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65 魔法は便利よ

ジンさんの挨拶の後、私はどこかに案内されていた。

私はもう戦える戦闘服なのでいつでもかかってこいやなのだが、ジンさんはそうもいかないらしくて。今の服で戦えるのは戦えるんだけど無駄に裾が邪魔らしく、軽く準備をしてくるそうだ。何故かトウカも一緒についていってしまった。

ヴィスタとレーインは待機中。何故かって? いやー、私に聞かれても。私達の話の中で何を感じ取ったのか、さあ行こうというときにレーインが「私達は観光でもしてくるわね」と言いながら去っていってしまったのだ。それも楽しそうじゃなくてこう……言わされてる的な? 疑問が残るばかりです。


行ってしまったヒトは戻ってこない。というわけで私も軽くウォーミングアップでもしておこうか。

案内されていた場所はおそらく格闘技場だろう。コロッセウムのように円形状になっているものの、観客の入るところがない。しいて言えば一箇所だけ何人か座れるところがあるが、どう見ても一般的ではない。それらのためか己の練習のためだけの空間にように見える。

こういう練習場もいいね。ひたすら自分と向き合えるっていうのが。

広さ的に言えば私が暴れまわっても問題ないくらいはあるかな。壁の端と端が思ってたよりも遠かった。だから壁を使って連続攻撃っていうのは難しそう。ただ壁を走り回っても人工物のものは私の衝撃に耐えられないから大体は壊れてしまうんだけど……。決して私の体重が重すぎるとかそういう問題ではない。皆わかっているはずだ。


試合場所の説明はこれくらいかな。あとはほんとに練習で使われる竹人形みたいなものも何にもないし。

そしてなんと言っても一番の問題は渡された木刀である。この木刀、多分だけど触った感じ普通の木刀ではない。ただ何が違うかって問われてばはっきりとしたことはわからないし、木刀って言いながら木じゃないじゃん!? みたいなこともないのだけれど。

強度を強くするための魔法でも貼ってあるのか。たとえ一回の手合わせだったとしてもおそらくその威力は凄まじい。すぐに壊れないようにわざわざ魔法をかけてくれてるのか。……壊さないようにしないと……。






「準備は出来たか?」


ラジオ体操第二の冒頭部分を踊っている最中に準備のできたジンさんがやってきた。


おや??


今の格好じゃ動きにくいと言って割には先程とあまり変わっていないような気もしなくはないが……。腕の裾の部分を紐で括りあげているところくらいか? それで動けるのなら私は全然構わないが。



向こうが歩み寄ってくるのに合わせ、私も格闘技場の中心へ行く。あら。よく見るとあそこのVIP席に座っているのはトウカではないか。隣に座っている美女は誰だろう。……わからない。



「そういえば、ミアさんは普段大剣を使っているのだったな。今回はそのような代物を準備する時間がなかったため許してほしい」


そう言いながら顔では全くそういう表情をしていなかった。偉い人は偉い人でポーカーフェイスがとてつもなく得意だからほんとに勘弁してほしい。何考えているのかわからない。


「いえ、大丈夫です。私も普段はヒトが多いとこの子達を使うことができないので」


ジンさんはそうかと簡素に答え、一礼をする。私も合わせて礼をした。

そして目と目があった瞬間、戦いは始まった。



ガキンと木刀らしからぬ音が響き、ジンさんの重い一撃を受け止める。

審判はいないらしく、先に降参した方の負けという認識でいいのかな。



お互いに一切のすきもみせない。少しでも間があればそこに打ち込んでいくし、逆にそれを逆手に取って自分側が有利になるようにも進めている。

総合値的にはおそらく私のほうが高いのだけれど……なかなか決着がつかないのはジンさんの考える力が半端ないからだろう。

なんて先まで読まれているかわからない。ただ私の攻撃をすべて跳ね返しているところを見ると、私は予想通りの動きをしているのだろう。


ここはジンさんに勝っておかないと魔石が手に入らないから不味いんだけど……。

ジンさんもジンさんで私の総合値、特にSPが高い事は知っているだろうから、長期戦になると自分のほうが不利になる事を分かってて早く終わらせようとしている。


これ、外野から見たらどちらも汗一つかかない無表情で木刀を交えてるってどう見えてるんだろう。


ふと違うことを考えているとピッと私の頬に小さな傷がいった。

いかんいかん。油断してたらほんとにやられてしまう。


こちらとて長期戦になるのは避けたいので、次も一撃で終わらせるようにする。一撃を重くするのはあまり得意ではない。それこそトウカのほうが上手く行ったりするだろう。だから私はその不得意なところを魔法でカバーする。


身体強化みたいなそんな便利な魔法は私には使えないけれど、風魔法と土魔法をかけ合わせれば同じような事ができるはず。


頭の中でイメージし、それを実行させる。

風魔法で少し体を浮かせてジンさんの目線よりも高くなるように。そして空中では足場がないために力を入れづらいが、土魔法で即席の足場を作りぐっと力を入れる。


ここまで約数秒の出来事。これは予想外の動きだったのかジンさんの動きが少し鈍くなったところで渾身の一撃を放つ。



ガンッと鈍い音を立ててジンさんの木刀は遠くの方へ投げ出され、私の木刀はというと……綺麗に真っ二つに折れてしまった。

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