60 《これまで》
久しぶりのレオン視点です!
あれから約十年の月日が流れた。今の僕たちは前世で死んでしまった歳と同じくらいだろうか。
僕は今でも勇者という肩書が消えることなく日々を送っている。今は冒険者とまじり村や都市に出た魔族の討伐に参加したり、勇者として他国の王などと会ったりしている。おかげで僕は結構な有名人になってしまった。街を歩くたびに"勇者様だ!"と声をかけられている。
ああそれと、この世界には学園というものが存在していて、僕も去年までは通っていた。前世で言うところの小学校・中学校だろう。
6歳になる頃に入学し、初等部・中等部・高等部として3年間ずつ、計9年間学園で学ぶ。学園は義務教育で、貴族の生まれならば位関係なく必ず入学しなければいけない。それが勇者や聖女であっても例外ではない。
学ぶ内容は、、前世の教育水準とあまり変わらないか。わかりやすく例えると高校生までの9年間の内容を6年間につめて学ぶため、少しハードといえばハードである。実際についていけくなる子息令嬢も何人かはいた。
学園卒業が一種の貴族デビューとしての条件でもあるから、ついていけなければ終わりだと例える人も少なくない。僕達は前世の記憶もあるから割と難なく卒業することができた。卒業後は皆領地の仕事を手伝ったり、結婚なんかをするために、将来に向けた学科に進んだりしていたのだが……僕達はほぼ決まっているも同然で何か口をはさむひまもなくいつの間にか卒業していた。僕はいいんだけどサクラが何か言いたそうだったな。
サクラ。そう、桜子は相変わらずだ。学園へ入学してからはほぼ僕としか話さずに、いつもまにか高嶺の花と化している。実際国王の娘、第一王女だから間違いではないけど……。二人で話しているときのギャップがすごくて何とも言えない。
確か前世でも美凪がそんなこと言ってたっけ。サクラは人見知りしないタイプだと思うんだけど……。他国の来賓客なんかとは普通に談笑しているし。ま、サクラなりに思うことでもあるのだろ。
そして一番の問題が僕自身についてだ。僕はまだ勇者らしいことは何もできていなくて歯がゆい思いをしていた。サクラは聖女として魔族の被害にあった街に浄化を行いにいったり、聖女として、一国の王女として民の声を聞き、前世の知識なんかを活かして施設を作ったりなんかもしている。設計は大概僕だけどこうして行動を起こすことができる事はとても素晴らしいことだと思う。設計しているだけの僕もよくお礼を言われる。
ただこれが勇者としての本当の仕事かと言われればそうではない。これも勿論大事だ。けれど僕だけしかできない事をやらなければいけない。
一番新しい魔族の動きとしては、9年前くらいにあったあの事件か。
逆に言うと、あの事件が以来一度も魔族は動いていない。いつもと同じように時々町や村に現れたりはするけれど、軍を率いての大きな動きは見られない。
あの事件は人間軍と天使軍が連合で魔族軍を止めにいったにも関わらず、殆どが全滅、残った数人も毎日悪夢にうなされるほどの事件だった。
僕はあのときまだ幼いからという理由で戦場へ行かせてくれなかったが、勇者として、何かできることがあったのではないかと思うとやはり悔やまれる。
あと、この事件の少し後に僕に剣の師がついた。サクラシアが桜子だとわかってからは城へ登城する回数が必然的に増え、そのためについでといってはなんだが剣を教えてもらうことになった。が、なかなか師が決まらずに引き延ばしになっているところに決まったのが今の師、バリス・エレノール先生だ。
なんとバリス先生はあの事件の数少ない生き残りであり、同時に人間で唯一まともに生活が送れている人だった。その精神の強さと、生き残ってこられた強さが称賛され僕の専属師匠になったわけだ。が、バリス先生もあの事件で大切な仲間を沢山失ったようで、心には大きな傷があった。そういうのもあって、何かと勇者である僕をあまり良く思っていなかったのだろう。はじめは相手にすらならなくて、酷いこともまあまあ言われたけれど、今は対等にまで戦えるくらいにはなっている。3年前くらいからか、やっと心を開き始め、すべてを教えてくれた先生が初めてした話は印象的で、よく覚えていた。
少し短いけれどきりがいいので一旦きります。




