162 〈裏切りと始まり〉ミファエラ視点
遅くなりました。
ブクマ300件、ありがとうございます(_ _)
「出撃だ」
私の言葉で一斉に地が割れるように歓声が響く。
例の宣戦布告から3週間が経過した。いつ、どこで魔族が聞き耳を立てているかわからないため、アリエルにも人間族への通達を一ヶ月で準備しろと伝えるように言った。が、そろそろいいと判断したため2日前に明後日には攻撃を開始すると伝えている。
おそらく人間族の方も準備は出来ているだろう。天使族には皆士気が上がったと同時に私が預かっていた力も全てもとに戻した。
私が全天使族の力をオーラとして身にまとっているのは自分への枷でもある。体に過度な負荷をかけることで無理やりではあるが一定期間で大きな力を得ることができる。
それに仮にも天使族が反乱を起こすようなことをしても、漠然とした力量の差ですぐに黙らせることができるのも理由の1つだ。しかしもうその必要はない。
今回の争いでどれだけの死者数が出るか分からない。が、出たところでそれは無意味であり、私の計画には一切関係がない。私が力を天使に戻したと言ってもまだ完全に天使族の者たちと繋がりが切れているわけではない。私と繋がっている者たちが総合値を獲れば、それは本人たちも知らぬ間に全て私のものになっているようにした。
本当は私の意志で全てを操りたいのだが、関係を9割以上離してしまった今、それは不可能。まあ総合値が入ってくるだけ良しとしよう。
そしてある程度総合値がたまれば悲願である核の破壊を実行することができる。神たちは私達の動きを知っているかもしれないが、もし行動を起こすのであればもっと早くに起こしていただろう。今私達のことを無視しているということは興味がないか、それともこちらに干渉できないかのどちらかだと考えられる。おそらく後者であろう。
「ミファエラ様、こちらの準備は整いました。後は人間族と合流するだけです」
ガルヴィンの言葉に意識をこちらに戻す。
先程力を返したこともあり、内から出る覇気が本来の姿となってガルヴィンに現れていた。是非とも私のために活躍してほしいものだ。
今回は前回の反省を生かし、私を含めた幹部4人をトップとする4チームに分けて突撃することにしている。
各部隊は自らのチームでかたまり、人間界、魔界へと飛び立っていった。私も行かなければ、と数万の天使を連れ、魔王城を目指し飛び立った。
◇◇◇
私の目に映るのは完成された部隊。
誰が裏切ったのか。誰が情報を流したのか。どこで聴いていたのか。私の頭の中は疑問符だらけだった。奇襲と思っていた戦いはすでに魔族には周知されており、尚且ついつ心変わりしたのか、武装した人間が魔族の後ろで武器を構えている。
はは、これは……予想外だ。けれど、、人間が増えたところで何になろう。所詮人間は人間だ。端から私達はあてにしていない。魔族にいてもこちら側にいても対して変わりはしない。
重要なのはそこではない。誰が裏切ったか、だ。ガルヴィンか、セシリアか、アリエルか。おそらく幹部の中の誰かだろう。ガルヴィンは隠し事をできるたちではない。おそらく表情に、体に全て行くはずだ。セシリアは……そもそもあいつは何事にもさして興味を示さない。わざわざ私に反抗してまで魔族と手をとる理由がない。
とするならば、、アリエルか。やはり彼女だろう。天使族からの使者として人間界に送っていたが……それがどこかで間違えたのか内密者と成り果てていたのか。とするならば彼女からの報告は全て嘘だと思ったほうがいいだろう。
ガリレイド国王城に向かわせたが、、アリエルを除く天使族がどれほど役目を果たしてくれるか、だな。
まだ魔界に配置をしていなくて良かった。人間界ならここに来るまでに多少時間はかかるだろうし、すぐに参戦することはないだろう。それに彼女が天使族を倒せば倒すほどその総合値は私に入ってくる。それはそれで良い。
「こんにちは、ミファエラ。久しぶりだね。どう? 今の気持ちは」
数十メートル離れた場所から混沌の魔人が話しかけてくる。
「そうだな、最悪、、とまでは行かないだろう。こちらもこちらで対策はあるのでな。対して強くもない人間が、少しそちら側についたとしてもこちらは痛くもかゆくもない。強いて言えばアリエルくらいだろう。よく私の洗脳を解いたものだ」
「あれ、ほんとに苦労したのよ。なんなら今まで一番きつかったわ」
お互い不敵な笑みを返す。何がきっかけだっただろうか。誰かが叫んだことか? 突風が吹いたとか? 私達の会話が途切れたことか? 何れにせよ、わたしたちの戦いは唐突に、そして派手な砂埃を立てながら始まった。
本編では書けなかったのですが、ミファエラはアリエルには手を加える事は出来ません。一方的に力がミファエラに入ってくるだけです。




