19話
屋敷にもどり、着替えを済ませるともう外は夜だった。
その中で、デコロ卿と会話をしながら街で聞いたことをまとめた。
屋敷の設備は全く困窮していないこと。
出される食事は人を豪華にもてなすほどの食事であること。
大雨の被害はそこまで出ないこと。
支援要求の理由としてあげた水害は全くなかったということ。
それ以上に、子どもが誘拐されている事件が街で話題になっているにもかかわらず、管理をしているグスト・ジャギーがそれを知らないこと。
いや、知ってて言っていないのか。
ともかく、街の人達の声で支援要求は不必要であることがわかった。
次は、不必要と明確に提示できる証拠。人の声だけでは証拠になりづらい。
兄さんにお父様やお母様のような、地位のある人間が言う言葉と、平民の言葉では悲しいかな重みが異なる。
だから、集めた平民の声と合わせて、証拠を用意しないといけない。
「うーん…証拠、どこにありますかね。」
「大抵は執務室でしょうね。でも、入れないでしょう?」
「…寝てる時間、とか。」
「…ヨムト様は本当に王族ですか?」
デコロ卿と会話をしながら話をまとめつつ、証拠に関してどこにあるかを検討する。
デコロ卿ももちろん執務室と判断するが、入ることは困難だ。
誰も居ない時間帯とするなら寝る時間だろうと口に出せば、驚いた顔をされた。
寝室と執務室を分けているならの話ではあるが。
「考えただけですよ。そうじゃなくても、僕の魔法があれば万全に行けると思います。」
「えぇ~行けるんですか?まだ先生に教えてもらっている段階でしょう?」
「まぁまぁ、大丈夫ですよ。」
「まぁ。信用しますけど。」
話したように寝てる時間でなくても、魔法を使って姿を消せばいつでも入れる。
過去に覚えた魔法やそれらを組み合わせた魔法はもう使うことができて、魔力も問題なく扱える。
が、普段はそういった高度な魔法が使えることは隠している。
急に高度な魔法を使って兄さんより上に見られるようなことがあっては困る。
それで僕が次期国王に担ぎ上げられるようなことが万が一でも無いように。
それを知らないデコロ卿は半信半疑な様子だが、ある程度無条件で信用してくれているんだろう。
「もし決行するなら必ず俺に相談してくださいね?」
「…」
「アテラ様から危険なことをするなら俺に言うようにと言われていますよね?」
「…はい。」
決行するときは自分一人でやろうとしたが、釘を指された。
確かに、兄さんにも言われている。お母様にもデコロ卿の言うことを聞くようにとも。
そうなると肯定の言葉を返すしか無い。
そこで、部屋のドアがノックされた。
きっと食事だろう。
「お食事の準備ができましたのでお呼びいたしました。」
「はい。向かいます。」
ドア向こうからの声に応対し、食堂へ行く。
機能と変わらず豪華な食事を食べ、街であった誘拐事以外の話をする。
「そういえば、街では水害の被害は無いとのことでしたね。」
「そ、んなことは無いと思いますが?」
「実際に見て、被害もあるように見えませんでしたし。街の人も活気よく活動されてましたよ。」
「それは、第二王子殿下に良い顔をしたいだけ」
「身分は隠して居たので僕が第二王子だとは知らないと思います。」
「…」
街で聞いたことを話せば、彼は笑いつつも焦りを感じる笑いであった。
こちらの表情は崩さずに食事をしつつ話せば、最終的に何も話さなくなってしまった。
昨日と同じ分食事をした後に、席を立つ。
「あ、そうでした。明日の朝から、食事はこちらで用意というか、調達するので作っていただかなくても大丈夫ですよ。」
「第二王子殿下?!」
「食べきれない量をいただくのも申し訳ないので。それでは失礼します。」




