56 これぞまさに以心伝心
おはようございます!
昨日、連載していた作品が完結しましたのでもう少しこっちの作品も頻度をあげて投稿できるかなと。
ご興味がある方は、どうぞ私のホームページから完結済みの作品をご覧ください。
これからもどうぞよろしくお願いします(_ _)
「ねえ……これって参戦したほうがいいのかなあ……」
先日、イリアスさんから謎の宝石を渡され蜘蛛の巣に行ったらいいと助言を頂いた。蜘蛛といえばサリーナだなあとか思いながらゆっくり旅を楽しんでいたのですけれども。
いざ蜘蛛の巣についてみると何やら慌ただしい様子。慌ただしいというよりも……争い?
ドーム状になっていて、おそらくすべて糸でできているのだろう。外からだと中の様子はわからないため外見でしか判断できないが……。
日が反射して糸が一本一本キラキラと輝き、独特の雰囲気を醸し出している。普段は目を奪われるほどにきれいなのだろうが、今は悲惨な姿と化していた。
あれはゴブリン、、かな。闇堕ちしてる。
何百匹といるそれらは、普通は上位種族である蜘蛛が負けるはずないのだが、数と闇堕ちという非常にまずい状況が揃っているため苦戦させていた。
一応見てみぬふりをして通り過ぎるわけもいかないし、蜘蛛の巣の中にある図書館とやらに興味があるため、私達4人は参戦することにした。
「トウカは向かって右の方を片付けて。ヴィスタとレーインでもう戦えそうにないヒト達を安全な場所に避難させて。私はここから左を片付けるから」
数はおよそ数千匹程度。先程闇堕ちしているゴブリンの一体を治してみたところ少し効き目がありそうだったので、とりあえず全員気絶させる。これ以上動かれたたこちらとしてもやりづらいし。
殺すな、と三人に伝え戦場の中へ足を踏み入れた。
ひとまず全員を縄で縛っておく。闇堕ちを治すには少し時間がかかってしまうため、こうしておくのが最適だと思ったからだ。いやあ、多かった!! 強くはないんだけどやっぱり数が多いっていうのが一番時間かかる。でも最近は一緒にいる時間がより増えてきたためか、4人でのチームワーク力が高くなってる。
こう、さっきみたいにちょっと言葉で意識統一したら、あとはお互いがお互いの行動を見て無駄のない動き。一言で言うと以心伝心かな。
さっきもレーインとヴィスタのおかげで蜘蛛のヒト達を気にすることなく動けた。蜘蛛のヒト達はね……、体の造りはよくわからんのだけど、見た感じ死にかけると少しずつ蜘蛛の姿に近づいている気がする。
重症な人ほど下半身が蜘蛛の脚になってたりしてたから。
流石にこんなに沢山のヒトの前では私の身長くらいある剣は振り回せないなーと思って素手でやってたんだけど……素手だとやっぱり時間が結構かかっちゃうのよね。トウカも一緒に戦ってくれたからそこまでだけど。今思えばどうして私、魔法使わなかったんだろう。馬鹿なのか?
まあ、そんなこんなで今回のチームワークの良さにによによしていると、聞き慣れた声が向こうの方から少しずつ大きくなってきた。
「お嬢様〜〜!! 今回もお嬢様が助けてくださったんですか!? 感謝してもしきれません……。もう本当にあと少しで巣が全滅してしまうところだったので、逆に来てくださっていなかったら想像するのも恐ろしいですけど!!」
……それはまあまあ……いや、結構やばかったんじゃないか? イリアスさん、グッジョブ!!
よく見るとサリーナも下半身蜘蛛化していて、相当体力を削られていたことがうかがえる。それほどまでに危なかったのだろう。
ところで……どうして今サリーナがここにいるのだろうか。私が出発するときにはきちんと魔王城で出来るメイドを装いながら仕事してたのに。
「で、サリーナ。どうして蜘蛛の巣にいるの? 魔王城でいたんじゃなかったっけ」
「それはこちらのセリフですよ。何故お嬢様方が蜘蛛の巣にいらっしゃるのかまだ私はわかっていませんからね。ま、それは後でお伺いしましょう。私はですね……ちょっとした里帰りです」
いやね? それは100%間違ってないと思うのだけどさ。だってサリーナの実家たぶんこの蜘蛛の巣ドームの中にあると思うもん。私がいないときを利用しての実家帰りかな。そういうことじゃなくてね。
「私の母がまあ……色々ありまして、戻ってゆっくり羽でも伸ばそうと思ってたら襲撃が来てしまい。かれこれ3日は戦い続けてましたね」
「それは……お疲れ様」
なんでも倒しても倒しても増えてくるんだって。現に今もちょっとずつだけど現れてる。どっかから来てるんだよ。ただ数は時間が立つほどに減ってきてるからもう少しでいなくなるだろう。あ、トウカが対応してくれてます。
てかせっかく闇堕ちの数減らしてきてるのにまた増えだしてる。やはり根本的なところからの改善しかない、か。
もんもんと悩んでいると、サリーナの後ろから見知らぬお姉さんが顔を覗かせた。
栗色のふわふわとした髪をきっちりとサイドで三編みにして、丸い眼鏡をかけている。偏見だけど司書の先生を代表したヒトみたい。
しかし普通のヒトではない。だってサリーナがこんなに近くに立たれていても全く後ろのヒトに気が付かないんだもん。サリーナだって結構な手練だ。気配を消すのが物凄く上手いっていうのもあるかもしれないけど、おそらくこのヒトは、、
「こんにちわ、ミアさん。私はケリスナです」
蜘蛛の巣の巣長だった。




