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92 スパイはお呼びじゃないのだよ

グレイスさんの隣りにいる薄赤茶の少年に視線を向ける。

私達4人の強い視線を浴びたからか、びくりと体を震わせて背筋を伸ばし、またもやグレイスさんを睨みつけている。


「おい爺さん、なんで俺を部屋に返してくれなかったんだよ!! おかげで今寿命が3年くらい縮んだわ! あんなバケモンみたいに語られている混沌の魔人とその仲間たちに睨みつけられたら普通の人間ならとっくに失神してるぞ!」


まあ確かに……少年の言うことはもっともな話である。が、それを本人たちがいる前で言ってしまうのはやはり持って生まれた馬鹿だからか……。


「すまんのう。こいつは少々特殊でしてな。名前はアルミナ・アナガリス。わしの唯一の孫じゃ。血は繋がっておらんがの。幼い頃アナガリス教会の前に捨てられておってな。本当はこのまま孤児院とかに預けるのが主流なのじゃが面白いやつじゃったし、何よりわしにも跡継ぎが必要。そう考えてアナガリスの養子に、つまりわしの孫になったわけじゃな」


確かに……普通の子供ではないはな。色々と。

ただそう思って常識全部ふっ飛ばして養子にしちゃうグレイスさんもグレイスさんだと思うな。私から見ればどっちもどっちだ。


「それとこやつは魔力が多くての。まあミア殿達に比べれば足元にも及ばんじゃろうが……。歳もちょうどよいから勇者パーティーに入れさせようと思っとるんじゃ」


「勇者パーティー?」


勇者とはかの有名なあの勇者のことだよね。私の前世の知識からいくと。その勇者がいるパーティー……、それ、私達魔族と関わりがあったらやばいんじゃない?


「今代の勇者がアルミナと同じ歳なんじゃ。今年で14じゃったかな? その勇者が魔王討伐のために結成する勇者パーティー。アルミナは魔導師として参加させるよう声がかかっておるのじゃ」


14歳ということは私と同じ歳か。勇者、ねえ。やっぱり魔王討伐のためのパーティーなんだ。


「で、そんな敵になる人をわざわざ紹介する理由は何なのかしら?」


レーインが少し嘲笑うように尋ねる。

アルミナとかいう少年のステータスは先程少しのぞかせてもらったけどかなり低い。まあ昔人間と対峙したときに鑑定した成人男性よりは幾分高いからこっちでは凄いほうなのだろう。でももし勇者パーティーがこんなレベルの人たちの集まりだったらわざわざゲルさんが退治しなくても何なら私のメイドズ達で事足りる。レーインからすれば笑わせるなと言いたいのだろう。


「わしとしては勇者パーティーなんざどちらでもいいんじゃがな。これも経験のひとつよの。勇者パーティーの中に魔族側の仲間がいると思うと面白くないかの?」


すっとグレイスさんが目を細める。

なるほどな。グレイスさん曰く、アルミナをスパイとして使えと。ありがたい話なのだろうけど……こちらとしては別に密偵がいなくても私の持ってるスキルで盗聴、盗撮しようと思えばいくらでもできるし、無闇矢鱈と人を巻き込む方が危険性が上がる。あまりメリットがないのだよねー。

その点についてはどう考えているのか。


「ようはこやつをミア殿の旅の仲間に入れてくれんかの? と言う話じゃ」


あまりぐだぐだ言ってもきりがないと思ったのか、ズバッとグレイスさんの本音が出てきてしまった。

まさかそう来るとは……。仲間に入れてください、、ねえ……。

言われた本人(少年)は一番ビックリしてるし、こっちもこっちでレーインとかトウカとかヴィスタとか、、特にレーインがめっちゃ嫌そうな顔して絶対断れよ的なふうにこちらに視線送ってくるんだけど。

レーイン達からだと、自分よりも言っちゃ悪いけど物凄くレベルの低い人が入ってくるのが嫌なのか。人間だから嫌なのか。はたまた4人の旅を邪魔されたくないから嫌なのか。

たぶん一番最後のやつかなあ。


こっちの世界に来てから分かったことの一つに魔族は仲間意識がとても高いところがあるから。今はそれほどでもないけれど、昔はよそ者が受け入れられるのに、例で言うと自分達外の種族の受け入れるのに時間がかかったらしい。

それでも殺したり迫害したりはしないけどね。そう考えたら私達別々の種族が4人、こうして集まっているのは凄いことなのかも。


「絶対に嫌よ。なぜ私達がこんなひ弱な小僧の面倒なんて見なくちゃいけないのかしら? 私達も忙しいのよ。あなた、グレイス、、といったかしら? 少しさっきから調子に乗り過ぎではないかしら」


レーインが冷ややかな目で正面にいる二人を見つめている。

バッサリいくなあ……。

調子に乗ってる、乗ってない以前に私的にはグレイスさん、まあまあな強者(つわもの)だと思うけど。

そしてそれは案の定か、レーインのブリザードが吹いてそうな言葉にもびくともせずに返す。


「それはすまんかったのう。しかしこやつ、アルミナの周りには同じ年頃の子供がいないんじゃ。自分の実力も知ってもらいたいしの。少々天狗になっているところが最近目立つからのう」


お、グレイスさんもいうねえ。

は? と少年はグレイスさんを見ている。まさかこんなことを考えていたとは思っていなかったのだろう。

でも一番はあれだね。私達がどうこう言おうが結局は本人次第ってやつだ。現にトウカとヴィスタは勝手についてきたし。

それよりも私はこの少年と話がしてみたい。


「クラスのみんなが召喚されたようなので、何度も一緒に転生している人と連れ戻しに行きます」

↪https://ncode.syosetu.com/n4379ht/


前に書いてた連載(前編・後編)を短編にしたやつです!

色々いじってたら消えてしまったので悔しくなって書き直しました。よければ読んでみてください(_ _)

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