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95 ミアは気づく

「そういうことだね」


そういうことだ。


「都が俺よりも強いことは分かってたが……ここまでとは思っていなかった……」


ようやく現実逃避から現実に戻ってきたようで、一つ息を吐いてから話し始めた。


「爺さんが言ってたことはこれか。でも俺が勇者パーティーに入るのは約一年後だぞ? 一年しかないのにお前たちみたいになれるのか?」


一年もあるのならレベル的には余裕だろう。流石に私みたいな総合値無理だと思うが……いや、才能を開花させると可能性がないわけではない。たぶん。私だって努力したのだ。軽く越されたらそれこそ私のメンタルズタボロ案件である。


「何歳くらいだっけ? 6歳か7歳かのときにレーインとトウカ、ヴィスタで森に修行でこもったことがあってね。その時は一週間でみんなレベル60くらいまで上げてもらったから一年もあれば余裕だよ!」


「いやいや、ちょっと待て。途中色々と理解できねえ単語があったけど??」


? 結構詳しく説明したつもりだけど。


「まず何歳だって? 6歳? 7歳? そんな小さい時から何スパルタ教育されてんの?!」


「? 何って? だって私、3、4歳くらいから森でこもって闇堕ち殺ってたんだよ? そんなに小さいわけでもないし、一人でも充分戦えるから何ら問題はないよ」


確かに前世から考えると小学生低学年に何させてんだって話だけどいかんせんここは日本ではない。剣と魔法がある異世界なのだ。しかも3人とも族長の子供ときた。当時は知らなかったけど家でもそれなりの教育は受けてたはずだ。


「いやいやいや。てか都はなんでそんな幼い時からそんなことやってんの?」


美凪はどんどん疑問が溢れてくるそうで、なんか面倒くさくなってきたから1から説明することにした。


「ゲルさん。……あ、現魔王何だけどね。ゲルさんは私が他の子供とは違うことを知ってたみたいで、歩けるようになったら即戦力だったの。魔界も魔界で人手不足だったから。それで色々と仕事が回ってきて、闇堕ちの数減らしたりだとか。……当時は闇堕ちの治し方なんて知らなかったから。あとは龍の暴走を止めたりだとか……。あとトウカ達を教えたあとに昔魔王だったグレイアムっていうヒトが闇堕ちしてたから相手してたりだとか。私の総合値の高さはたぶんこれらがあったからだと思う」


あれ? よく考えると私ってとんでもない生き方してない?

確かに総合値はがっばがっば入ってきたしそこは万々歳何だけど、ちゃんとしたヒトの生き方はしてないよね。

ま、それが私の望んだ生き方なんだし別にいいか。

と、一人話して一人で納得している。


「……そりゃそんなに総合値も高くなるわ。なんか俺、自分のやってることが物凄くちっぽけに思えてきた」


私の話を聞いて意気消沈していた美凪が独り言のようにつぶやいている。別に私の生き方を真似しろってわけじゃないよ! こんなの真似してたら体何個あっても足りないからね!?


「だ、大丈夫だよ!! こんなのしてるのたぶん私くらいだから! それに神様からは玲央たちには安全に暮らせる場所に落としてって頼んだのは私なんだし……」


この言葉に美凪はピクリと反応する。


「神様? 頼んだ?」


「私達、一回死んだでしょ? その時に神界に魂を飛ばされてるの。その時にこの国への落とし方を聞かれてね。あ、もしかして勝手に転生させられたことが嫌だった? それはほんとに申し訳無い……」


そこは何も言い返せないと言うと、違うと美凪は首をふっていた。


「俺達を転生させたことに対してはどっちでもいいんだ。それよりも、俺たちを安全な場所に落とすように頼んで、それで都の条件はどうだったんだ?」


さすがは美凪。鋭い。ぐうの音も出ないほどの正論をどんと言われてしまった。それに付け加えて幼馴染舐めるなよとまで言われてしまった。……ふうむ。ここまで言うつもりはなかったんだけど……言わなきゃ怒られるよね……。


「えっとですね……。私達をこっちの世界に呼んだのは……」


と、はじめから神様たちとの話を美凪に話す。途中かすかな相槌だけでじっと耳を澄ませながら最後まで私の話を口を挟まずに聞いていた。とても長く、でも短く感じられた不思議な時間だった。


「……ということです」


「………………なるほどな。確かに俺が勇者と聖女が玲央と桜子だって気づいたときに一番初めに疑問に思ったのが都だったんだ。じゃあ都はどこにいるんだ? って。てっきりそこら辺で平民として楽しく暮らしてるのかと思ったけど、都だけ魔人だし、生き方が明らかに俺たちと違う。…………そういうことだったのか」


「でもこうして会えたわけだし!」


「都は大丈夫でも俺たちは違うだろ? 幼馴染一人を犠牲にした安全な暮らしなんて望んでねえよ。わかったんならちょっとは反省しろよな」


「うっ……はい……」


本当になんて言えばいいのかわからないけれど、美凪がとてつもなく怒っていることだけはわかった。


「よし。俺の覚悟も決まった。下手すると都は何を仕出かすかわからねえからな。俺も時間ギリギリまでお前たちと一緒にいる。いや、いさせてくれ」


私も反省しなければ。ここまで幼馴染に、親友に言わせる気はなかった。私が無意識に行っていたことだとしても、事実、こうやって私を思ってくれる人が悲しむのだ。美凪だけじゃない。もちろんレーインやトウカ、ヴィスタも。


「うん。こちらこそよろしく」


美凪の出された右手をとる。こうして美凪は私達が人間界にいる間、私達と共に過ごすことになった。




トウカ達にめちゃめちゃ文句を言われるのは少し先のお話。

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