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第6話 12歳/入学

第6話となります。

ご意見ご感想などお待ちしております。


※サブタイを修正しました。

十二歳になった。


入学の日を迎えた私は全くと言っていいほど生色がない蒼白そうはくな表情になっていた。


「グヤコールス様、大丈夫ですか?」


最初に私の様子がおかしいことに気付いたのは執事のピエールだった。


彼は珍しく心配で落ち着かないさまでありすぐに両親に報告していた。


「一体どうしたのだ?」


両親も私の顔色を見て絶句していた。


「入学式を迎えて緊張して寝れなかったのです」


私はありふれた嘘を述べたが、実際は時戻りの前のことを思うと不安でいられなかったのが理由だった。


こんな事を言えるはずもない。


「無理もないわね。今日は新しいクラスメイトと会うのですから」


母も不安な面持ちであったが、むしろ母の話を聞いた私がより不安になる。


新しいクラスメイト、そこには未来で婚約者になる女性、エミーナがいる。


彼女と出会った時、私はまだどう接すればいいかわからずにいた。


母も事情を知らないとはいえ煽るようなことを言わないで欲しい。


とにかく私として今日の入学式を無事に済ませてさっさと屋敷に戻ることにした。



中等学園は我が自領ロジクールにある。


この国の中等学園は基本的にどんな階層のどんな家の子でも入学ができるようになっている。


これはこの国の創始者たる初代王が選民思想を嫌ったためだと聞く。


もちろん高等学園になればそれぞれの家の事情もあり有力な貴族階級や経済階級の子息令嬢の多くは王都へ進学する。


我がペパリッチ家は有力な貴族階級に入るそうだが、実際は富裕農家の領主で他の貴族階級や経済階級とは一線を画しているので風変わりな家級になると言う。


これは父の受け売りだが「だから我が家は敵がいない」と話すのがその通りなのだろう。


他の貴族階級や経済階級の家との揉め事は聞くことはない。


むしろ水害や冷害、蝗害の方が天敵でその対処法に頭を抱えている姿が印象的だった。



入学式の式典が始まった。


私は他の生徒と同じく指定された席に着席した。


座席は男女別れており、保護者席はその後方に置かれていた。


私はまず保護者席にいる両親の姿を確認する。


両親は知り合いが側にいるようで隣の保護者と話をしていた。


周囲に自然と溶け込んでいる両親は選民思想が薄いので他の保護者も話しやすいのだろう。


一方で私は一番探すべき人物、エミーナの姿がどこにあるか周囲に見回すと私はある事に気付いた。


・・・エミーナの容姿が思い出せない。


そう言えば彼女はどんな姿だったか。


背は?


髪型は?


髪の色は?


私はすぐに彼女の姿を思い出そうとするが全く思い出せない。


・・・これも時戻りの影響?


私はこの結果に唖然としてしまう。


今まで思い浮かんでいたエミーナは・・・婦人洋服ドレスを着ていたが顔や髪の辺りは白くもやもやした状態だった。


何故、そんな状態になっていたのに気付かなかったのか。


心が彼女を拒んでいるのか、それとも断罪劇のトラウマがそうさせているのか考えるだけでも頭を抱えてしまいそうだった。


結局、そんな私を尻目に式典は終わってしまった。


私はクラス分けの発表の際にエミーナを探すことにした。


こんな時に無理に探しても見つからないものは見つからない。



入学式後、私は両親と合流すると学園の職員が待機する事務室へ移動する。


そこで保護者向けの書類をもらった後、どのクラスになったか教えてもらう。


私のいる1回生はクラスが4つに分かれていた。


その中で2組が私の所属するクラスになった。


時戻りの前もクラスは4つでありクラスが2組であることはかわっていない。


この辺りは変化がないようだ。


では、エミーナはいるのか。


前は同じクラスではなかったので今回も他のクラスだろう。


そう踏んでいた私だったが、今回は違っていた。



その後、教室に移動した私は担任が来るまで自席で待機をしていた。


「ねえ」


すると左隣から女の子の声が聞こえた。


少し低い声だったので、私は何気に声のしたそちらに顔を向ける。


視線の先にいたのは背中まで伸びた黒髪に茶色い瞳が目につく女の子がいた。


「あなた、お名前は?」


「グヤコールス・ペパリッチ」


私は淡々と自分の名前を答える。


すると女の子は一瞬だが、私を睨み付けるような仕草で見返す。


「ねえ、もう少しちゃんと優しく名前を言うべきだと思うんだけど?」


何故か女の子は私に注意をする。


何か煩わしい感じがいたので私は「すまない」と答える。


女の子は「ふうん」と感心したりで頷いた。


・・・ここは「ごめんなさい」と言うべきだったかな。


この辺りはもう少し子供らしさも必要かもしれない。


気を付けよう。


「それで君の名前は?」


「私はエミーナ・ナイトレイ。よろしくね」


その瞬間、私は言葉を失った。


思わず開いた口が塞がらない。


・・・エミーナだって?


あまりに急たことに気が動転して狼狽する。


時戻りの前はこんな口調だったか?


違う、そんな性格ではなかった。


・・・これも時戻りの影響なのか?


「どうしたの?」


私の様子がおかしくなったことに気付いたエミーナは心配そうに私を見つめる。


「すまない。あまり女の人に声をかけてもらうことがないので」


「そうなの?あなたなら年頃の女の子なら興味を持つと思うけど?」


「周りにそういう女の子はいなかったし、ずっと剣術を習っていたから気にもしなかった」


エミーナは指摘されるまで今の私は異性との環境は皆無だった。


「じゃあ、私以外の女子もあなたと友達になりたいと思うわ」


エミーナがクスクスと笑いながら話してくる。


「じゃあ、今後はちゃんと挨拶できるようにするよ」


そう答えるものの、私の意識はエミーナに向いている。


エミーナはその後も担任が来るまで私との会話を楽しんでいた。


こちらはそれどころではない心境なのに。


結局、その日は学園から戻るまで彼女の相手をすることになったのは言うまでもない。




帰宅後、私は一人自室で考え込んでいた。


エミーナとの接触はやはり避けられなかった。


運命の道筋はなかなか変更することは難しいと改めて知った。


ただし、エミーナの存在は変わった可能性があった。


彼女話し方や態度が違っていたのは事実であり、今後はどのように彼女と接するべきかを見極めなければならない。


そして、エミーナ・ナイトレイとの婚約をなくす。


これが私の目標と定めた。




私が断罪されるまで残されたのは8年。


まだ十二歳の時間は始まったばかりだと言うのみ憂鬱になりそうだった。

〇登場人物


グヤコールス・ペパリッチ

この物語の主人公です。12歳になり中等学園に入学しました。

そこで時戻りの前の婚約者、エミーナ・・ナイトレイと再会しました。


エミーナ・・ナイトレイ。

グヤコールスの時戻りの前の婚約者。今回も同じ学園で再会し同じクラスメイトになりました。

前の時とは違い強気な性格になっているようです。

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