噛まずにはいられない(無自覚)
姉さん事件です
密室から飴が消失しました
現場は私の口腔内です
歯に囲まれた舌の上で
被害者の飴が行方不明になったのです
確かに歯は動きます
ただし私は自分の顎を……
咀嚼を……
した記憶がございません
唾液も……
自分の意志で出した記憶がありません
呑み込んだ……ですって?
バカな!
いくらなんでも
それに気付かぬ私ではありません!
恐らくこれは……
トリックッッッッッ!
犯人は何らかの手段で密室を作り出した……
しかし
どうやって?
ご覧ください
綺麗な歯並びでしょう
通れるのはせいぜい糸楊枝くらい
糸でドアノブを施錠と言うのはありがちなトリックですが
……非常に残念なことに私の口腔に
ドアノブは無いッッッッッ!
いったい犯人はどうやって飴を消した?
とりあえず状況を再現してみましょう
姉さん
その缶から
飴をひとつください
いいから
正義を為すためです
速くッッッッッ!
白いのじゃない
ハッカは嫌いだと言っている
そのピンクの飴をッッッッッ!
では口に含みますね
ボリッ
ゴリッ
ボリッゴリッ……ボリゴリボリゴリ……
ゴクン
消えた
飴がいつの間にか消えた
記憶が……
飛んでいるッッッッッ!
えっ
犯人は私?
噛んで……呑み込んだ?
バカなことを
私はこう見えてもいまだに乳歯揃いですよ
そんな恐ろしいことできるはずがない
もう一度状況を再現しましょう
今度こそ密室を破る手がかりを見つけ出すッッッッッ!




