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168 〈変化〉トウカ視点 

俺の目の前にはガルヴィンのみ。ガルヴィンは必ず俺たちの方へ真っ先に来ると思ったが、予想通りだった。そのため戦闘が始まる前に父上と作戦を立て、俺達二人がガルヴィンを相手にするため、決着がつくまで他の者たちでその他を殲滅するようにしてもらっている。


俺が知っているガルヴィンはいつかのポンコツのみ。奴がどう出るのか、どのくらい強くなっているかは全くの未知の世界のため慎重にかまえる。

が、次の瞬間には奴は目の前に迫っており、いつ取り出したのか分からない聖剣を振りかざしていた。


ほぼ反射能力で聖剣を受け止める。

速い。

俺の想像の数倍は速かった。


「久しぶりだな、鬼人!! 勇者サマもどうしてここにいるかは知らんが……手でも組んだのか?」


「、、っああ、そうだな。お前たちの知らないところでな。それよりもお前、あのときのポンコツぶりはやはり演技だったのか?」


レオの存在は知っていたようだ。それに戦闘力は比べ物にならないくらい飛躍的に伸びているが、知能は相変わらず、、と言っていいところか。


それから時間稼ぎのためにどうでもいいことを話し続ける。出来るだけ長引かせる。少しの手合わせでわかったが、長距離に持ち込めば持ち込むほど、向こうは考えなしに動くと思われるため、こちらが有利になってくると思う。それにちらりと後ろを見たときは父上たちが多くの天使族を片付けていた。途中からはレオと話していた2段階目(・・・・)にあげ、ガルヴィンの体力を落としていく。この調子で行けば、、




眼の前が真っ赤に染まる。一瞬何が起きたか理解できなかった。思考が停止した後自分が斬られたのだと理解する。隣を見るとレオが同じように倒れていた。


俺たちを見下しているガルヴィンが目に入った。

嘲笑っているようにも見える。こいつ、、やっぱりムカつくな。


────だが、俺達はこの時を待っていたんだ。



◇◇◇


あいつと、レオと手合わせを始めてから3日が過ぎた。正直早くミアとの手合わせに戻りたい。


誰が好んで自分よりも弱いやつとの手合わせを望むのか。

誰があまり好かないやつと一緒にいたいのか。


少なくとも俺はこれらには当てはまらない。

だがミアやヴィスタの言う通りレオとは共に戦うため、ある程度は手合わせをしてお互いの実力や動き方などをわかっておかなければいけないことは分かっている。


「だめだ。動きが元の身体能力とあっていない。そのまま続けるといずれ体を壊す」


向かってきたレオを跳ね返す。

今この状態で手合わせをして一体何になるというのだ。俺とレオでは実力の差がはっきりとしすぎている。全く持って面白みもないし伸びているかと言われればそうとも言い切れない。


一度休憩に入る。





「……トウカ、提案があるんだ」


正直びっくりした。レオから俺に話しかけてくることはないし、こんなに喧嘩腰じゃなく、本当に提案しているような口調で話しかけてきたのは初めてだったからだ。まあいつも喧嘩腰で話しかけるのは俺も同じなのだが。


「僕とトウカは、、悔しいけど実力差がありすぎる。同じ戦いをしても必ず僕のほうが劣ってしまう。それは僕が幼い頃から君と同じような訓練をしていないからだとも思うし、元からのモチベーションも違うからだとも。それに君に追いつくためにはあと数週間という日では足りない。だから、、君が僕に合わせてくれないか?」


途中までは全くもって正論だ。だが最後の一言は理解ができない。何故俺が弱いもののためにそのものに合わせなければいけないのか。相手はおそらく俺達が考えている以上に強くなっていると考えられる。俺達の今の力でも足りるかどうかわからないのに、それならば放っておくほうがマシだ。


「却下だ。お前は敵を舐めているのか? それならば戦場へ出ないほうがマシだ。少し前のように他の人間たちと同じような訓練をしていろ。俺と手合わせするだけ無駄だ」


そう吐き捨ててこの場を離れようとする。が、呼び止められた。



「待ってくれ。すまない、言葉が足りなかった。勿論トウカの強さは理解している。正直トウカ一人でもガルヴィンに対抗できるかは怪しいのだろう。ならば初めはトウカが僕に合わせて相手に油断させておいた方がいい。それから不意をついたところで僕とトウカが息を合わせて攻撃を仕掛けた方が勝率は上がるのではないだろうか」


「実力差がありすぎるお前と息を合わせるくらいならば俺は父上に頼む」


「敵はガルヴィンだけではないだろう。他の天使達はどうする。確かにトウカの父と合わせるほうが勝率は高くてもその他の天使達を放っておけば後で痛い目を見ることになるよ」


それは……そのとおりだ。


「だが、時間が足りない」


「僕が死物狂いで合わせに行く。根性論になってしまうが2週間で出来るところまで頑張りたい。正直賭けになってしまうけど、、」


これがレオなりの結果なのだろう。本当に賭けになる。思うところは沢山あるが、でも、、ここまでいう覚悟があれば俺は反対しない。


「分かった。俺も出来るだけ合わせるが……手加減はしない。それでもいいなら早速実戦に移ろう」


俺達はたぶん、傍から見ても仲がいい様には見えないだろう。俺自身、こいつは前世の関係とやらでミアとの距離も近いし気に食わん。けれど、、今は何故かこの計画が上手くいくような気がした。

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