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後期課程が始まって2週間ほど経過した頃、殿下と一緒に登校した学院でメラニア様にお会いした。そしてサイン済みの契約書を提出した。
「メラニア様、長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。こちら、ご査収いただければありがたいです」
「もちろんですわ、ユーファミア様。あなたを我が家で雇えること、本当に嬉しく思います。こちらは早速父に渡しておきますね」
笑顔で契約書を受け取ったメラニア様は殿下の待つ教室へと軽やかに入室された。入れ替わりで出てこられたカイエン様に、マクレガー家との契約を交わしたことを伝えた。
「わかりました。養父も了承済みのことではありますが、伝えておきましょう。あぁ、殿下には私とメラニア嬢から折を見て報告しますので、あなたは静観しているように」
「承知いたしました。何から何までお世話になりました」
「あぁそれから、他の者にも就職の話はしない方がいいですね。マクレガー家の使用人となれば下級貴族や平民たちからすれば理想の職場です。あなたがメラニア嬢のコネクションでその地位を得たことは明白ですから、そのような采配をしたメラニア嬢を逆恨みする者も出るかもしれません」
「そうですね。では、黙っていることにします」
どうせ自身の先行きを報告しなければならないほど親しい友人がいたわけでもない。一番身近な殿下の耳にさえ最終的に入るなら、あとはどうでもよかった。