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忠犬、魔王  作者: 笹の原
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第一話、仲違い

「潔く剣を置け」


 ユリサエルという者が命令をした。

 俺の右手には、巨大な剣が握られている。後ろを振り返ると、黒い羽を生やした仲間が大勢倒れていた。


「そして地獄に堕ちろ」


 地獄とは文字通り、天国の反対側である。大勢の天使達が地獄に堕ち、いわゆる堕天していった。ユリサエルは俺にも地獄に堕ちろというのだ。


 次の瞬間、ユリサエルの剣が俺の剣をなぎ払い、俺は押し倒されて地面にひれ伏していた。


「はっは、地獄にいったら、すぐに天界に反逆してやる」


 俺は答えた。先に堕ちていった、仲間が今ごろ地獄の征服をしているに違いない。ユリサエル、今にみていろ。おまえの喉首などかききってやる。


「言い残す言葉はそれだけか?」

「死ね」


 俺は意識を失った。





 電灯の明かりに吸い寄せられるようにしてふらつく足を懸命に前へと動かしていた。

 帰ったら、洗濯物を取り込んで、その前にコンビニで弁当を買わないといけない。残業代もでないのに、新入社員の面倒を見せられ、その割には、新しく入ってきた新入社員に、給料で抜かされている。あー私どうして働いてるんだろう。


「どこかの王子様が助けてくれないかな」


 電柱にもたれポツリと呟いた。


 次の電柱まで歩こう。ダメだったらタクシーを拾えばいい。でもタクシーはこんな路地から入ったところ通ってないしな。


 コツンと足先になにかがあたった。柔らかい感触があり、地面を見ると、それは人だった。


「ひぃ」


 私は悲鳴を押し殺して、走ろうとした。でも、そいつは私の足首をつかんで離さなかった。私殺されるのだろうか。


「殺す、絶対に殺してやる」


 恐る恐るそいつを見る。うつ伏せで倒れているが、すごい殺気を感じる。しかも、今殺すって言ったよね。


「だ、誰か、はな、離してください」


 そいつは顔をあげる。うっすらとした電灯の明かりに照らされ、顔の全体像が明らかになる。しゅっとしまった輪郭。鼻は高くて、目は鋭い。まつげ長いし、黄金比ってこういう顔を言うんだろうな。猛烈なイケメンにたいし、別の意味で言葉を失う、独身のOL、伊木霞いぎかすみ、31歳でした。

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