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38 〈私の全てに〉レーイン視点

何も、できなかった。


私達が去っていき、後ろを振り返ると、待っていましたというようにウィスター達を振り回すミアの姿がある。


邪魔だったんだ、と、瞬時に気がついた。




◇◇◇



私は吸血鬼族族長を母に持つ、レーインとして生まれた。

小さい頃は私が誰よりも強くて美しいって信じて疑わなかったわ。


お母様に負けるのは私がまだ幼いから。この年齢で族長と戦えるなんて流石はレーイン様だって周りの人も、お母様も言っていた。今思い返せばただのお世辞だったなんて思いもせずに、私はそれを鵜呑みにしていた。




でもある日、お母様は私を連れ出して知らないお城に連れて行った。

また男の人を魅了しに行くんだって、それを私にも見せてくれるんだって、喜んでついていったわ。


私達は吸血鬼。

ヒトの血を吸ってそれを自分の力にする。


相手が強ければ強いほど自分も強くなれるから、お母様は好んで顔のいい人を選んでいた。

美しい人は総合値が高い人が多いから。





お母様が挨拶をしていたヒトはとても美しかった。でも何処か自分の中で警戒の音がなってた。


"あまり近づくな"って


こんなんこと生まれて初めてだったわ。

お母様もいつもみたいに部屋に誘わないし、何かが違うって。

私はだんだんイライラし始めた。だってお母様のここに来た意図がわからないんだもん。


そして極めつけには美しいヒト、ゲルディアスとかいったかしら。そのヒトの後ろから私と同じくらいの女の子が馴れ馴れしくお母様と話してたのよ!!


私よりも弱い分際で!! 


なのにお母様はこの子から戦術を教えて貰えって言うし、嫌だと言ったら部屋の温度が下がった。

お母様が怒る前はいつも温度が下がるから、嫌嫌承諾したわ。



◇◇◇



いざ始めるとなるとどこから現れたのか急にヒトが増えた。

それに一人は見たことがある顔。


トウカ。数年前のパーティーで唯一私を馬鹿にしてきたやつ。

ほんっっと腹が立つわぁ。悔しいくらいに顔もいいし、挙句の果てにはミアと友達だと言うじゃない。

あら? 何で私ミアがトウカと友達って聞いたらモヤモヤするのかしら?





それから私達の実力を知るとか何とかで3人でミアと対戦することになった。

こうなってしまった以上嫌でもこの二人と息を合わせなきゃいけない。

3人でかかって負けるとかありえないわ!! と思ってたのに、恐ろしいほどミアは強かった。

私の魔眼も効かないし!!



しかもその後ヴィスタが言った言葉。


あの耀黒山の騒動を収めた謎の人物。あのヒトがミアですって!?


耀黒山の騒動は魔界中に知れ渡って、初めて聞いたときは龍の族長は何してるのよくらいにしか思ってなかった。でもその騒動をおさめた者がいるって、謎に包まれていて性別や種族さえもはっきりしていないのに何故か必要以上に興奮した。


その子が私の目の前にいる。

ああ、どうしてかしら。理解した瞬間にミアのことが美しく見えてきたわ。ちゃんと見たらとっても可愛らしい顔をしてるじゃない。それにあの強さ!! これが本当の"魅了"っていうのかしら。ミア自身が持っている魅力。知らない間にも少しづつミアの魅力に当てられていたのかしら。






それからの訓練は予想以上に楽しかったし苦しかった。

魔力の質なんて今までに考えたことなかったからこれはもう慣れしかないわねと思って、毎日研究した。


でもそれよりも、、一番気に食わなかったのはトウカがミアに対する態度!! 何なのよあれは!! お前らよりもミアのことは知ってるとかなんとかで、いつも私達の上に立ってる気になって!! ほんっと腹立たしいわ。


ヴィスタは正直掴めないわね。どこかで見たような気もしなくはないのだけれど、実際吸血鬼とエルフの関わりは少ないから仕方ないわね。


それにヴィスタのご飯を美味しそうに食べているミアは好きだからあなたはミアの近くにいることを許してあげる。

でも私もできるようになったらその座を退いてもらうわね。



◇◇◇


最後の夜。


名残惜しい気を持ちながらも夜ご飯を食べていると、悪寒が背中を走った。


何なの!?


ミアはとっくに気づいていたようで、静かに私達に伝えてくる。



そこからの戦いは過酷だった。

全く歯が立たない。どんどん私達の体力が減っていくだけ。

それを感じ取ったのかミアは私達に逃げるように伝えてきた。


瞬間、戦闘中にもかかわらず泣きそうになったわ。まだ力が足りないんだって。


私達は半ば強引にヴィスタに連れられ、あの場を去った。






ならばできるだけ早くゲルディアス様に伝えなくきゃ。もう総合値が三桁をきっているのもお構いなしに私達は走り続ける。


何とか魔王城についても私達の体力はもう限界を超えていた。

早く伝えなきゃいけないのに……、誰も動けないのならせめて私だけでも動かなきゃって思うのに……。



するとどこから現れたのかゲルディアス様が私達の前に立っていた。

伝えたいのに声が出ない。どうして!!?


あ"あ"といううめき声しか出ないのはトウカやヴィスタも同じで、けれどもそれが逆にゲルディアス様に伝わったらしい。


何かを言う前にゲルディアス様は姿を消されてしまった。



ミアのところへ行ったのだろうか。




どうか無事で




力のない私達はただ祈ることしかできなかった。

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