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第一話 悲運の邪魔者

隠れ家 ??? 1554年 主人公8歳

わしの名は福原貞俊と申します。わしは主君であり同居人の勝丸いや鳥羽雄親様とその乳母の夏夜さんと尼子と毛利の領国の境目にあるあぶれ者の町瀬古浦村で8年の時を過ごしていた。勝丸は生後間もなく母妙玖様を失い父であるわしの旧主毛利元就様によって殺害命令が下った為それを案じたわしの父で宿老の福原広俊によって心の病を患い隠居していたわしに幼名祐寿丸を押し付けてこの瀬古浦村に追放したのだ。わしはこの手に渡った祐寿丸をどうしようか悩んだがどうしてもこの手から手放すことが出来なくて夏夜さんの手も借りて育てることになったのだ。それに伴いわしは祐寿丸に仮名として勝丸と言う名前をつけ姓を鳥羽、諱を雄親とすることを決めたのだった。わしの願いは一つだった。勝丸には勝気にそして健やかに育って欲しいと言う切なる願いだった。幸いにも勝丸は利発にして活発な子で最近に至っては聡明すぎて困っているぐらいだ。今のわしは勝丸を養うためにかつて趣味にしていた薬作りを再開させ今は夏夜さんと勝丸と薬屋兼薬草園を営んでいると言うのが瀬古浦村での鳥羽家の立ち位置であった。鳥羽家と言うのは勝丸の本名を鳥羽雄親としたのでその縁でわしら全体に付けられたのだ。だから、わしの名も瀬古浦の民たちには鳥羽貞俊と認識されていた。瀬古浦の民たちはわしと勝丸、夏夜さんのことを家族だと思い込んでいるようで中々難儀なことになっていた。

「貞俊!勝丸と武芸勝負して下さい!」と言って現れたのは木剣を持った勝丸だった。

勝丸はわしが教えたのもあって武芸も読み書きも一通りは扱える。それもあって最近は長の居ない瀬古浦村の村長的な存在になっていた。

「勝丸、負けませんぞ!」と言うとわしは立てかけてあった木剣を取ると黙って勝丸に向けた。

こうして始まった勝丸との勝負はほぼ互角。僅かに勝丸の方が有利かと思われた。

「強くなりましたね、勝丸。」と言うと勝丸は嬉しそうに微笑むと

「あったりまえでしょ!私が勝ったら教えてよ。私が何者なのかをさ!」と言うと勝丸は鋭く刀を振るったのであった。

わしは動揺しながらも間一髪逃れると

「勝てればですけどね!」と言って勝丸に一太刀を入れた。

わしはすごくこの時間が好きだ。かつての因縁を忘れることが出来て何よりも愛する勝丸の成長をこの手で見ることが出来るから。

「勝丸!いや、雄親さん!」と言う慌てた声が聞こえて来てわしと勝丸が手を止めると勝丸が

「瑛次郎さん、どうしたんですか?」とおっとりとした笑顔で尋ねると鍛冶場を営み鉄砲やその玉、大砲を製造する瑛次郎さんはそんなおっとりしている場合ではないと訴えると

「雄親さん、ここの形式上の領主である尼子国久様が尼子晴久様に討たれた!この瀬古浦村の地にも尼子晴久様の回収部隊が迫ってます!追い出すなり受け入れるなり決断を!!」と言う瑛次郎さんに対して自分を落ち着かせるかのように目を瞑っていた勝丸がわしの方を一瞬見た。

わしは

「勝丸、わしはどこまでも勝丸について行く。大丈夫だ。」と言うと柱の陰から夏夜さんも現れると

「勝丸くん、私も微力に過ぎないけどついて行くよ。」と言った。

勝丸はそれに対して柔らかく微笑むと

「えぇ、私には貞俊と夏夜さんが居てくれれば何の問題もありません。瑛次郎さん、村中の大人を栄峠の崖の上に集結させて下さい。尼子に目にものを見せてやります。…鉄砲も用意して欲しい。」と言うと瑛次郎さんは目を見開くも

