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10話

「まぁ…ヨムトのお友達…!」

「…それでいいのか?」

「はい。」


彼女の要求に、お母様嬉しそうな声を上げて、お父様は慎重な声で返した。

それに彼女は真剣な顔で答える。

他国の王子を救った後の要求が、僕と友人関係になること。

それは、それで…どうなんだ?

いや待て。これでもし、彼女と友好的な関係を築くことができれば治癒師の力を利用…いや、その考えは悪い貴族と同じ考えになる。


「ふむ…私としては一向に構わんが…ヨムトは?」

「助けていただいて、拒否権があると?」


お父様は僕に聞いてきたが、これを断る権利は僕にはない。

それに、友人になる程度なら構わない。国の情報を喋らないように気をつけさえすれば。


「ハハハ!そうだな。ではルキデリル国の第一王女。貴殿をヨムトの友人として認めよう。」

「ありがとうございます!」


僕の返答を聞いたお父様は笑って、彼女を僕の友人と認めた。

別にお父様がいなくても僕がそう言えばいいだけの話だが。


「それじゃあ、もう夜も遅いから、私はフェノール王女殿下をお送りしていくわね。」

「そんな恐れ多い」

「いいのよ。ほら、行きましょ。」


話が終わったところで、お母様は彼女を部屋に送り届けると申し出て、恐縮する彼女といっしょに部屋を出ていった。

この部屋には兄さんとお父様と僕の3人になった。


「…ヨム、起きて聞きたかったことがある。」

「はい。何でしょうか?」

「お前は、自分がああなるってわかってて俺と交代したのか?」


そのタイミングで、兄さんは僕に質問をした。

それは、聞かれて答えに困るような質問。

過去から戻ってきて、こういったことが起きるから~とは言えない。

そうなると、何か言い訳を考える必要がある。聞いているお父様も多少納得するような言い訳。


「…いえ。そんなわけないじゃないですか。」

「本当か?」

「言ったじゃないですか。お父様の隣に座りたい。誕生日プレゼントとしてって。それだけですよ。」


お願いをしたときと同じ理由。お父様の隣に座りたい。それを押し通す。

僕ですら、これまで行きていた僕がする行動とは思えないとわかっている。

でも、理由としてまともなのはこれだ。

そう話したら、兄さんは納得していない顔をした。そうだろうなぁ。

だが、突然頭に優しい衝撃が置かれた。お父様が僕の頭に手を置いた。


「可愛らしい理由だな。」

「お父様…」

「アテラ。お前ももう部屋に戻って寝なさい。私も戻ってやることをする。」

「父上!」

「ヨムト自身がそう言っているんだ。理解をしてあげるのも兄として必要だぞ。」

「ぐっ…」


お父様の行動に戸惑っていたら、しばらく僕の頭を撫でた後に、兄さんに部屋に戻って寝るよう指示をした。

それに納得のしていない兄さんが何かを言いかけたが、父上に諭されて、押し黙ってしまった。

流石、お父様ということだろうか。


「ヨムトも。いくら回復したとは言え、安静にしておいて悪いことは無いだろうから。」

「はい。もちろんです。」


僕の方にも指示を出されたので大人しく従う。


「わかりました…ヨム、また明日な。おやすみ。」

「はい。おやすみなさい。」

「おやすみ。」


何も納得してない兄さんは、お父様の命ということで仕方なく、寝る前の挨拶をしてくれた。

それに返せばお父様もしてくれ、兄さんといっしょに部屋を出て行った。

部屋のドアが閉まる。


同時に、起こしていた体を倒して横にうずくまる。

急激な体の回復による好転反応と、家族と異なる治癒師の魔力を体がすんなり受け入れなかったせいで、ひどい風邪をひいたような感覚が治まらない。

これまでは、魔法を使って平気なように見せかけていた。

過去に一睡もしない日を連続して過ごした際、周りに勘付かれてしまうことの面倒くささから生み出したものだが、ここで役立ってくれるとは。


もちろん、治癒師である彼女であれば僕のこの症状を感知される可能性もあった。

それでまた治癒をしてもらったら、兄さんお父様お母様の前でこうなってしまう恐れを考え、彼女にも感知されないよう、魔力を感知する能力を下げる魔法と魔防の魔法を組み合わせて、どうにか乗り切った。


あとは、このまま眠るだけ。

きっと起きたときには回復しているだろう。


けど、それはあまりにも甘い予測で、朝になっても症状は治まらず。

翌朝、僕を見に来てくれたレクソンにバレて事情を説明せざるを得なくなり、事故より遅く3日間も寝込むことになった。

もちろん、兄さんやお父様、お母様。レクソンやオキシーにはしっかり怒られた。

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