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9話

彼女の返答を待って、兄さんは部屋に入った。

彼女の後ろで僕が目を覚ましているのに気づくと、足早に僕の側に寄った。


「ヨム!!目を…覚ましてくれたんだな…!」

「はい。王女殿下に助けていただきました。」

「私は、私ができることをさせていただいたまでです…国王陛下と女王陛下をお呼びしてまいりますね。」


兄さんは彼女の隣に立って、横になっている僕の様子を見て、心底安心した、嬉しいという顔を見せてくれた。

彼女に助けてもらったことを言えば、彼女は一礼混じりに謙虚に答えて、部屋を出ていった。


「王女に呼びに行かせるなんて、母上やオキシーが知ったらひどく怒られそうだな。」

「そうですね。…まさか治癒師がこの国にいらっしゃるとは思いませんでした。」

「俺もだ。偶然とはいえな。ヨムは幸運だな。」

「そんなことは…」


兄さんと会話をしている内に、再度ノックが4回と彼女の声、お父様お母様の声がして、兄さんが入室を許可した。

流石に体を起こそうと体を動かせば、兄さんが手伝ってくれ、座る形にはなれた。

そう言えば、起き抜けに感じた衣類がまとわりつくような感覚が無くなっている。

兄さんが魔法を使える訳が無い。となると先程魔力を溢れさせていた彼女だろうか。

彼女は、兄さんにお父様、お母様とは離れた位置で僕を見ていた。


「ヨムト…もう、もう痛くないの?」

「はい。ルキデリル国のフェノール王女殿下のおかげです。ご迷惑をおかけして」

「迷惑なんか無いわ!ヨムトが目覚ましてくれたことが何よりよ…!」


お母様が問いかけながら壊れものに触れるように僕の頬に触れたので、その問いに返す。

僕の回答にお母様は言葉を遮って、僕を優しく抱きしめてくれた。

あたたかな気持ちに、このまま溺れたくなってしまう。

だが、言わなければいけないことがある。


「…お父様お伝えしたいことが。」

「何だ。」


お母様の抱きしめてくれている腕に触れれば、お母様は僕から離れる。

そこで、お父様に目を向ける。

お父様の促しを待って、僕は魔弾を撃たれたことを話した。

魔弾を撃たれて倒れたということ。椅子に、高度な魔法陣が描かれていていたということ。

それを伝えると、お父様はハッとした。きっと、心当たりがある人物がいるんだろう。


「…あの馬車は燃やして捨てるよう指示しよう。」

「そうされてください。」

「魔法陣に関しては後で対処するとして…ルキデリル国の第一王女、フェノール・ロキサン。」

「はい。」


お父様は考え事を少しした後に、彼女の名を呼んだ。

彼女は、頭を下げ応対した。


「此度は我が息子のヨムト・グフォンを救ってくれたこと、心より感謝する。」

「私も、改めて感謝させていただきます。本当にありがとう。」

「俺もだ。ありがとう。」

「僕からも。治していただき、ありがとうございます。」

「あり、がとうございます…皆様にそうおっしゃっていただけるなんて恐縮です…」


お父様とお母様、兄さんと僕も彼女に感謝を伝えた。彼女はそれだけの称賛を受け取る必要がある。

彼女は恐縮しながらも称賛を受け取ってくれた。


「それと、今後我が国は貴女の詳細についてルキデリル国の第一王女以上のことは明かしません。」

「もちろんだ。他に望むことはあるか?可能な限り応えよう。」

「そんな!私は皆様よりいただいた先程のお言葉とご対応だけで十分にございます。」


お母様は我が国の彼女に対する対応、つまり彼女が治癒師であることは明かさないことを約束した。

続いて、お父様が彼女に褒賞を与えようとしていた。が、彼女はそれを否定した。


「そうおっしゃらず。大きな決め事などは困難かもしれませんが、具体的なモノであればすぐにお渡しできる可能性もありますし。」

「ですが…」

「…助けていただいて、何もお返しができないのも困ってしまいます。何か、お返しをさせていただけませんか。」


何も受け取ろうとしない彼女へ向け、お返しに関して追加して伝える。

それでも拒否をしようとする彼女に、今度は形を変えて、お返しの話をする。

少々強引で押し付けがましいが、これは僕と彼女間の話ではなく国同士のことを考えてだ。

過去、ルキデリル国と何かあったことは一切無いが、ルキデリル国と何かあった場合を懸念して、カードは消したほうが良い。


「…わかりました。では…」

「はい。」


彼女は迷うように視線を彷徨わせてから、こちらに目線を合わせて答え始めた。


「…今後も、第二王子殿下と交友する機会をくださりませんか?友人ということで。」

「…はい?」


それは、予想していたものとは異なる内容で、短期間で2度目の外的に出さないような声を出した。

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