「…栄峠。確かにあそこを通らねばここへは辿り着けない。しかも、あそこは今…。分かりました、すぐに集めます!!」と言うと駆け出して行ったのであった。

勝丸はそれに頷くと

「貞俊、行こうか。夏夜さんも来て欲しい。…それと貞俊。この戦が終わって生き延びていたならば教えて欲しい。私が何者なのかをな。」と言った。

わしは覚悟を決めて頷くと

「えぇ。これが終われば全ての顛末をお教えしますよ、雄親さま。」と言うとわしと勝丸、夏夜さんは頷き合い駆け出したのであった。

栄峠 鳥羽雄親

私は知りたかった。己が何者なのかを。私には父母がいなかった。居るのは同居人である貞俊と夏夜だけで周りは私たちのことを家族と言ったりもするが私はどうにも違うと感じていた。だから、この戦に勝てばすべてを教えてくれると貞俊から約束を得たことで私の気持ちは初陣らしくないほど高ぶっていた。私たちが栄峠に着くと笹堂瑛次郎さんや馬借を営む永戸長吉さんたちはもう既に来ていた。

「皆、来てくれたね。私の作戦を聞いてほしい。私はここから投石攻撃を仕掛けようと思っている。男衆は貞俊の指揮のもとで大小構わず投石を。女衆は私と夏夜と一緒に騎馬の妨害をするべく川から水を汲み上げて水を浴びせるんだ。分かったな。」と私が言うと

「おうっ!任せろ、雄親さん!いえ、雄親様!」と長吉さんが腕っぷしを見せながら言うと女衆の方からも仙さんが出て来ると

「女のしつこさを舐めてもらっては困りますわ。」と言いながら闇に染まりまくった瞳で妖艷に微笑んだのであった。

私は頷くと

「準備を。」と言って命令を発した。

それから、しばらくして

「なぁ、あの街。本当に要るのか?あんなあぶれ者ばかりのしかも治安も悪い街など足手まといになるだけなんじゃないのか?」と言う足軽の声が聞こえて来て私が怒りに震えながら時を待っているとついに時は訪れた。

「開始!!」と私が叫ぶと

「我らの町は私たち自身で守る!!」と言う仙さんの声と同時にけたたましい量の水が浴びせられると貞俊の

「投石開始!」と言ういつもの苦しみに呻き苦しみつつも気質温厚な貞俊らしくない勇ましい声が響いた。

私は貞俊の覚悟を酌むと

「放水!」と叫んだ。

混乱状態に陥る尼子勢に私は

「瑛次郎さん、鉄砲を!」と叫ぶと瑛次郎さんから乱雑に投げつけられた鉄砲を手に取ると立派な馬に跨る大将に標的に定めると

「ババーンっ!」と音を鳴らすと大将首に当たったようだ。

私は大将に何人も近寄るのを見て銃創に効く薬を出すと相手方に投げ入れると

「其方ら!大将に告げよ!我が名は鳥羽雄親。この瀬古浦村を束ねる者なり。真心なき者にこの瀬古浦村は渡さんとそう伝えよ!!あぁ、そうそう。その薬はお前らの大将にやる。毒物ではないから安心召されよ!次に会うときには覚悟為されよ!」と言い残すと負傷者とは思えぬ声で騎馬の大将が

「鳥羽雄親殿、恩情感謝致す!我が名は宇山久兼なり!次、相見えることを楽しみにしており申す!」と言うと瀬古浦村から遠ざかるように馬を走らせたのであった。

私は彼らの姿が見えなくなるまで見送ると死体や怪我人の手当てをしたのだがそこには一人の瀕死の青年がいて私は彼を集中的に介抱したのであった。

第1話の主な登場人物

鳥羽雄親(とばかつちか)……今作の主人公で通称は勝丸。瀬古浦村の村長的存在。

福原貞俊(ふくはらさだとし)……主人公の親代わり的なポジションで勝丸の正体を知る。

笹堂瑛次郎ささどうえいじろう……瀬古浦村の住民で鍛冶屋を営む。高度な技術を持ち鉄砲も自分のところで作っている。

せん……瀬古浦村の住民。

永戸長吉ながとちょうきち……瀬古浦村の住民で馬借を営む伝達の要。

駄作ですがよろしくお願いします。

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