。

お母様は寒くて震えているのではない。泣いているのだ。


少しして、時間が来てしまったのか、お母様が棺桶から引き剥がされる。

兄さんの名前を叫びながら引き剥がされたお母様は、離れたところで泣き崩れていた。

誰にも気づかれていない、見られていない僕は、兄さんが入った棺桶が土の中に埋まっていくのを見ていた。


『弟さんを追ってでしょう?』

『えぇ、しかも自室で首を刺して。』


『『弟も守れぬ王は要らない』だなんて言葉がよく通ると思ってるなぁ。』

『王妃様もあんな状態だし…この国は一体どうなるんだか。』


『ルキデリル国が合併を申し出てるみたいだがどうなるんだろうな。』

『決めるのは国王の側にいたというあのグルヴェンだろう?』

『ハハッ、戦争待ったなしじゃないか。これは亡命したほうが良いのかもしれないな。』


埋められていく最中、周りの人間が喋る声を耳に入れる。

声と状況と年数から、これは夢ではなく過去。僕が処刑された後の光景なんだろう。

兄さんが。僕を追って。自ら命を絶った。そんな事あって良いわけ無い。

だが、過去に起きてしまっている。そう、見せつけれられている。

お父様も殺して、兄さんまで殺したのか、過去の僕は。


…何故、今これを見せられている?過去の出来事を。過ぎた話を。

今僕はどんな状態だ?

兄さんを唆した、グルヴェンを王宮、国から消そうとして、お母様を殺す案に乗り、それに使用した劇薬を飲んで…死にかけている。

つまり、兄さんが、同じ未来を辿る可能性がある。

目覚めなければ。目を覚まさないと。どんな状態でもいい。起きなきゃ。

起きろ。


「っは"、ぁ」


大きく息を吸い込んで、目を大きく開く。

喉が痛い。体が痛い。息を吸わなきゃよかった。でも目が覚めてよかった。

ここは、自分の部屋だ。ベッドの上。


「ヨムト…?ヨムト!?」

「おかぁ、さぁ」

「いいのよ、いいのよ!あぁよかった!」


側に、お母様がいて、目を覚ました僕を見て名前を呼んでくれた。

お母様を呼びたかったけど喉が痛くてちゃんとは呼べなかった。

そんな僕をお母様は抱きしめてくれて、すぐに人を呼んでくれた。

部屋に、医者と、お父様とお母様、兄さんが来てくれた。兄さんはまだ生きている。


『内部の毒性がまだ強く残っています。目覚めたのはよもや奇跡ですよ…』

「ヨムト。まだきついだろう。眠ってていいぞ。」

「ヨム。ごめんっ、ヨム…!」


医者の言葉は理解できる。お父様が優しく頭を撫でてくれるのも嬉しい。

兄さんが僕の手を握って泣きながら謝ってる。

握られた手から兄さんに魔法をかけられたかどうか確かめる。いくら話で惑わせたからって兄さんが過去にお父様を、今お母様を殺すはずがない。

そう思って、自分ができるゆっくりとした魔法で調べれば、兄さんに…魔法をかけた跡がある。

それを、ゆっくり、ゆっくり剥がす。

兄さんはやっぱ強い。洗脳魔法をかけられているにもかかわらずに、僕にお願いをするだけなんて。

洗脳魔法かけられているなら、自分で何もかもしそうなのに。僕に助けてを求めたのかもしれない。

これで、大丈夫。兄さんにもう気持ち悪いものをかけることはできない。


「ヨム、ヨム!」

「アテラ。大丈夫だ。」

「嫌だ。ヨム、お願いだから…」

「に、さん。だい、じょぶ。」


流石に、ねむくて兄さんの手を握る手を弱める。

兄さんの心配する声も、お父様の安心させる声も全て安心する。

今はまた眠るだけ。だから安心してほしい。

すごく眠っちゃうけどきっと起きるから。

家族皆の顔を見て、ゆっくり目を閉じた。

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