29 半日がかりの龍退治♪
明らかに狂ってしまっている下級龍たちと、それを抑えるのに必死なラトーさんのような龍人の皆様。
数は圧倒的に下級龍の方が多くて、こちら側が押されているのが一目でわかる。
あれ、龍人達って意外と弱い? だってこのくらいの下級龍たちで手こずるなんて、、珍しいよね……。
「ミア殿……その、確かにミア殿達や他の上位種族に比べれば私達はとても弱いのですが……今は下級龍達が暴走により力を増していまして……」
あ、顔に出ちゃってたかな……。こほん、これは失礼した。
気を取り直して、、
症状……というか凶暴化しているところは闇堕ちにに似てるんだよね。でも目の色は真っ黒だし瘴気も放ってない。だから闇堕ちではない……と思う。
でも少し引っかかるところがあるようなないような……。
「……これって、殺っちゃっても良いの?」
「……っ、それは……できれば避けてはほしいですけど今は仕方ないですし……うう、わ、わかりました。今回は私達の落ち度です」
よし、言質は取った。
まあ、できるだけ失神くらいで済ませてあげたいけど強かったらなんとも言えないし……。
「龍ってどこ叩いたら気絶する?」
人間は首の後ろって聞いたことあるけど龍も同じかはわからない。そもそも同じだとしても龍のどこが首かわからない……。わかる人は絶対少ない。
「き、気絶ですか? えーと、あまり強く叩きすぎたら死んでしまいますけど、私達は首の下辺りですかね……」
「了解」
ならあんまりウィスター達は使えないかなー。
思わず切ってしまうかもしれない。魔法の練習だと思ってこの際色々試してみよう。
初めに私が狙いを定めたのは赤龍だった。
遠目から見ても炎を吐いているので水が弱点だとわかる。
少し話を変えて、
魔法にはそれよりも強いものと弱いものがある。こういう忙しい場面だけど今紹介を逃したら次いつになるかわからないからやらせて!!
ざっくりいうと、
火は水に弱くて風に強い。
水は土に弱くて火に強い。
風は火に弱くて土に強い。
土は風に弱くて水に強い。
これは私の森での実験結果です。
光と闇はそれぞれこの4つの魔法には強いけどお互いに弱い。
光と闇がお互いに弱いのはまだ未確認。でもたぶんそうだと思う。だけど強いのはホント。
どれも弱点と強みを持ってるから相手がどんなスキルを持ってるかで出方が変わってくる。
だから今みたいに火魔法使ってるから水魔法で行こう! みたいに。
ま、この弱い強いも誤差みたいなもんだけどね。ちょっと有利にか不利に働くだけ。だって現に私みたいに全属性持ってる人もいる訳だし随分前のメイドズたちや今までに倒した魔族達だって"火と水"とか"土と風"とか持ってるから対して変わんないんだけど。
余談はこんなところでおいておいて、まだ戦える龍人達は半分くらいいる様子。
暴走化した龍はパット見1000くらいかなあ。一匹1分で考えても1000分、約16時間かかる。
……ちょっと無理かなぁ。
だけどゴタゴタ言ってても始まらない。半分くらいは龍人達がやってくれると、一匹1分かからないと信じて、コツコツやっていくか……。
一応仕事は最後まできちんとする主義でね。後できっちり報酬はもらうぜ。
先ずはさっき狙っていた赤龍からいきますか。
飛んで相手へと近づく。
運が良いのか悪いのか、赤龍と退治していた龍人はすでにボロボロになっていて今にも力尽きそうになっている。と、とりあえずヒールでもかけとこうか。
ぽわっと、手をかざすと温かい光が龍人を包み込んでいく。これ、加減間違えると魔族相手にかけたら大変なことになるから。
慎重にかけていくと龍人の顔色もだいぶ良くなり、意識が戻ってきた。
「とりあえず、私が相手しますんで貴方は向こうで違う方と合流してください」
「あ、ああ。わかった。すまない」
見た目がどう見たって小学生(ここに小学校というものは存在しないが)の私は確かに怪しいだろうが……ここで役に立つこの足の文様!!
鬼ヶ里では邪魔!! とか思ってたけど、今はこれさえあれば私が誰だかみんな察してくれる。
これ付いてるの歴代の魔人の魔王様と私だけらしいから。今みたいにすぐにわかってくれるのだ!!
バシュッっ!!!!
油断しているといきなり赤龍の尻尾が頬をかする。
ああああっぶない!! すっかり油断してた!
こんなこと考えてる暇じゃなかったんだ!! 一匹1分の計算でいっても半日以上かかるのに。
攻撃が振り下ろされた直後に先程ラトーさんがいっていた首の下あたりを水魔法で狙う。
正直どこが首かいまいち自分でもよく分かってないけどそこは感でいこう。
見事命中し、ばたんっと派手に土埃をたてて赤龍が落下した。近づいてお腹で脈を見てみると、きちんと正常に脈打っている。
おお!! ちゃんと気絶だけで収まってる!! このくらいの力加減で行けば倒さなくて済みそうだね。これなら体力も魔力もあんまり減らないし大丈夫だろう。
でもヒールかけてもし凶暴化が収まってなかったらめんどくさいから今はそのまま……。
よーし、このままいくぞー、と思っていたらそれは私の頭上で繰り広げられた。
空一面に龍が広がっていたのだ。




