177 光に向かって
「ねえ、やっぱりさ、、」
「ほら、つべこべ言わないの!! もうここまで来たんだから戻るに戻れないわよ! それに今日は貴方が主役でしょう? 貴方がいなければ何も始まらないわ」
「でもこんなドレス着るとか聞いてないしさ……」
「そりゃ言ってないわよ。言ってたらミア、嫌でも来なかったでしょう」
それはそうだけど、、と反論できずに口を閉ざす。
私の目覚めから約一ヶ月がたった。一ヶ月間に何をしたかって、思い返してみるとあんまり浮かばないけど、、主に私のリハビリだ。やっぱり6ヶ月も動いてなかったら流石に急にいつもみたいに動くのは辛い。
大変だったといえば大変だったけど、、それよりも6ヶ月間で世界が変わりすぎてそっちについていくほうが大変だった。
で、今日はひとまず色々なところが落ち着いてきたのと、私の生還祝を含めてパーティーが開かれることになった。場所は魔王城の大広間。今現在私がいるのは自分の部屋。だが予想外のドレスを着ることと、まるで自分じゃないかのような素晴らしい化粧をしてもらって内心パニックである。
そして私の愚痴を全て返してくれているのはレーイン。
レーインのドレスもなかなか見ないデザインだが、少し明るめの黄色を基調としていて、ふんだんに使われている金と宝石はレーインの持つ魅力を十分に引き立てている。
私はって?
私のドレスはレーインとは対象的に落ち着いた黒が貴重のマーメイドラインのドレス。確かにめちゃめちゃ綺麗だけど正直私自身髪も瞳も真っ黒であるため、全身真っ黒に見えないか心配だ。レーイン曰く、肌が肌色を通り越してもう白いから大丈夫と言われたが、それを真に受けていいのかと逆に不安に駆られた。
「さあ、そろそろ行くわよ。皆が主役を待ってるんだから。エスコートはゲルディアス様でしょう。ほら、早く行かないと待ってるわ。それに私だってパーティー会場に戻りたいし」
そう言われると行くしかない。レーインは私が駄々をこねていると言ってわざわざ来てもらったのだ。ほんとに、私は園児か。
扉の前で待っていたゲルさんと合流する。
流石はゲルさん。500歳を超えてもなお女性からの人気が衰えない美しさで。私とよく似ているが、また少し違った黒を基調とした礼装を着こなしている。
「よく似合っている。やはりミアはその色がいい」
「ありがとう、ゲ……父さん」
やっぱりまだ慣れないし、なんかちょっと恥ずかしい。
ふっとゲルさんが柔らかい笑みをこぼした。
「行くか」
その言葉と同時に扉が開かれる。と、一斉に視線は私達へ。
戦場とは違った、こういうキラキラした目が多数あるのも何だか落ち着かない。
「ミア、挨拶とかは何も考えなくていい。ここにいるものたちは皆それをわかってここに来ている。それにこのパーティーはミアのためのものだ。楽しむといい。私は少し離れておくから、何かあったら私か近くのものに言え」
分かった、と言ってゲルさんと離れる。
いやしかしだ。どこを見てもヒト人ヒト。割合的には魔族6、人間3,5、天使0,5? ま、それくらいが妥当か。逆に言えば天使が0,5もいるだけで凄い。昔じゃ考えられないことだ。
「あ、アリエルいた!」
「ミアさん!! お元気になったと聞いたときはもう本当に……!」
「アリエルがいなかったら私は死んでたらしいしね。感謝してもしきれないよー」
「ミアさん……実はそのことなのですが、ゲルディアス様にはもう十分だと伝えてくれませんか? その、、おそらくミアさんが目覚めて私の事を話したと思うのですが、感謝として屋敷に入らないくらいのお礼が届くのです。もう十分なのでこれ以上は……」
父さん、、何やってんだ。
「分かった。言っとくね」
「ありがとうございます! それでは改めましてミアさん、ご回復おめでとうございます」
