44 〈混沌の魔人〉バリス視点
流血シーンあります。お気をつけて。
目の前に広がるのは狂気に満ちた少女が自分と同じ位の大きさの大剣を振り回し、私の仲間だった者たちをいとも簡単に切り刻んでいる景色。
悪夢だろうか。
そう思った。
◇◇◇
〜数日前〜
私達、騎士は皆王宮の中にある訓練場に集められていた。だが、騎士にしては数が多すぎる。ざっと3万くらいはいるだろう。
民間の兵や、他の国の騎士もいるのだろうか。
私はバリス・エレノール。
ガリレイド国の騎士団に入団している。
つい先日成人したばかりで、この騎士団に入団できているのは奇跡だとも言えるだろう。
なんていったって世界でも随一を誇るガリレイド国の騎士団。私みたいな若造はこの集められた数を見ても私くらいの者は数人しかいない。それほどまでに騎士団に入団というのは難しいのだ。
騎士は国民の憧れ。
だがそんな騎士たちも今はこの状態に動揺を隠せていなかった。
「なあ、バリス。俺たちいきなり集められてなんだと思う?」
尋ねてきたのは唯一の同年代で幼い頃からの友であるロワソン。彼と一緒に騎士を目指そうと日々二人で鍛錬をし続けてきた。
「さあ、わからない……。けれど何か大変なことだっていうのは……」
!?!?
私が言い終わる前に国王が出てきた。
珍しい……!! ただ、国王が出てきたといのはそれほどまでに告げられる内容が重いものだということ。
騎士団長ですら知らなかったことだ。
一体なんだろう、と皆動きを静止させ緊張だけが伝わってくる。
私達もじっと耳を傾けた。
「……先ずはこれほどまでの人数が集まってくれたことに感謝を。そして、、今から言う内容を知った上で、もう一度考えてほしい」
国王が言い終わると、すっと国王は後ろに下がり、代わりに違う男が出てきた。
あれは……天使?
背に大きな白い翼をもち、輝きを放っているようにすら感じる。
天使は……始めてみた。
「我はガルヴィン、天使である。こうして皆に集まってもらったのは……魔族を、、討つためだ」
その瞬間に空から数え切れないほどの天使が舞い降りてきた。
……!!!!
魔族、あの瘴気をまとわりつかせた私達人間の敵……!!
「我々は魔族に、、多くのものを奪われた。土地、家、そして、、家族。そしてその数は年々増加している。今食い止めねばまた大きな被害が出る。我ら天使と、ともに戦ってはくれないだろうか」
おおおおおぉぉぉぉおおおお!!!!
大地が揺れるほどに歓声が沸き起こった。私も、ロワソンもそれにつられて今までに出したことのないくらい大きな声を出す。
魔族の消滅。
私達人間と天使の永遠の課題だった。
魔族には多くの命を奪われている。家族を失い憎まない人はいないだろう。
それが今、果たされる!!
まだこのとき私達はあんなことになるなんて思ってもいなかった。
◇◇◇
出発したのはあれから一週間後の朝だった。
その日は当たり前かもしれないが、皆どこか落ちつなかない感じで出発の準備をしていた。
「そろそろ時間だ。いくぞ」
騎士団長の声で一斉に動き始める。
私達は第2軍、天使族が最も多い軍で、逆に言えば私達人間が少ない。運良くロワソンも一緒だから安心できる。
いよいよだ……。
馬にまたがり、列を作り走り始める。
今通っている道は"狭間"というらしく、人間界と魔界をつなぐ数本しかない道のひとつらしい。
「こんな道初めて通るな。どうなってんだここ?」
ロワソンが興味津々にはなしかけてくる。
確かにどうなっているのかわからない。変な空間だ。
「そうだな……。私にもわからん」
「はは、お互い様だな!! まあこんなこと気にしても俺たちには関係ないんだ。それよりも、、この戦いが終わったら一回村に帰ろうぜ。騎士団に入団してからは全く帰ってなかったからな」
「ああ、そうだ……」
言い終わる前だった。
突如馬が止まり、前方では何やら騒がしくなっていることに気づいた。
何かあったのだろうか。
その答えはすぐに分かった。
一本道のはずが急に開けた場所に出たのだ。
殺風景で何もない。強いて言えば目の前に少し高い丘があるくらいだろうか。
そしてその丘の上には一人の少女がいた。腰まである艷やかな黒髪を自由に遊ばせて、まるで家から出ていないのか、ありえないほど肌が白かった。
何故こんな場所にいるのか。この何もない空間に私達騎士、多くの天使、そして可憐な少女。
この組み合わせはどう捉えても異質だった。
皆、私と同じことを考えていたらしい。
が、少女への印象は一瞬にして変わった。
突然崖から降りてきたかと思うといきなり少女と同じ位の背丈の大剣をどこからか二本取り出してきた。
そしてそれをいともたやすく振り回す。
はっきり言って異常だった。
皆ついていけないのだろう。目の前の光景が受け止められずに、誰も動けなかった。
しかし、少女はそんなことはお構いなしにこれ幸いとどんどん私の仲間だった人達を切り刻んでゆく。
数メートル先まできたというところで、はっと我に返った。
このままではやられる!!
急いで戦闘の準備に入る。が、遅かった。
剣を構えた瞬間、私の目の前には少女がいた。
斬られる!!!!
このとき目をつぶらなければ何か変わっていたのかもしれない。
痛みも何もなく、あれ? と思い目を開けると、
親友の胴と首が、別れていた。
何が、起こった?
何故ロワソンは首が体と離れているんだ?
何故こんなに血を流しているんだ?
何故何故何故何故何故????
そこで、私の意識はプツンと切れた。
これから少し私用で忙しくなります。
毎日投稿が出来なくなるかも……。
すみませんm(__)m




