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15話

ジャギー領は王都から1日もかからない。朝早くから行けば夕方には着くぐらいの距離だ。

だから夕方には着く。

整備された道を適度なスピードで進む。


王都に近いジャギー領。行く道はそれなりに舗装されていてぬかるんではいるも車輪がハマるほどでもない。

若干の林はあるが、害獣が現れるような報告も歴史もない。


ジャギー領の街に川はあるものの処理する設備は整えているだろうから氾濫するようなことは起こりにくいだろう。

ジャギー領は工芸品を作ることに長けていて、制作された工芸品は優先的に王都で流通している他、お母様が購入しているのを見たことがある。

それだけ質の良い、良品なんだろう。


工芸品を作っているのは人。もし被害が出るとするなら「人」だろう。

でも、その「人」なら、領の管理者がしっかり金銭的な援助をすることで解決する。

王都への流通や王族の購入で、金銭的な面ではそんなに困っているとは考えづらい。

グルヴェン伯爵の装いも、貴族たらしめる高級品ばかりを身に着けているのを見てもおそらくだがそうだろう。

それでいて、被害が甚大だから支援を要求するなんてなかなかおかしい話だ。

むしろお父様と一緒に他領へ支援するべきだろう。


でも、もしかしたら大雨と同時期に何らかの病気が流行り、そういった面で被害が及んでいる可能性もある。

その場合は…


「ヨムト様。」

「ん、デコロ卿?どうしました?」

「ずっと下を向いていたので。」

「いや、領のことについて、考えていたので。」

「あぁ。ジャギー領は栄えてるところですし山々はありませんからね。川野流れも基本は穏やかですし、雨風を避けるための対策も講じているはずです。」

「知ってるんですか?」


デコロ卿に窓越しに声をかけられ、窓を開けて答える。

考え込んでいて下を向いていたのを気にしてもらっていたようで、素直に伝える。

すれば、デコロ卿はジャギー領の資料や歴史に無いことを喋ってくれた。


「以前、グルヴェン伯爵の強い要望があって警護をしていた時期があったんですよ。狙われるだとかの妄言で。」

「あぁー…占い師の言うことを信用して、ですよね。」

「その時に領内を見回して、王都から地続きで政策を施されている影響でこういった災害の影響は少ないと思うんですよね。」

「やはり、そうですよね。」

「いや、一介の騎士が偉そうに。申し訳ございませんでした。」

「ふふ。でも、僕にない知識なのでありがたかったです。それも考慮しようと思います。」


デコロ卿は自身の思うところを話しながら、わざとらしく丁寧な謝り方をした。

あまりにも似つかわしくない謝罪で笑ってしまったが、有益な情報だ。

それも参考にして見てみよう。


グルヴェン伯爵。過去も今も、どこか胡散臭く、本能的に警戒をしてしまう相手。

この件も、過去の調査をしたいという気持ちがあったにしろ、兄さんに良くない話をしたんじゃないかと思って、兄さんを唆す前に潰しておければという魂胆ではある。


果たして、被害は本物か。それとも別の何かが出てくるのか。


「楽しみだなぁ…」

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