ありがとうと返し、アリエルと別れる。アリエルは今から天使族以外の人脈づくりが待ってるからね。あんまり邪魔しちゃだめだ。
その後も各族長にあったり、ウラトリス王とも話したり、私がよく見知った顔が沢山いた。
だが今の私は病み上がりも病み上がり。流石に疲れを覚えてバルコニーに退散する。私の仕事は終わっただろう。それなりに皆にも顔だしたし。
そう、ゆっくり外の景色を見ながらふと考え事をしていたときだ。
後ろの扉が勢いよく開く。
「ミア!! もう、貴方こんなところにいて! 疲れてるんなら無理しないでもう部屋に帰りなさい!」
レーイン……。お母さんみたいね、、。
それにレーインの後ろを見ると皆がいた。
「…………あ、今日のモテ男君たちだ」
トウカと玲央。
ふたりとも正装だからかな。さっきは女子が群がってて近寄ることすら出来なかったけど、、どうやって抜け出してきたか知りたい。
「ほら、固まってないで早く行きなさい! 何二人して固まってるのよ!」
「……ミア、その、、ドレス、似合ってると思う。やはり黒は、ミアの色だな」
「都は普段からあんまりドレスなんて着ないからね。予想と違くて少しびっくりした」
「ありがとう。なんかこうやって言われると恥ずかしいね。まあねえ、私普段はドレスなんかよりも返り血浴びてたほうが多かったからなあ。そりゃそうか」
「もう大きな戦いは、、終わったからな」
そうだねと顔を見合わせて笑う。なんだか嬉しくて笑みが自然に溢れてきた。
「都、久しぶり、、ではないけど、改めて生還おめでとう! また絶対人間界も来てね!!」
「うん、絶対行く。まだ観光地全部回れてないもん」
「やっほーミア。どう? 僕の正装。普段あんまり見ないから新鮮じゃない?」
「一番新鮮かも。だってヴィスタ、そんなに右半身とか出さないでしょ。ていうかこれがエルフの正装って言うことが一番びっくりしてる」
「なあ都、神様に頼んだらあの前世で有名だったチョコ取り寄せることできんの? 別に有名なやつじゃなくてもいいんだけどさ。昨日から無性にあそこのメーカーのが食いたいんだわ」
「……あのさ、一応神様はウーバー○ーツではないのよ。でも私も食べたいから頼んどく」
こんなどうでもいい会話をみんなと笑い合いながら出来るって、、やっぱりいいなあ。
それから少しの間、私達7人はバルコニーで喋っていた。
平和な世界だと、改めて実感することができた。
「、、さて。そろそろ戻りましょうか。主役が消えては面白くないわね。それかミア、疲れているのならもう部屋に戻るかしら?」
少し考えてふるふると首を横にふる。
「いや、大丈夫。まだまだ元気だよ。それに皆とも話したいしね」
なら良かったと皆が私の手を引っ張る。
さあ行こうと、光の中に私達はまた再び足を踏み入れた。
END
お、終わった……?
ついについに最終回が終わっちゃった……。
正直まだ実感はないんですが、どうやら終わってしまったようです。
約一年にわたる連載。途中色々ありましたがこうして最後までたどり着けたのも、ブックマークして続きを読もうとしてくれた方、評価をして私のモチベーションを上げてくれた方、わざわざ感想を書いて小説の感想を教えてくださる方、誤字報告機能で誤字を教えてくれる方、そしてずっと読んでくださった方のおかげです。本当に感謝しかないです(_ _)
こんなにも長く投稿していると、書いているときにまるでミアがずっと私の友達であったかのように思う日もしばしば。
最後まで書けて本当に楽しかったです。ありがとうございました。
面白い、と感じていただけた方は☆→★に変えていただけるととても嬉しいですm(_ _)m
2023/04/09 日間ランキング20位 ありがとうございます(_ _)