11話
「魔法師…ですか。」
「あぁ。魔塔に確認したところ上位の魔法師だったようだ。」
風邪が感知して数日。お父様に呼び出されて執務室に向かうと、事故の顛末を教えてくれた。
お父様が最近王宮に出入りした魔法師を覚えており、魔塔に問いただして確定したらしい。
尋問をして自ら喋ってくれたようだが、王宮の尋問を受けたのであれば吐くほか無いだろう。
何されたかにはよるが、純粋な痛みによるものであれば魔法師は耐えられないだろう。
「どうして僕に教えてくれたのですか?」
「情報提供のお礼だ。」
「なるほど…ありがとうございます。」
それはともかくとして、お父様が何故これを教えてくれたのか気になり質問する。
すれば、治癒師に起こしてもらって話した内容についてのお礼だったらしく、納得がいった。
すると、執務室のノックが4回され、返事も待たずに開いた。
ドアの隙間から顔をのぞかせたのはお母様だった。
「お話中かしら?」
「いえ、今終わりました。」
「本当か!」
「兄さんも!隠れてたんですね?」
「驚いたか?」
お母様の問いかけに答えれば、、お母様の後ろから兄さんが現れた。
まさかいるとは思わず驚けば、兄さんはイタズラが成功したように笑った。
「アテラ、お前は今、剣の…まぁいいか。」
「私が連れてきたから許してよぉ。」
「だろうと思ったよ。」
お父様は時計を見て兄さんに向けて何かを言おうとしたが諦めた。
端から拾うに剣術の時間なんだろう。僕もはやく魔法の勉強をして行かないと。
お母様が兄さんを連れてきたといえば、お父様は苦笑いながら予想をしていたようだ。
お母様と兄さんが互いのソファに座り、お父様も執務椅子からお母様の側に座ったので僕も兄さんの隣りに座る。
目の前にいるお母様はいつもよりニコニコしているみたいだ。
「少し待ってね…あ、来たわ!入って頂戴!」
何かを待っているようだったので大人しく待っていれば、ノックが4回聞こえた。
すると、嬉しそうなお母様の声で、メイドがティーカートを引いて入ってきた。
ティーカートにはティーポットとクッキー、人数分のティーカップが乗っていた。
それと、丁寧に梱包された四角い何か。お母様は真っ先にそれを手に取った。
「ちょっと待ちなさい。」
「んもう、準備しなさい!」
「ここにあるよ。」
お母様のその様子を見て、お父様は立って、執務机の方に戻られた。
それをみたお母様が子どものように怒っているようだが、お父様は執務机の兄さんや僕から見えない位置から、地面からお父様の膝くらいまであるプレゼント箱を取り出した。
「ふふっ。じゃあ、はい。ヨムト。」
「アテラ。受け取りなさい。」
「え?」
それを見たお母様は、僕を見て持っていた四角い何かを僕に手渡した。
同時に、お父様が大きなプレゼント箱を兄さんに渡した。
何も考えつかない出来事で思わず声を上げる。
「お、俺にですか?!ヨムにじゃあ」
「私の息子は二人だぞ?」
プレゼント箱を渡された兄さんは、何か別のことを聞かされていたようで、渡されたことに驚いていた。
お父様の言うように、お父様お母様の息子は兄さんと僕の2人。
でも、これは一体。
「二人への誕生日プレゼントだ。」
「やっと渡せたわ!」
お父様がそれぞれ渡した物の理由を教えてくれた。
お母様は嬉しそうに笑ってくれている。
誕生日プレゼント。触ってわかった。僕のは本だ。
それより、兄さんが誕生日プレゼントをもらうのはわかる。
でもなんで僕も?僕はあの時、誕生日プレゼントの代わりをもうもらった。
過去にもこんな物もらったこと無い。過去は、兄さんが倒れてそれどころじゃなかったから。
「俺は、父上に1日稽古つけてもらうことを誕生日プレゼントにしたはず…」
「それとこれとは別だ。」
「いいんですか…?」
兄さんも、渡されたものに戸惑っていて何かを話すが、お父様は首を振った。
それに兄さんは表情に嬉しさを滲ませた。
「いいとも。さ、箱を開けてみなさい。」
「ヨムトも、ビリビリって破いちゃっていいわよ。」
なかなか箱を開けない、梱包を解かない兄さんと僕を見かねて、お父様お母様は開けるよう指示をする。
顔を見合わせて、言われた通りに袋を開ける。もちろん、丁寧に破かないように。
「魔術、の本ですね!これ!」
「っえ。これは、真剣…」
僕の中身は、予想通り本。しかも魔術の本。
これは、魔法師でなく魔術師が記述した本。
世に出回っている数がとても少ないと言われる本だ。しかも真新しく見える。
兄さんの方は鞘付きの剣。兄さんの言うように真剣の様に見える。
とても嬉しそうな顔で、その嬉しさを分けてもらっているみたいだ。
「これで、よりそれぞれの学習に励むように。」
「あら、私は別に良いわよ。負担に感じず、自由にやりなさい。」
兄さんや僕の表情を見たお父様とお母様はそれぞれの、兄さんと僕の期待を寄せてくれた。
お父様はより学んでほしい、お母様も学んでほしい気持ちは有りつつも、ペースは変えなくて良いと伝えてくれた。
これをいただいて、学ばずにいられるものか。
「はい。」
「はいっ!わぁ…でも、ちゃんと扱えるようになってから使います!」
「アテラはそうだな。危ないから、ちゃんと部屋においておきなさい。」
「そうします。あぁ…うれしいな…」
素直に返答すれば、兄さんの大きな返事が聞こえた。
でも、真剣である危険性をわかっているのか、まだ扱わないと決めていた。
お父様は苦笑いながら肯定して、兄さんに剣を保存するよう伝えた。
兄さんはそれに答えながら、剣をゆっくり床に添えた。
「さ!お茶を飲みながらお話しましょ。」
「業務が残っているから少しだけだぞ?」
「ヨム、その本読めるのか?」
「理解は難しいですが…でも、いつかは読めるようにして兄さんを助けますよ。」
「ハハッ!それは頼もしいな!期待してる!」




