1-3 図書館の外の不審者
しばらく余韻に浸ってから帰る。
面白い!って言われちゃった。もしかしたら明日からは友達同士か? 朝、個人的に挨拶されてしまったりして。
気持ち悪さが顔に出ているかもしれないと思いながらもそんなことを考え、俺は自転車小屋をあとにする。
俺は近場に家があるので徒歩通学だ。グラウンドの前を通り、中庭を突っ切って、正門の方へ向かう。
あれ?
湾田さんがまだいる。
校舎から独立して建っている図書館。そこから湾田さんが一人、とてとてと出てきたではないか。
帰ったのかと思ったが、図書館に用事を思い出して戻ってきたといったところか。
好機!
俺は湾田さんにすすすと近づいていき、手を挙げる。
「湾田さん」
湾田さんは目を丸くし、口元に手を当てる。
「あ、どうも……」
「?」
なんか急にテンションが下がった? いや、常にあんな明るくはいられないし、一人になったときくらい気持ちを休めたいんだろう。俺はまた湾田さんの可愛らしい面を発見してしまった。そしてそれを俺に見せてくれたことを誇らしく思う。
調子に乗って尋ねてみる。
「図書館に用事があったの?」
「あ、はい……」
「なんか意外。なに借りたの?」
「ええっ……?」
湾田さんはなんでそんなことまで訊いてくるの?みたいな恥じらい顔をするが「しょ、小説です……」と答えてくれる。
「すごいな。湾田さんは多才だよね」
運動もするしダンスも踊るしゲームもするし、おまけに本まで読むとは。
「はあ……ありがとう、ございます……?」
「……湾田さん、ちょっと疲れてる? 大丈夫?」
「部活を、してましたから」
「そうだよな。今まで部活してたわけだし、疲れたよね」
あまり引き止めても悪いから、今日はとりあえず帰ろう。本日の満足度は高い。もう充分だ。
「バイバイ!」
湾田さんに手を振ると、湾田さんは不思議そうな顔をしながらも頭をこくりと下げてくれる。
「は、はあ……あ、ばいばい、です」
うひょー。帰ろう帰ろう。