78 やはり繫がってる
鈍い音を立てながらもゆっくりと扉は開く。
……やっぱり開いちゃった……。てことはウィスターとチェスターはその宝剣とやらで間違いなさそう。はあ……、改めて神様たちはなんちゅうもんを私に渡してくれたんだ。
絶対文句言ってやろ。前にも言った気はするが……。いやね、貸してくれるのは全然有り難いのよ。何ならウィスター達めちゃくちゃ使いやすいから。でも一番の問題は、こんなやばいもんを自分で言うのも何だけどヒト並外れた私になんの躊躇いもなく持たせるっていうこと。
私がちょっとでも気が変わったら軽く世界壊せるよ。
あー、その前に神様たちが止めに来るかな。でもあのヒト達の事だからとりあえず面白そうだとか言って私が半分世界壊すまで黙って見てそう。何ならケラケラ笑いながらやっちゃってるーとか言ってそう。
……こんな想像できるのもなんかヤダ……。
はあ、と周りから聞いたら一つも意味のわからないため息をこぼす。そしてふと後ろを振り返ったとき、目が零れ落ちそうなほど開いているケリスナさんが視界に入った。
「!?!?…………っ!?」
まあ……そうなるよね。
こうしている間にも少しずつ扉は開いていくわけで。ついに鈍い音が止まった。どうやら全て開いたらしい。
私がいる場所からは真正面しか見えないから全体はわからないけれど、明らかに今まで見てきたものをはるかに超える莫大な本の数。上は見えないくらい高く、この地下にどうやって光が差し込んでいるのかはわからないが全体的に眩しいほど明るい。
思わず目がチカチカして瞬きを2回ほどしたところで、ケリスナさんの意識がこちらに戻ってきた。
「こ、これは…………!! これが文献にあった噂の……!!」
そうつぶやきながら一歩ずつ前へ引っ張られているかのように少しずつ進んでいくが、目の前まで来たところでケリスナさんの足がピタリと止まった。
?? 一体どうしたのだろうか。
「ミア様、私は今、今までにないくらい、言葉では表せないほど感激しております。そして是非ともこの素晴らしい場所に足を踏み入れたい。けれどもこの扉を開けたのはミア様です。この神聖なる場所に一番に足を踏み入れるべきヒトはあなたでございます」
「えっ!! いやいや、お気になさらず! 是非ケリスナさんが一番に入ってください。私達はあとからついていきますので。あ、あとトウカ達って入れますか?」
本当に私はなんでもいいのだ。一番この場所に熱が入っているのは間違いなくケリスナさんだろうし、正直言って私自身やったのはウィスター達を台座にぶっ刺しただけ。何なら魔石集める必要ほんとに無かったしね。これはちょっと悲しきかな。
それよりも問題なのはトウカ、レーイン、ヴィスタが入れるかどうかだ。あんなに手伝って貰いながら今更他の方は駄目ですとか言われて追い出されたら申し訳無さが溢れ出ちゃう。
しかしその心配は杞憂に終わった。
「トウカ様方はミア様の許可があればご自由にお入りすることができますよ。ミア様が大丈夫と判断なされたのであれば大丈夫です」
3人は大丈夫だろう。ここでわかったことをそう簡単には言いふらさないだろうし、なんて言ったって3人にはここに興味なんて一切ない。
レーインに限ってはここに入っても最終お昼寝してそう。
そんなことをぼんやりと考えていると、隣から急かすようにケリスナさんが喋りだした。
「ミア様、早く入ってくださいませ」
「え、でも……。本当に私でいいの?」
「はい!!!」
そこまで言われると、、ねえ。ここで断ったってどうせ結果は変わらないだろうし、これはここで素直にうなずいてケリスナさんを早く入らせるのが一番最適な方法だとみた。
数百年、下手すれば数千年閉ざされてきた部屋。
一歩進み、部屋と部屋の間をまたぐ。
その瞬間隣から信じられないほどのスピードでケリスナさんが消えていった。
!?!?
どこ行った!? え、そんな急にいなくなる? この変な部屋に引きずり込まれたとかかな。そうだとしたら早く助けに行かないと!! と思っていたのも束の間、顔をあげるとちゃっかりと上の方でもう数冊本を手にしていた。
顔も嬉しさが抑えきれてないように顔が珍しくニマニマしている。
楽しそうで何よりよ。
私も改めて中心に立ってみる。
どうやらこの部屋は円状になっているらしい。そしてどこを見ても本、本、本。ケリスナさんはもう本を決め終わったのか、空中にある椅子にすわり読書をし始めた。
することないから私も何か読もうかな。
トウカ達も何か読んでみてるみたいだし、一冊くらい私にも読めるものがあるだろう。
手始めに目の前の莫大な数の本に近づき、その中から一冊とる。その時、私の目にはあるものが映った。
「陣?」
なにかの陣だ。うわー……。みたことあるー……。
でもこれ、無視してたら後々やばいのよねー。……どうしたものか……。
…………やっぱり行くしかないか。
数分考えても答えは出てこない。仕方ないと腹をくくる。そしてそのまま見たことがある陣の上に立った。
次の瞬間、まばゆい光が私の全身を包み込んだ。




