24
中間試験は恙なく終了し、私は無事卒業資格を手に入れた。実際に卒業証書がもらえるのは半年先だが、長いようで短かった学生生活がもうすぐ終わる。
試験をパスした知らせを受け、短い休暇に入る直前、私は今一度カイエン様にバルト伯爵との面会の機会をいただけるようお願いした。
「わかりました。ところで何を相談するつもりですか。殿下の側近として、私も知っておかなければなりません」
「卒業後の私の進路のことです。じつは、メラニア様から、ご実家の領地の孤児院の管理人にならないかとお誘いを頂いていまして……」
「そうなのですか。それは良い選択ですね。マクレガー領でしたら治安もいいですし、頼りないあなたでも生活に困ることはないでしょう。孤児院はマクレガー家の運営なのでしょう? 待遇も悪くなさそうです」
「はい。契約期間は3年で、その後は延長もできるし、辞めて実家に戻ることもできるとのことでした」
「わかりました。そういうことでしたら養父に伝えましょう。しかしメラニア嬢には感謝せねばなりませんね。本来ならあなたの身分では、侯爵令嬢であり次期王太子妃ともなる彼女とお近づきになることすら許されなかったはずです。それがあなたの能力のなさのおかげで王家に召し上げてもらい、高位貴族たちと交流することを許されました。その上今後の身の振り方まで面倒を見ていただけるとは。あなたは孤児院で誠心誠意、お勤めすべきですよ。少なくとも契約期間の3年は余計なことを考えず、仕事に邁進すべきです」
「……承知しております。本当に私にはもったいない待遇です」
孤児院に勤めるということは侯爵家に勤めるのと同じことで、魔力なしの私にとっては破格の待遇だ。以前のリブレ伯爵の話では、契約満了後に謝礼金や一代爵位を賜った契約者もいるとのことだったが、一時的なお金や肩書きとしての爵位だけでは生活を維持するのは困難だ。それよりは働き口を斡旋してもらえた方がありがたい。実家の母も、私が職についたと聞けば安心することだろう。