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25話

あの後、デコロ卿と1、2人の騎士が来て、グスト・ジャギーを魔法ではなく明確に拘束した。

その後はもちろん気絶したので起きたら自身の部屋だった。

身体全身が鈍い痛みで動く気力が起きなかった。

が、隣を見ると見慣れは銀髪とその隙間から見える赤い髪束の頭があった。

兄さんだ。自分の腕を枕に眠っている。

怠い体を起こして、兄さんを優しく揺らす。


「兄さん。そんなところで寝ていたら体を痛めますよ。」

「ん…よむ…ヨム。ヨムト!」


起きた兄さんは、僕に抱きつこうとして止まって、抱きついた。

今度は力加減を考えて痛くない程度に。

少しして離れた兄さんは、嬉しそうな、でも深刻そうな顔をしていた。


「…どうかしましたか?」

「いや…それより。ヨムは大丈夫か?その、色々したことは聞いている。危険な目にあったことも、したことも。」

「はい。この通り…といってもベッドの上ですが。生きてはいます。」


深刻そうな顔に対して質問をしたが、はぐらかされて自分の事を聞かれた。

まるで元気、とは言えないが、生きてはいる。

兄さんはそれに笑ってくれはしたが、またすぐに顔を暗くさせた。

窓の外を見れば雨が降りそうな曇。最近は太陽が出ているのを見ていない。


「…なぁ、ヨムは…どうしてグルヴェン伯爵の領に行ったんだ?」

「え、いや。グルヴェン伯爵が提示した支援金に違和感を感じたのと、勉強の一環ですよ。」

「本当に、それだけか?」

「…はい…そうですけど…」


兄さんは、少し視線を迷わせて、僕に質問をしてくれた。

ジャギー領に行ったことを。「グルヴェン伯爵の領に行った」という言葉で。

何故そういう質問をするのかわからなかったが、素直に理由を伝える。

過去の話は伏せつつ。

それでも、再確認した兄の目は揺れていた。

兄さんにかけた魔法は発動していない。悪意に触れてはいない。

なのにどうしてそんなことを聞くのか。


「……俺の代わりに、王になる、なんてしないよな。」


間を置いて兄さんが発した言葉は、過去にも聞いた言葉だった。

今のタイミングではない。もっと成長してから。

それを、今聞くなんて。行動が変わってタイミングも変化したんだろうか。

今の兄さんは幼い。年齢としても精神としても。

僕も年齢としては幼いが、精神としては過去から引き継いでいる以上、兄さんより上になる。

だから、人の怪しさをうっすら理解することはできる。

でも、兄さんはどうだ。純粋で本当に太陽のような兄さん。

そんな兄さんは、「明らかな悪意」以外察することは難しいだろう。

相手が何を思いついていて考えていて、何を自身に求めているのか。

何を自分にしようとしているのか。

一体、誰が兄さんをこんな風にさせたのか。


「ありえません。絶対に。」

「でも、グルヴェン伯爵が、今回の件でお前が父上の評価を上げようとしていると…!」


兄さんの不安を和らげようとすぐに否定をしたら、すぐに兄さんは反論した。

誰に何を言われたのかを付け加えて。

グルヴェン伯爵。アイツか。アイツが、今も過去も兄さんをこんな風にしたのか。

偶然にも、アイツに関連することに打撃を与えることができていたらしい。

それは良かった。が、それだけではだめだ。

アイツは、この世から消さなければ。


「兄さん。そんなことはしません。僕を信じてくれないのですか?」

「信じている!信じている…けれど…」


兄さんの感情を落ち着かせようと優しく、兄さんの考えていることを否定してくが、兄さんは僕への信用信頼とアイツの言葉の間で揺れている。

僕がいない3日間に、相当兄さんに接触したのかアイツは。


揺れている兄さんは、僕の手を取って声を震わせながらお願いをした。


「ヨム、お願いだ…お前を信用したい…」

「兄さん…」

「は、はは、母上を。母上を、殺してくれ。ヨム。お前が俺の味方なら。」


それは、過去と同じお願い。でも対象が変わっていた。

お父様からお母様へ。なぜか変わっていた。

兄さんは、目から涙が零れ落ちそうになりながら、力を込めたいのに抑えて僕の手を握ってお願いをした。

状況や年代等々違えど、過去と同じ。

この状況にした、グルヴェン伯爵が心底憎くて仕方がない。

もう殺してしまおうと、頭に浮かんだ。だが、そうしたら、兄さんが悲しんでしまう。

きっと、グルヴェン伯爵と密にやり取りをして、グルヴェン伯爵と信頼関係を築いている相手を殺してしまっては、それこそ兄さんの信頼を失う。

であれば、色々考えなくては。

でも、その前に。


「兄さん。ずっと僕の側にいてくれたんでしょう?もう部屋に帰って眠りましょう。」

「ヨム」

「ごめんなさい…おやすみなさい。」


兄さんのお願いに回答はせずに兄さんの頭に触れる。

兄さんは回答を待っているようだったので、それは待たずに睡眠魔法を兄さんにかける。

兄さんは次第にまぶたを閉じ始め、僕が最初に見たときのように突っ伏した。


「…レクソン。いるんだろう?」

「はい。第二王子殿下。」

「兄さんを部屋に連れて行ってあげてほしい。」

「かしこまりました。」


兄さんが寝たのを見て、ドアに向けて声を上げる。

すれば、少しドアが開いて、レクソンが入ってきた。きっと外にいるだろうと思った。

そこで、レクソンに兄さんを任せる。レクソンは兄さんを静かに抱えて部屋を出て行った。


それを見て、自分に弱く身体強化の魔法をかけてベッドから出る。

ほぼ寝間着でカーディガンを羽織った状態でスリッパを履いて部屋を出る。

目指すは、お父様の執務室。事の顛末を聞かなければ。

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