23 空気の読めない天才、現る!
木造の平屋が並び、至るところの玄関らしき場所には赤い提灯が飾られていて柔らかい光を放っている。
大昔の中国みたいな場所だな、とそれが私の第一印象だった。
今、私はというと鬼ヶ里にいる。
鬼人のヒロさんから巾着と伝言を頼まれてきたのだ。
どうやら私の脚の痣は目立つらしくてさっき取り急ぎ足まで隠れるフードを買った。
物凄く怪しい人みたいになってるけど、、仕方ない。
ずっと森にこもってたからひとまずお風呂に入りたい……。
ここって宿屋とかあるのかな? いやでも、お金持ってないね、私!!
やっぱりツキミさんのところが先か……、渡して伝えたらさっさと魔王城に帰ろう。
とりあえずツキミさん宅を探す。
ヒロさんがある程度の場所は言ってたけど……思ってた以上に広かった……。
この怪しさ満点の格好で人にきく? 絶対教えてくれないわ!!
どうしよう……でもこれは渡したいし、、
「おい!! お前、何者だ?」
まさか、、こんなグットタイミングで話しかけてくる子がいるとは!! ついてるなー、私!
と、警戒されているのも知らずに声のした方へ振り返る。
そこに立っていたのは小さな鬼人の男の子だった。
真っ白で毛先だけ少し赤味のかかった短髪に、切れ長の細い目。袴のようなものを身に着けていて、いかにもいいとこの子って感じがする。
私と同じくらいだろうか。
それよりも……もっの凄いイケメンだな、おい!!
何なの? この世界の住人はみんな美男美女ばっかりなの? この歳でイケメンって何よ、普通は可愛らしいとか思うはずなのに。
絶対将来モテるの確定ね、これは。
「おい!! 聞こえないのか? 俺の質問に答えろ!!」
ついつい見入ってしまっていると怒られてしまった。
は? 口悪!! 駄目だぞ、もてないぞ~? 玲央のように誰にでも紳士な態度で女の子に接しなきゃ。
あ、でも今の私の姿って女か男か分かんないか……。しかも怪しさ満点ときた。ならば……
「名前を聞く前にまずは自分から名乗るのが礼儀じゃないの?」
「な……!! お、俺はトウカだ。名乗ったからお前も名乗れ!」
あら、意外と素直……。もっとツンツンするかと思ったのにちょっと拍子抜けしちゃった。
てかこんな怪しいヒトに自分が先に名乗るのはそれはそれでどうなのって感じだけど。
「私はミア。ツキミさんっていう人の家を探してるんだけど……あなた知らない?」
初対面で図々しいけど……これを逃したら一生ツキミさんのとこにたどり着けない気がするから許して!
「お前、ツキミの所に行きたいのか? 何故?」
「ヒロさんから巾着と伝言を頼まれててね。私ここにきたの初めてだから場所わかんなくて。」
「はあ!? ヒロってツキミの旦那だろ? もう100年くらい前に闇堕ちしてるって知らないのか?」
知らないのか? って言われてもこっちとてここに来たのは初めてでね! 闇堕ちしてるのは知ってるけど普通は知らなくて当たり前だぞ?
「兎に角、連れてってくれたらわかるから」
「仕方ねえな。ならその後に俺がこの里を案内してやる。その服もどうにかなんねえのか? あやしさしかないぞ」
いきなりすっ飛ばして打ち解けたね!?
何? 展開が早すぎて追いつけないんだけど……。怪しさ満点なのは知ってるわ!! 服もほしいけどお金無いんだよ!!
「ついてこい、ミア」
そんな心の中の叫びには気が付かず、トウカは私の手を引いて走り出した。
◇◇◇
「ごめん下さーい」
「はいよー」
返しがうますぎる!! まるで来ているのがわかってたように息ぴったりだ。
変なところに感心していると、家の中から三十路くらいの気の強そうな女の人が顔を出した。
詐欺だ!! ヒロさんが闇堕ちしたのって100年くらい前って言ってたよね? じゃあ100歳は超えてるってことだ。せいぜい三十代前半にしか見えないぞ!?
あ、いやでもゲルさんのほうがもうちょっと若く見えるか。あの人600歳くらいだって言ってた……。やっぱり魔族ってみんな若く見えるのだろうか……。羨ましい。(※ミアも魔族です)
「あら、トウカ様じゃないの。どうしたの急に訪ねてきて。隣の子は彼女?」
「違うわ!! 怪しいやつだと思ってた声をかけたらツキミのところへ行きたいって言うから連れてきてやったんだ」
まるで嫌嫌連れてきたみたいに……。まあ実際無理やり、、でもないな。ついてこいって言ってたもんね。
しかもトウカ様って、、やっぱりいいとこの坊っちゃんかい!!
「えー、それは残念。で、フードのお嬢ちゃん、私になんのようだい?」
「あっ、ヒロさんから伝言を頼まれていて……」
さっと急にツキミさん表情が険しくなる。
「嘘はいけないよ、お嬢ちゃん。ヒロは、私の旦那は100年前に闇堕ちしたのだから」
やっぱり急に信じては貰えないようだ。そりゃあそうだろう。闇堕ち=死だと考えられているのだから。私も正気に戻ったときはびっくりしたし。
でもせめてこれだけは受け取って欲しい。
そう思いながらヒロさんからもらった巾着をツキミさんに渡す。
「これだけは、受け取って下さい」
と、みるみるうちにツキミさんの目が見開いていく。
「お嬢ちゃん、これを何処で……いや、とりあえず中に入っておくれ。トウカ様もどうぞ」
ツキミさんは私の渡した巾着を受け取って私達を部屋の中へ案内してくれた。




