16話
日が落ちかける夕方。何の問題もなく無事にジャギー領に着くことができた。
領主の屋敷に着くまでの道は、何ら代わりにの無い町並みが広がっていて、それなりに人の往来もある。
日が落ちかけるにしては人が少ないような気もするが、気にする程度でも無いだろう。
屋敷前に着くと、領を管理しているグルヴェン伯爵の長男グスト・ジャギーが問前に立っていた。
「お待ちしておりました。第二王子殿下。」
「貴方がグルヴェン伯爵の長男、グスト・ジャギーですか?」
「えぇそうでございます。此度は我が領へお越し下さりありがとうございます。」
中肉中背。身につけている衣服は茶黒といった色ながらも良い材質のものを使用しているのが見てわかる。
指には指輪が数点。領の工芸品とも判断できるが、被害が甚大であることを伝えたいのであれば身に付けないほうが良かったのではないか。
馬車から降りれば、彼の後ろに控えていたメイド数人が現れた。
「お疲れでしょうから早速お部屋へご案内させていただきます。ささ、こちらへ…」
「あぁ。あと、荷物は大丈夫です。数日の滞在で自分で持てる分を持ってきていますので。」
「さようでございますか。であれば、お食事の準備を進めてもらいましょうか。騎士の方々の馬はあちらにいる執事へ…」
部屋へ案内すると同時に、現れたメイドが荷物を持とうとしたのでそれを拒否する。
メイドは困惑しながらも彼の言う通りに下がり、屋敷内へ一足先に戻って行った。
騎士達の馬の場所も確保できるとわかり、些細な荷物を持ちながら彼の後ろから屋敷内へ入る。
屋敷の外観から大きな屋敷であると思いはしたものの、中はまさに「豪華絢爛」というような風貌であった。
2階建て。メインホールを明るく照らすシャンデリアが数台。著者不明の石像に壺。生花の花束。壁の至る所にある絵画。
これが被害が甚大で支援を求めるような状態なのだろうか。
通されたのは、2階の奥の客間。
彼が言うに、1番広くて王族にふさわしい部屋だとか。
入れば、確かに広さはあるが、ここも華やかさが目立って仕方がない。
デコロ卿は隣りの部屋をあてがわれたらしい。他の棋士も別々で部屋を用意してもらっているそうで、羽振りの良さがうかがえる。
「お食事の準備ができましたらお呼びいたしますね。」
「はい。わかりました。」
僕らを部屋に通してすぐ、彼は戻って行った。
僕も荷物を適当な場所に置いていたら、ノックが4回。返事は待たずにドアが相手人が入ってくる。
「ヨムト様?片付けとか平気…っぽいですね。」
「はい。これだけですから。多少の身支度は自分でできるのでご安心を。」
「心配してないですよ。ただ…」
「予想通りですか?」
「まぁ、はい。」
相手はデコロ卿で、僕の片付けを心配してくれていたようだが無用だ。
別に0から10までレクソンやオキシー達にやってもらっていたわけでもないから問題ない。
だが、デコロ卿の考えていることはそれとはまた別であるようで、何とは言わないが、それを僕に聞いたきた。
それに肯定する。
悪い方の予想として。嘘をお父様についているんじゃないかと考えていた。
本当は災害なんて無いのにあると嘘をついて。
災害があったとして、復興できる財力を持ってるのに嘘をついて。
「でも。証拠がないならどうしようもできませんからね。」
「じゃあ見つけましょうか、証拠。」
「はい。」
デコロ卿と話をしていたら、またノックが4回され、ドアの外から声がした。
「早々ですが、お食事ができましたのでお呼びしました。」




