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第1話 20才/断罪

新作を投稿します。

ご意見ご感想、誤字脱字などお待ちしております。


※サブタイを修正しました。

その日、私は同窓会のパーティー会場で断罪劇の主役と化していた。


その場にいたのは私が通っていた学園のクラスメイトたちだった。


誰もが私に対して冷然たる視線を向けていた。


私には味方など一人もいないと知る。


目の前にはパルダビュー・アリンガローサ王子と元婚約者であるエミーナ・・ナイトレイがいた。


彼らの近くには警護の騎士たちがおり見知った顔も中にはいた。


「あくまで知らぬと言うのだな?」


パルダビュー王子は私に罪を問う。


「はい」


今、私の置かれている状況はありえないものだった。


私は元婚約者であるエミーナ・ナイトレイの貞操を無理やり奪ったとして、現婚約者であるパルダビュー・アリンガローサ王子より罪の告発を受けている。


全く身に覚えのないことだった。


私はパルダビュー王子に罪を犯したことないと弁明をした。


もちろん、私はエミーナを抱いたことはなかった。


そもそも王命によりエミーナはパルダビュー王子と婚約することになったので、私は彼女との婚約を解消していた。


あれだけ彼女と愛を育んでいたはずなのに、彼女は簡単にパルダビュー王子との婚約を受け取った。


それは私にとって喪心以外の何物でもなかった。


だが、私の両親もエミーナとの婚約解消をすんなりと受け入れてしまった。


当事者である私を無視して。


そんな私のことをお構いなしに世間は私を笑いものにした。


パルダビュー王子とエミーナの純愛を邪魔をした愚かな男と。


きっと王家がはパルダビュー王子の威信のために手を回したのだろうと察した。


だから、私は然したる抵抗もしなかった。


それがどうだ?


私は何もしていないのに今こうして全く見知らぬ罪で告発されている。


「改めて言いましょう。王子、私は何もしていません」


「だが、エミーナはお前に襲われたと言っているぞ」


「では、私が王城へ登城したか確認して下さい」


「認めぬと言うのか?」


「やっていないことを認める訳にはいきません」


私ははパルダビュー王子に初めて抵抗することを決めた。


私は覚悟を決めた。


何故、このような理不尽なことをパルダビュー王子は行うのか?


私に何か恨みがあるのか?


気に食わないのならそれでいい。


それならば私は自死を覚悟してでもパルダビュー王子に抵抗してやる。


私は一歩前に踏み出すとパルダビュー王子を睨み付けた。


パルダビュー王子が目を大きくさせて驚いた表情を見せた。


隣にいるエミーナも私から目を逸らした。


私が初めて抵抗したことに驚いているようだ。


だが、ここで私の予想を超えたことが起きてしまう。


「無礼者!」


パルダビュー王子の近くにいた騎士が私に駆け寄ると剣を抜いたのだ。


誰もが止める暇もなく私の胸に剣が突き刺さった。


私は訳もわからず騎士の顔を見る。


目の前では私を刺していた騎士が笑みを浮かべていた。


騎士は私のクラスメイトだったガブリエル・スプリンゴラだった。


何故、彼が私を刺したのだ?


私との交流などなかったはずだ。


それなのにどうしてだ?


貫かれた胸からは血が絶え間なく流れている。


その光景を見ながら私は死を覚悟した。


いや、安堵を覚えていた。


これで私はこの理不尽な現状から逃れ流れるのだと。


「ざまあみろ」


彼の恨みを込めた言葉が聞こえた瞬間、ガブリエルの体が突き飛ばされた。


「グヤコールス!!」


その時、私は信じられないものを見てしまった。


ガブリエルを突き飛ばしたのは私を断罪していたパルダビュー王子だったのだ。


「この男を捕らえよ!」


「お、王子!!」


薄れゆく意識の中で私はパルダビュー王子が騎士の拘束を命じていた。


意識がより朦朧としていく。


その中でもパルダビュー王子の言葉は聞こえるのは何故だろうか?


「私は王子のために正義の鉄槌を下したのですよ!!」


「黙れ!貴様は私の愛する者を害したのだぞ!!」


愛する者?


パルダビュー王子は何を言っている?


先程まであれほど私を無実の罪で断罪していたと言うのに?


視線が黒くぼやけ始めたと言うのに私はパルダビュー王子の声を聞き続ける。


「くそ、お前のせいでグヤコールスを塔へ幽閉できなくなったではないか」


「そんな・・・私を抱いて下さったのにどうして・・・」


ガブリエル・スプリンゴラの声が震えている。


今の話の意味を聞いて私は二人が肉体関係にあったことを知る。


まさか王子がこのような秘密を持っていようとは・・・。


待て。


私はその時になって恐怖を覚えた。


もし、パルダビュー王子が私を抱こうと邪な考えを持っていたのなら。


それならこれまでの理不尽な出来事は理解できる。


次々と明かされる真実に私の心が砕けてしまう。


そして、パルダビュー王子が呪詛のように私の名前を呼びながら抱えたようだ。


「私はお前を好いていたのだ。愛していたのだ」


パルダビュー王子は私に口づけをした。


その時、私はパルダビュー王子が私に対して想いを寄せていたと確信した。


・・・そのために私を陥れようとするなんて。


視線の先では私を斬ったガブリエル・スプリンゴラが命乞いをしている。


エミーナも私の姿に涙を流して立ち尽くしていた。


「もうすぐ医師が来る。そうすればお前は救われるんだぞ」


私に甘い微笑みを与えるパルダビュー王子の姿を見るだけで私の心は怒りに満ちていく。


せめて最後の抵抗を。


私は声を上げようとする。


「なんだ、どうしたんだ?何か言いたいのか?」


何を期待しているのだろうか。


私がパルダビュー王子に愛など語るはずもない。


「・・・許さない」


「えっ?」


「・・・お前を許さない」


「な、何を言っているんだ?」


パルダビュー王子の顔が絶望に包まれ始める。


そうだ、苦しめ。


苦しめばいいんだ。


「・・・お前のものに・・・お前のものになんか・・・なるもの・・・か」


そう。


これが言いたかった。


私の意識はその瞬間に急激に思考が停止し意識を失っていく。


消えゆく視線の先ではパルダビュー王子が涙を流しながら何かを叫んでいた。


お前のものになるものか。


私は何度も何度も死にゆくまで怨言を吐き続けた。


こうして・・・私は冥界へ向かった。


そのはずだった。


だが、私が目を覚めるとそこは私の見知った部屋だった。


状況に理解が追いついていない私は無意識に部屋を歩き回った。


そこで私は姿見を見た時、思わず驚愕してしまった。


私の姿は幼い日の姿になっていた。


そして、私はそこで自分の身に何が起きたかを知る。


・・・時が戻ったんだ。


私はあの断罪劇から逃れた安堵と共に、再び起こるかもしれない断罪劇への恐怖でその場に座り込んでしまった。

登場人物


・グヤコールス・ペパリッチ

主人公です。どのような人物になるかはおいおい紹介できればと思います。


・パルダビュー・アリンガローサ

ヴィトール王国の王子です。エミールの婚約者。主人公に邪な想いを抱いている。


エミーナ・・ナイトレイ

主人公の元婚約者です。彼女も捻くれた想いを抱いています。


・ガブリエル・スプリンゴラ

主人公のクラスメイト。パルダビュー王子の警護兵。パルダビュー王子とは肉体関係があります。


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