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169 《成果》レオ視点

ガルヴィンがこちらに背を向けたとき、斬られて倒れたトウカと視線を合わせる。


今だ、とお互い考えていることが一致している事が分かると行動に移すのは早かった。


ありったけの力を込めてガルヴィンを後ろから斬り付ける。その瞬間驚きと憎しみを込めためと目があったが、知ったことではない。

この作戦は賭けだ。本当に何もかもが未知の世界で、全て予想だけで作戦を立てていく。今回こうしてできたのもほぼ奇跡と言っても過言ではないだろう。


思ったよりも傷が深かったらしく、少し立っていると目眩がしてきた。


「な、、ぜだっ……!?」


「僕もトウカも一応お互い好んでない割には訓練頑張ったの。でもそのまま行っちゃうと負ける可能性があるから、初めは息が揃っていないふりをしていた」


「そうしたらお前は案の定後ろを向いた。お前から受けた傷は痛いが、、すぐに救護も来るだろう」


サクラかアリエルの救護を待つ。

ガルヴィンが他の天使達が加勢に来ると言っていたが、ちらりと後ろを見てみるとそれは不可能なことがひと目でわかる。


ジンさん率いる鬼人族を始めとする魔族、人間達がほとんどと言っていいほど天使達を殲滅させていた。誰もこちらに来られるものはいない。


「俺達以外が弱いとでも思ったか? やっぱりお前がバカで良かったよ。俺達がお前にだけ集中出来たからな」


「トウカのいったとおりだったね。うん、これで僕達の部隊もある程度片付いたとこだし、トドメを刺したら救助班を待ってミアと合流しよう」


そう言ってガルヴィンにとどめを刺そうとしたときだった。


「ははっっ!! トドメをすぐに刺さなかったのが命取りだったな!!」


倒れていたはずのガルヴィンがいきなり僕達と距離を取り、動かなくなる。最後の足掻きかと、早くトウカととどめを刺そうとすると様子がおかしいことに気が付きた。


光が、正確に言えばガルヴィンの体内から溢れ出た光が彼自身を包み込む。目が潰れるような強さで、近づくことができない。そしてまるで羽化するように光からガルヴィンが出てきた。


先程よりもひと回り大きくなった翼。感情が読めない表情に色味を失った瞳。そして何よりもその場に存在するだけで膝から崩れ落ちそうなほどに強い圧を体中から放っている。


体の震えが収まらない。隣を見てみると震えてはいないもののトウカは驚愕の表情でガルヴィンを見て、一筋の汗を流していた。


身動きが出来ず、ガルヴィンをじっと見つめている。すると無表情のまま彼が一振り、聖剣を振り下ろした。


たった一振り。そのたった一振りで地面が割れ、離れているこちらにまで衝撃波が伝わり僕達は吹き飛ばされる。

その吹き飛ばされた影響ではっと我に返り、急いでトウカと連携を取る。


「どうなっている!? 何なんだあの力は、どこに隠し持っていた!??」


「分からない! だけどあの表情と瞳から見るともう彼の自我はなくなっている気がする。たぶんもう何を言っても無駄だ」


またガルヴィンが僕たちに向かって聖剣を振り下ろす。まだ少し距離はあるもののこの距離であの攻撃を受けたら確実に無傷ではいられない。が、距離を取る時間もない。


駄目だ……と思った瞬間、目の前に土壁ができた。


「おい!! ぼうっとするな! いつ攻撃が来てもおかしくない!!」


トウカの魔法だろう。土壁にヒビが入る。


「この壁は耐えてあと一回だ。考えろ!! 俺達の2週間はなんのためにあったんだ。ガルヴィンを撃つためだろう! この場で屈してはいけない。行くぞ!」


トウカの声と共に体が軽くなった気がした。たぶんガチガチに固まってしまっていた体の力が抜けたんだろう。不本意なことにもトウカの一言で安心した。

そうだ。僕たちは死物狂いで2週間頑張ったじゃないか。荒削りではあるものの最後にはそれなりに形になっていた。今発揮させないといつ使うのだ。



土壁が壊れたと同時に二手に分かれてガルヴィンの背後を取り、こちらを向く前に攻撃を入れる。

けれど何事もなかったかのように聖剣を振り下ろしている。どうして!? 攻撃は入っているのか?


手応えは驚くほどないが、でもやるしかない。

何度も何度もガルヴィンに攻撃を与える。2週間の効果か明らかに連携は取れているもののガルヴィンの力はひとつも衰えていないためダメージが入っているのかは分からない。


それに僕達も先程深い傷をおい、今も激しい動きをしているため血が足りない。ふらふらして倒れそうになったときだ。


「レオン! トウカ! まだ頑張って!! 他のヒト達ももうすぐ加勢に来るから!!」


サクラの声が聞こえたかと思うと頭がはっきりとしてくる。回復魔法をかけてくれたのだろう。

それに他の天使を殲滅し終えたジンさんが加勢する。


「遅くなってすまない。最後まで、いこう」


そうだ。走りきれ。走りきって都のところへ行かないと。


本当にこれが今出せる最大の力だ。

トウカも、ジンさんも全員がほぼ限界を迎えていることが分かった。

この一撃が最後。



ありったけの力を込めて僕たちは剣を、刀を振り下ろした。

レーインがサクラにトウカ達の方へ行くように言ったのは自分よりも回復魔法が使えると判断しているためです。ここでも素直になれないレーイン。

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