第九話
通常探査任務を問題なく終えたある日−−俺は呼び出しを受け、基地内の会議室向かった。
整備担当の黒岩とオペレーターの桃瀬以外のメンバーが集まっていた。
「お、来たね」
五十嵐がモニターに数枚の写真を映す。
写っているのは、どこかの海中で引き上げられた金属片。
「これは、宇城たちが先日の任務で回収した残骸」
俺は思わず息を呑む。
「残骸…」
五十嵐は短く頷く。
「問題は、どこの何なのか分からないって事なんだよね」
「この残骸に対する、該当データが無いんです」
富士川が渋い顔で呟く。
「分析もアテにならないわけですか」
宇城が少し嫌味ったらしく口を挟む。
俺は写真をじっと見つめながら、心の中で考えた。
(…海中で何が起きていたんだ?これがどこの国の物なのか、まったく見当がつかない)
「予想でいいか?コイツは多分、コーストライン合衆国の旧式の残骸だと思う」
阿賀白の声に、俺は思わず眉をひそめる。
(コーストラインの旧式…日本、同盟国の海域で何かやっていた…?)
「コーストラインの旧式だとして、なぜここに?そしてコーストラインの目的は?」
宇城の声に、会議室の空気が少しピリリと張りつめる。
「そんなの俺には分からん。ただ、コーストラインの機体だとしても、コーストラインが動かしてるとは限らないかもな?」
阿賀白は肩をすくめながら答える。
「つまり、阿賀白が言いたいのは、第三勢力がいると?」
五十嵐が呟く。
「あくまで予想だけどな」
阿賀白の予想に俺は肝を冷やした。
五十嵐はモニターの写真に指を走らせる。
「現状まとめると、残骸はコーストライン旧式の可能性、位置は日本国海域、でも運用主体は不明、第三勢力の関与も否定できない」
富士川は頷きながら付け加える。
「さらに東州連合の動きも気になります。ここ数日、海域に自律式無人機が不具合を理由に侵入」
先日の無人機の事だろう。
俺は拳を握り締める。
(…東州連合、コーストライン、謎の第三勢力…軍でも警察でもない俺たちが対処できる範囲を超えてる。でも、見過ごすわけにもいかない…)
「まずは情報収集の徹底。無人機のログ、海域監視データ、残骸の分析結果、全て洗い直す」
五十嵐の言葉に、会議室が頷く。
富士川も口を開く。
「分析が鍵です。残骸の細部から手がかりを見つけられるかもしれません」
阿賀白は腕を組み、ため息をつく。
「分析ねぇ…分析してもコッチから先制攻撃は出来ねぇしなぁ…」
「仕方ないでしょ。そういう決まりがあるんですから」
宇城が淡々と阿賀白を宥める。
「ま…とりあえずはそういう事で。会議終わり!皆、任務に戻っていいよ」
会議が終わり、各自の任務へと戻った。
俺は深く息をつき、伸びをした
(…とりあえず俺の出来る事をやるしかないか)
海洋特殊作戦局は、軍でも警察でもない。
でも、ただの調査機関というわけでもない。
曖昧で不安定な組織。




