2-2 教室の不審者
告白しよう、マジで。
俺が湾田さんに告白するなんて……そのシーンを想像するだけでも足が震えるんだけど、こんな現状じゃまずい。ダメだ。
うかうかしている間に湾田さんに近しい男子が絶対先に告白してしまうだろう。俺が先に好きだったのに……なんて俺は死んでも思いたくない。脳が破壊される。それは再生できない。
しかし俺レベルの優先度ではどう考えても湾田さんと二人きりになれるチャンスは訪れない。それは先日と変わらず同様だ。
いつまで待っても話せそうにないなら、こっそり手紙を送るしかない。手紙で告白してしまうのはあっさりしすぎていて誠意に欠けるかと思ったので、スマホの連絡先を記しておき、湾田さんが連絡を返してくれたら改めて思いを伝えよう。
放課後、クラスメイト達が部活へ行くのを待ち、教室が空っぽになったのを見計らい、俺は湾田さんの机の引き出しに簡素な手紙を差し入れる。机を間違えるなどというバカな真似はしない。
さて、脱出だ……と自然さを演出しながら教室を出ると、廊下に湾田さんがいる。
あれ? まだいた? クラスメイトどころか、学年の生徒の大半がフロアからいなくなるまで待って実行したつもりだったのに。俺は焦る。だが手紙を入れたところを見られたわけじゃない。問題ない。
いや、そうじゃないだろ。手紙はどうせ湾田さんに読んでもらうんだから見られたって最悪構わないのだ。それより手紙なんてどうでもいいんじゃない? だって今、俺と湾田さんは期せずして二人きりだ。
告白するか?今。でも手紙は入れたんだから告白は読んでもらってからでもいいはずだ。いいのか? せっかくのチャンスなのに? そもそも手紙は苦肉の策のはずで、俺は面と向かって湾田さんに伝えたかったはずだ。
だけど唐突に巡ってきたチャンスに俺はパニクっている。どうしたらいいのか、冷静に思考できない。
「湾田さん、今ちょっとだけ時間いい?」
訊いてしまっている!?と自分で驚くが、口をついて出た言葉は止めどない。
「はあ、大丈夫ですけど……」
「部活、始まっちゃわない?」
「部活は……」
「まあいいや。五分だけごめん! 行こう!」
「っ…………???」
ままよ!
俺はとりあえず、誰かに見られる前に湾田さんの手を取り、四階から三階へ移る。さらに、そこから人気の少ない別棟へ渡り、周囲に誰もいないであろうことを確認してから、心を落ち着ける。