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18歳 1


お久し振りです。皆様、明日はなんと王立学院の入学式で、ゲーム開始だよ~!


ああ、動揺のあまり、口調が崩れてごめんなさいませ。とうとう悪役令嬢になるイザベラ・アームストロングでっす。


色々あったのですが、まずは、隣国の皇帝が駆け込んできてからの顛末をお伝えします。






自称・隣国皇帝だが、ソフィア様の弟とエマの証言、捕虜への聞き取り、宝石の鑑定結果から、本物の皇帝と判定された。ついでに、私の母の形見と父の証言から、私の母、ひいては、私も、隣国王家の血を引いていることが明らかになった。

だから、あんな豪華な首飾りが形見だったのね。そして、隣国王家の血……。それは、母のプライドも高いはずだわ……。


隣国皇帝から助力の依頼を受け、隣国皇帝と共に、アームストロング侯爵家の騎士団達は、隣国の将軍を討ち、終戦を迎えた。エマら侯爵家の人間は、将軍の進軍は隣国皇帝の意図するものではないと隣国国内へ伝え、軍の士気を砕くと共に、将軍の逃げ場を断つ役割を果たした。


戦争中、エリックは、汚職を糾弾する等、国王陛下と共に王都で指揮をとって、王宮でも認められたということだった。

私は後継ぎに父がエリックを連れてきたと思っていたけれど、エリックは王宮の権力争いに心を病んでしまって、アームストロング侯爵家で極秘に療養することにしたというのが真相だった。


エリックが王宮に復帰する際は、アームストロング侯爵家で隣国の様子を探っていたということにしたらしい。王族ともなると、弱みを見せられなくて、建て前があって大変だね……。エリック、お疲れ様……。






終戦の後は、領土では、犠牲になった兵への弔いや遺族年金の準備、傷付いた兵の今後の生活保障、領土の被害確認や前線になった地の復興等々が待っていた。父が王都で終戦条約締結の補佐をすることになったので、エマの父が実務の総括、私が領内の復興の承認者になった。理解すべきことや決裁する書類が多過ぎて、ベッドに入り込むと気絶するように眠り込む日々だった。




そして、終戦により、平時が戻ってきたので、私は、ゲームの舞台である王都にある王立学院に進学することになった。


もう、入学は諦めてもいいんじゃないかな……と思い、父に掛け合ってみたが、父から『王家の影』の役割のために、学院で人脈を築け、と厳命が下った。十七歳で入学することが一般的だが、私は戦時対応のため、昨年、十七歳で入学できなかった。これ以上、遅くなってしまうと人脈を築くのに支障が出てくるということで、今年の入学は必須らしい。


手が回らないのであれば、領土での決裁は父を待っていいと言うけれど、いつ、父が領土に戻ってくるか分からない状況では、早く処理してしまいたい案件が多過ぎた……。






そんなわけで、なんとか領土での事務作業に片を付けて、入学式の前日の夜に駆け込みで、王都にある王立学院の寮にやってきた。


それにしても、戦争が終わり、私は隣国との繋がりもある状況で、きっちり学園生活がスタートするとか、ゲームの強制力が怖過ぎる……。


悪いことはこれまでせずに済んでいると思うけれど、揚げ足を取られそうなことに足を突っ込んできたので、罪をでっち上げるのには困らないと思うのが、また恐ろしい……。




真夜中、寮の自室に一人になった。実は、悪役令嬢に転生したことに気付いた直後に、思い出したことをノートに書き留めていたので、その古いノートをやっと開いた。


悪役令嬢の断罪対策を立てるぞ、と意気込みながらノートを開き、そして、すぐに絶望した。


攻略対象のこの国の王太子って、私を憎んでいる宣言したエリックだよね……。

攻略対象の騎士団長の息子って、子供の頃に平手打ちしてしまった彼だよね……。

更に、私をスパイに仕立て上げようとしているのであろう隣国の皇帝……。


周りに敵しかいない……!






考えてみれば、八歳で記憶を取り戻したというのに、何の対策もできていない……。記憶取り戻したの、意味なくない? これから挽回できるの?!


気が遠くなる思いをしながら、幼い頃の日々に想いを馳せる。




目の前で起こる出来事に対処するのに毎日慌ただしかった……。


いや、とはいっても、エリックやエマと遊んだり、街に繰り出したりしなければ、悪役令嬢の断罪への対策を取る時間はあったかもしれない。




でも、私は言いたい!!


エリックやエマと比べるとよく分かるが、もともと私はせいぜい中の能力のところ、厳しい教育を受けてようやく上の下になっている程度なのだ。


そんな私が、厳しいスパイ教育を受けて、領土中を回って、余暇もなしに、悪役令嬢の断罪対策なんて、そんな勤勉なことができるわけがないでしょおお……。






「どうすればよかったっていうのよおおー!!!」


思わず、机に突っ伏したまま大声を上げてしまい、心配したエマが暗器を持って飛んできた……。いつもごめん……。


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