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73 エルフの村5

『これを読んでいる君は何年後の地球人だろうか。もしかするとこんな殴り書きの紙切れ達はとっくに捨てられているかもしれない。しかし君がこれを読んでいるということは少しでもこの紙は役に立っているのだろう。


少し僕の話をさせてほしい。僕は成田充なりたみつる。アメリカの大きな企業で働いていた。君も知っているのかもしれないね。そこで僕は開発者として仕事をしていたんだけど……気がついたらいつの間にかこの世界にいたんだ。はじめは異世界転生だとか転移シリーズか!? みたいにすごくドキドキしたけれど、それもつかの間、やはり故郷が恋しくなってね。結果帰ることは出来なかったけれど。僕が落ちてきたのがエルフ族で良かったとつくづく思うよ。こんな身元も何もわからない男を親切に世話してくれたんだ。君もエルフはいいやつばかりだと思うだろう? 何年先であってもそうあってほしい。


こんな僕にもなにかできないか、少しでも役に立てるようなことはないのかと考えて、僕は地球にあった文明の利器を少し教えようかなと思ったんだ。ただこの世界の言葉を習得するには軽く数年かかってね。日本語よりも英語のほうがこちらのイントネーションにあっていると判断したため、この手帳には英語で書いた。最後の車関連のところは時間があまりにもなかったから思わず日本語になってしまったが。

少し自分の話しが長くなりすぎたかな。さっきも言ったみたいに僕には時間がなかった。変な病気にかかってしまってもうそう長くは生きられない、らしい。せめて手帳を書き終えるくらいまでは生きていたいな。


君は今楽しいかい? 最後に僕なりの、僕の勝手な提案なんだけど、どうしても前の世界に帰りたいってなったら教会を尋ねるといい。確かエルフの村にもあったと思う。

教会に毎日祈るとなにかのステータスが上がっていた。時期に神様との会話も夢じゃないかもしれないね。

僕が言えることはそれくらいかな。

じゃあ、君もこの懐かしいはずの世界を楽しんでくれ。


From Narita.』


ぱたんとぎっしり書かれた紙切れを手帳の中に戻す。

成田さんは神様と接触していなかったんだ。じゃあこの世界に来てしまったのは事故? 私達はきちんと……きちんとっていう言い方はおかしいかもしれないけれど死んでからこちらに来た。

言葉が通じない、翻訳機も何もないところからここまで世界に馴染めているのは相当すごいことだと思う。日本でも、アメリカでも私は残念ながら知らなかったけど有名な人なのかも。


「……何が、書いていましたか?」


読み終わってから急にピクリとも動かなくなった私を心配してヴィスタ父が声をかけてきた。


「はい……。ちょっと懐かしい気分になっちゃって。この手帳を残した人のことはみんな知ってるのですか?」


「ええ、ミツル様はエルフの村では英雄と言っても過言ではありません。なにせ何百年も昔のことですから本当かどうかはわかりませんが、おそらく私達とは違う世界から来たのでしょう。ミツル様のおかげで便利な私達の暮らしがあります。そんなミツル様を少しでも後世に伝えようとして広場の中心にはミツル様の銅像もあるほどですよ」


ヴィスタ父の言葉を聞いてなんだか少し安心した。

成田さんの言うとおりエルフはいい人たちだ。少なくともこんな人がいるのは間違いない。同郷の人がここまで親しまれていることにこちらまで嬉しくなってくる。


「そうですか」


「ミア様も見に行かれますか?」


はいと答えようとしたが、少し考える。


「……また、今度にします。今はなんの手持ちもありませんし、このあとの予定がない方がゆっくり見ることができますので」


今度来るときは神様に頼んで餅太郎のお煎餅持ってくることにしよう。前にいったときに神様食べてたから入手経路はあるはず。ついでに私の分も買ってきてもらお。


そんなのとを考えながら解読の作業を再開させる。再開と言ってももうほとんど残っていない。私もよくわからない単語とかあったけどヴィスタ父はわかるのかな。ふんふんと頷いているからわかっているのか。

ようやく最後の一文に取り掛かった。最後はもうほとんどまとめみたいなものですこれを作るにあたっての注意点がいくつか書かれていた。あ、教習所作れって書いてある。練習は大事よね。



「お、、わったー!!」


ふいーっと大きく伸びをする。

そのままソファーに倒れ込み、ヴィスタ父もそうするかと思ったが、目をキラキラさせて解読し終わった手帳をじっと眺めている。


「お疲れさまでしたー。少し休憩されては?」


「そうしたいのは山々なのですがそれよりもこちらを速く作って見たくて……」


ああ、なるほどね。それで終わったときからうずうずしてたんだ。まあヴィスタ父らしいといえばらしいか。


「本当に何ももてなすことができなくて申し訳ないのですがこれを作ってきてもいいでしょうか……?」


「ふふ、こちらは大丈夫です。トウカ達が帰ってきたら勝手にお暇させていただきますね。何かヴィスタに言っておかなければいけないことはありますか?」


「いえ、特にはないのですが……ミアさんはどうしてエルフの村を訪れたのですか? ヴィスタが自分から帰りたいと言い出すとはあまり考えられなかったので」


今更だな! まあ確かにヴィスタはいわなさそう。

ヴィスタ父になら言ってもいいかと思い、ここに来た訳を話した。

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