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1.5話

「…ぁ?」

「アテラ様!お目覚めになりましたか!」


俺の部屋。ベッドの上。

気持ちの悪い視界と気分で良い目覚めとは言えない。

自身の長髪で白い髪の毛が、服越しに背中に触れて余計に気持ちが悪い。

横から聞き覚えのある医者の声がする。ゆっくり、体を起こす。


俺は、確か…そうだ、メイドが持ってきてくれた紅茶を飲んで、それで倒れて…


「…ヨム、ヨムは!?」

「アテラ様、落ち着かれてください。一度、お体を見させて」

「黙れ!俺のことはどうでもいい!ヨムの事を!」


俺の大切な弟ヨムト。

俺が王となるために俺の願いを聞き入れてくれて、心を痛めながら、実行に移した強い男。

守ると約束したのに情けない。

一刻も早く、ヨムを牢屋から出さないと。あいつは俺の為にやったんだ。もし入れられるなら俺だ。

なんでも良い。ヨムをあそこから出せるなら。


「アテラ様…いえ。国王様。」

「グルヴェン伯爵。」


医者が診ようとする手を払っていれば、俺の部屋にノックもなく人が入ってきた、

グルヴェン・ジャキー伯爵。我が国を支える大臣の一人。よく俺に国ついての話をしてきていた。

そして、旧国王、俺の父親を殺すよう言った人間。

ニコニコと笑顔でこちらを向いている。そんな相手を、王と同じ琥珀色の目で睨みつける。


「グルヴェン伯爵。ヨムは」

「罪人は数日前に処刑を行いましたよ。」

「…………は?」


入ってきたグルヴェン伯爵に、ヨムの状況を聞く。

国のことをよく知っているであろうグルヴェン伯爵なら、ヨムのことを知っているだろう。

グルヴェン伯爵は、ヨムの名前を出したところで、ヨムの現状を教えてくれた。

その内容に、何も考えられなかった。


「何を……言っている?」

「お父様である旧国王を殺した罪人ヨムトは処刑を行いましたよ。」


グルヴェン伯爵は、ニコニコと笑って喋り続ける。

本当に何を言っている?いや、やることは正しいんだ。普通の罪人であれば。

ただ、相手は王族、かつ俺の弟。俺が守ろうとしていた大切な家族。

国民にどう思われようと、守りたかったのに。


「……なぜ、何故!誰が殺していいと言った?話も聞かず!」

「国王を殺した相手ですよ?王族とは言え、生かして置く必要はないでしょう?」


グルヴェン伯爵の言うことはもっともだ。

だが、それなら俺も死ぬべきなのだ。ヨムに父を殺させた共犯者として。

なにより、話を、声を聞きたかった。


「時間をかけていても、何も良いことは有りません。それより、お父上である旧国王の代わりに、早く国民を安心させて」


グルヴェン伯爵は話を続けるが頭に入らない。

そもそも、コイツが俺に何かを言わなければ…いや、俺の心が弱かったから。

コイツの「第二王子が王の座を狙っている」という言葉でヨムを不信し、コイツの言うままに父上を殺させた。

母上は父上を殺して以降、部屋に籠もりっきりで、こちらが声をかけても反応が無い。

父上…ヨム…。

グルヴェン伯爵から顔を下げれば、白髪の長髪から、赤い髪束が見える。


神よ。俺とヨムを守っている神よ。

もしもう一度、人生をやり直す事が可能なら。

どうか、どうか


「俺に、強い心を。」

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