22話
屋敷を出ることを決めた日の夜。
屋敷の主であるグスト・ジャギーへその旨を伝えた。
慌てふためいた様子ではあったものの、承諾の旨をもらうことができた。
そのまま、自室に戻って帰る準備をしていたら、ドアがノックされた。
デコロ卿も他の騎士と共にその準備をしている。となると屋敷の誰かだろうか。
「どなたでしょうか。」
『メイドの者です。ご主人様より手渡して欲しいという物をお持ちいたしました。』
ドア越しに聞こえる声は女性で、この屋敷のメイドであった。
彼が手渡して欲しいだなんて何なのかと思いつつ、準備を止めてドアの鍵を開ける。
ドアを明けた時、目の前にいたのはメイド、では無くグスト・ジャギーであった。
「は」
「声を変えるだけでお開けになるとは不用心ですな殿下。」
想定していない人物に驚いていれば、彼は胸元に見たことのないブローチをつけていた。
直感的に魔道具の類であると判断したが、そのブローチを見た途端にそれから目が離せなくなった。
精神に作用するものと考え、対応する防御魔法を使おうとしたが使えなかった。
いや、魔法は使える。だが、意識がぼんやりとしていて、どう使うか思考が鈍い。
「せっかくのお食事も取られないのでどうなることかと思いましたが、効いているようで何よりです。」
「食事…」
「さぁ、もう寝る時間ですよ。殿下。」
彼の声が反響するように聞こえる。
なるほど、食事に毒ではなく薬を盛っていたのか。
過去に兄さんにされたことと同じ事をされているだなんて。
じゃあ、兄さんを唆そうとしたのはジャギー家か?それとも彼が現段階の個人的な恨みつらみで僕にこんなことを?
ふらついて彼の方に倒れるが、彼は支えた。そのまま、眠るように意識を落とした。
次に目が覚めた時。僕は意識を落とす前に来ていた服とは全く違う服を着て、全く違う場所にいた。
ボロボロの麻布で作られた上下の服。
同年代もしくは年下1、2歳年上の子どもが多くいる、高い位置にできた1つの木枠から日が差し込むだけの部屋。
日が差しているということは朝方か昼のどちらかだろう。
子ども達は、寝ている子や泣き出しそうな子、そんな子を励ます子と色んな子がいる。
統一しているのは皆同じ格好をしていて、怖がって、不安そうにしているということ。
『おはよう。君も連れてこられたの?』
「…あぁ。」
『僕もだよ。街で遊んで家に帰る時にね。』
「そうなんだ。」
不意に、隣に座っていた男の子に話しかけられた。
僕のことを知らないとなると、どこか別の領の子どもか、もしくはそういった情報は知らない子どもか。
男の子が自分がここに連れてこられた理由を話したことで、ここがジャギー領の街で聞いた「誘拐事件」でさらった子をまとめている場所なのかと推測できた。
鎖や縄、体に何か模様が描かれてるわけでもない。
なら魔法でこの部屋の壁なり何なりを爆破して逃げることも、移動魔法で帰る事もできる。
恐らく体に見合わない魔力消費でまた寝込みかねないが。
だが、これはいい機会だ。どうせなら「誘拐事件」も一緒に処理してしまおう。
そうすれば、今後同じような被害を受ける子はいないだろうし、兄さんがそういった目に会う可能性もなくなるだろう。
であれば、大人しくしておくのが得策か。
それに、僕がいないことに気づけばデコロ卿が判断してくれるだろう。
『君の髪の毛、すごいキレイだね。どこかの貴族なの?』
「さぁ。君は?ご家族は何やってるの?」
『僕のところはね…』
時間が来るまで、僕は話しかけてくれた男の子と会話をすることにした。
平民と会話をするなんて過去にも無かった経験で、すこしだけ楽しかった。
12/6分のものとなります。遅くなり申し訳ございません。




