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30 我を崇め讃えよ!!

一匹づつ相手しなくて便利ーと思っていたのも束の間、ここにいるのは私だけじゃないことに気がつく。そして今にもそれぞれの龍がそれぞれの魔法を口からはこうとしている。


ここでもし、この数ではかれたら私はまだしも他の人たちがひとたまりもない。かと言って全体に結界をはると、このあとに倒さなきゃいけない龍たちの分まで魔力が残らない。


あああ、どうする私!!


考えろー……。







"光魔法"







これだ。



「ラトーさん!! 今から光魔法を使うので少し皆さんを下がらせてください!!」


この騒ぎを見て近くまでよってきていたラトーさんに大声で伝える。そして聞いた瞬間彼はピタッと綺麗に立ち止まった。


「ミア殿……。知ってはいましたがやはり光魔法を使えるのですね。光魔法は魔族のものは使えません。それに長時間浴び続けると闇堕ちしてしまいますので……」



な、なんだってーー!?!?


確かにみんな光魔法使えないなーって思ってたけど魔族皆が光魔法を使えないだと……? しかも光魔法を浴び続けると闇堕ちするって……初耳じゃんかあ!


だからヒールかけるときに皆手こずったのか……。

今全部つながる。

せめてゲルさん、それくらいは知ってるのなら言ってほしかったな。ラトーさんが知っているってことはゲルさんが知らないわけがない。


でもじゃあそうか。私の考えだと龍達が力尽きるまで光魔法で一気に片付けようと思ってたけどこのやり方だったら皆闇堕ちしちゃう。

この考えは却下でいこう。



そしたらどうする……?


…………。



光魔法に、闇魔法多めでいったらどうなるかな。




闇魔法は魔族にとって一番馴染みやすい魔力だ。

何ならスキルは持ってなくても闇の魔力は微量ながら皆の体の中に流れている。


それをうまく利用して、光魔法のわたしたちにとっての毒素を和らげることはできないのかな。


やってみるだけやってみるか。




「ラトーさん、光魔法少し使うので龍人達を移動させてもいいですか? 攻撃撃つのに邪魔なんで」


「光魔法を!? ミア殿のことだからなにか考えがあると思うけど……」


「速く! 時間ないんで!!」


グダグダしてる間に一斉に放たれてしまう。それはなんとしてでも避けなければいけない。



「ラトーさん!!」


「わ、わかりました!! でもこの人数を運ぶのは私一人では無理ですよ?」


「誰が一人で運べなんて言ったんですか……」



それは誰でも不可能だと思いますよ。

他の龍人を一箇所に集めてくれと頼む。彼はすぐに口笛を吹くと、一斉に龍人達が集まり始めた。

ラトーさんには龍人達を一箇所に集めてくれさえすればいい。あとは……



「全員です!! 怪我があるものは担いできました」


「チェスター、よろしく」


『はーい』



そう、名付けて「全員まとめて転移しちゃえ」作戦だ。

いきなり周りの景色が変わって皆はびっくりするかもしれないが……そこは後はラトーさんに任せよう。一応あの人、族長らしいから。それなりのことはやってくれるでしょう。



チェスターが手元に戻ってくる。


「あれ、もう終わったの?」


『うん。運ぶだけだから。向こうは沢山混乱してたけど大丈夫なの?』


「大丈夫大丈夫」



たぶん……。

それよりも……今考えないといけないのは光魔法と闇魔法の比率をどれ位でいったらいいのかってことで。

光魔法は少なすぎたら聞かないけど逆に多すぎても毒になるだけだし……。

3:7くらいでいくか。この2つの魔力を出すにはウィスターとチェスターを使ったほうが微調整しやすい。

だから…………いつものようにいく!!


高くジャンプして龍達のすぐ下辺りまでに着く。




"月の舞"




それは舞うような、暗闇に一つ、明るく光る静かな月のように。

大きくなく、けれど確実に龍たちのうなじの部分をみねうちで狙っていく。飛ぶ力をなくした龍達は月の光が溢れ落ちるように地面に落ちていった。



数分が過ぎた。




ああ、確実に半分意識飛んでた。

光魔法と闇魔法の大技使う時っていつも意識が半分どっか行っちゃうから気をつけねば……。


でも周りを見てみると……これは確実に私の勝ちだね!

地面には龍達が空にいたように一面に広がって伸びてしまっている。



あ、死んでないよね……。


自分も降り立ち、さっきみたいにお腹のあたりで脈を取ってみる。

よかった。正常だ。ここのはかり方がこれで合ってるのかはわからないけど。



これ、どうしよう。ラトーさんはもう少ししたら来ると思うし……。龍たちはこれ以上光魔法かけたら危ない気がするからヒールかけられないし……。


一応窒息死とか避けたいからみんな被らないように移動させておこうかな。




◇◇◇




「これは…………」


「あ、ラトーさん」



あれからまた数十分後にラトーさんが耀黒山に戻ってきた。

私はというと暇を持て余していたために伸びてしまった龍を一匹づつ真っ直ぐにおいていた。見よ、この出来栄えを!! 色も長さも揃えたのだぞ!! 上から見ると綺麗なグラデーションに見えるから!!


そこには何一つ突っ込んでくれずにラトーさんは話を続けた。


「これは……終わったといっても大丈夫なのですか?」


「たぶん。でも起きたらわからないから気をつけて。みんな死んでない」


最後の一言でラトーさんの目が大きく見開かれる。


「あ、りがとう、ございます……!! 最悪皆失ってしまうと思っていたので……。本当にどうお礼を言ったらいいか……。後ほどきちんとゲルディアス様にはお伝えしておきますので。もしよろしければこのあと龍人達が宴を用意しているのですが……」


なんだって!? さっきの今で宴て……。

ある意味龍族の神経の図太さはすごいかもしれない。


「行きたいけど行けない。すぐ帰らないと」


くっっっ!! そう、そうなのだ。

出てくる前に何があってもすぐに帰ってくるようにってゲルさんに3回釘刺されたから。

森にこもってて帰ってくる前に鬼ヶ里に行ったことをまだ根に持っているみたい。


自業自得って言えば自業自得なんだけど……。


「そうですか……。とても、、残念です。でもミア殿が助けてくれたというのは何事にも変えられない事実!! 本人は参加できませんが私達で存分にミア殿を崇めます!!」


なんか変な宴じゃない!? 崇めるって何!?


知りたいけど……これ以上知ったら行きたくなる……!!

名残惜しいけど今日は我慢だ。


私は下唇を少しかみしめながらトボトボと家路についた。

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